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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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トウモロコシと風車とソーラーパネル1

 デトロイトから撤退した戦艦フリージアはアイオア州に辿り着いていた。

 凛は窓から景色を堪能していた。

 眼下に広がるトウモロコシ畑とソーラーパネル、そして風力発電用の風車。

 有機物と無機物が整然と並んでいる不思議な光景は、興味をそそるには十分なものであった。


「珍しいかい? アイオア州はG.D.ジェネレイター発明以前はエネルギー産業の中心地だったんだよ。トウモロコシはバイオエタノールって燃料になるのさ。太陽光発電用のソーラーパネルや風力発電用の風車が多いのは、大昔に再生可能エネルギーが流行ったときの名残さ」

「ふーん、そうなんだ……」


 アーサーが説明してくれたが、あまり面白い話ではなかった。

 凛が興味を持ったのは不思議な光景であって、歴史ではなかったのだから当然の反応と言える。


「あららっ、アーサー振られちゃったの?」


 オリヴァー中尉がアーサーを冷やかす。


「振られてないですよ。話がつまらなくて興味は持たれなかったですけど」


 アーサーが肩を落とす。

(折角説明してくれたのに悪い事をしたかな)

 凛は少しだけ後悔した。


「当然だなG.D.ジェネレイターが発明されたのは250年近く前だ。歴史の授業をしても面白くはないだろう」


 隣にいたアランが会話に参加した。

 ウォルフ技師長とは頻繁に会話をしているようだが、日常会話に混ざるのは珍しい。


「授業のつもりはなかったんだけどね。観光っていったら歴史は定番だと思うけどな」

「英雄さんはお堅いねぇ。アーサー、モテないだろ?」

「それ、意味あります? 軍人にモテるかどうかなんて関係ないと思いますけど」

「論点をずらしたな。戦いから逃げるのが軍人か?」

「言うねぇ、バークス少年。お兄さんはそういうの好きだよ」

「どうだ、俺はモテたみたいだぞアーサー」


 アランが自慢そうな顔で言う。


「オリヴァーさんにモテても嬉しくないでしょ?」

「そうか、済まなかったな。アーサーは女性にモテたかったんだよな?」

「なっ!」

「どうやらバークス少年の方が上手のようだな。今後が楽しみだな」

「みゅ〜ん」


 楽しい会話を肯定する様に”みぃちゃん”が鳴いた。


「3人は仲良しなのね」


 凛はアランと戦争や兵器の話しかしていなかった。

 彼とは付き合いが短いので、普段の彼を知らない。

 でも、こうして男性3人で楽しそうにじゃれている姿はとても良い事で、新鮮だと感じたのだった。

 だから、仲良しという言葉が自然に出てしまった。


「あ、ああ。仲良しだよ、お嬢ちゃん……」

「放置して済みません凛さん」

「少しは取繕えよ。正直を通り越して間抜けだぞ」


 カーライル中尉とアーサーが謝った。

(純粋に仲良しで良い事だと思ったのに、私を放置した事を指摘したと思われちゃった。3人って言ったから私以外で楽しんでると思わせちゃったのかな?)

 でも、アランも凛を放置して申し訳ないと思っているようなのが可笑しい。

 彼がそのような性格だとは思っていなかったからだ。


「ぷっ」

「僕が間抜けで面白いですかねぇ」

「俺は間抜けなアーサーが面白いと思うぜ!」

「オリヴァーさん!」


 どうやら、アーサーがいじられキャラなのは確定のようだ。

 でも、凛が面白いと思ったのはアランだ。


「アーサーさんも面白いけど、一番面白いのはアランかな」

「何で俺なんだ?」

「だって楽しそう。いつもは他人に興味なさそうなのに、今日は楽しそうじゃない?」

「別に楽しいわけじゃない」

「僕の話はつまらなかったかい?」


 アーサーがアランと肩を組む。


「当然だ。俺は歴史の話に興味はない」


 アランが不機嫌そうに顔を背けた。


「そうなのか。興味がない話で楽しそうって事は、僕自身に興味があるって事になるのかな?」

「そいつはいいな。折角だからデートでもしてきたらどうだ? 補給で数日は滞在する事になるからね」

「それは楽しそうね。私も出かけるわ」


 凛も一緒に出掛ける事を宣言する。

 本当にデートなら二人っきりにしてあげないといけないけど冗談だって分かっている。

 提案したカーライル中尉も、結局一緒に行く事になるだろう。

 全員で観光するのは楽しいだろう。

 これから長い時間を過ごす同僚どうしで親交を深めるのは良い事だと思うし、戦争で沈んだ気分も少しは晴れるだろうから。


「追撃に備えなくて大丈夫なのか。ファングと戦闘になったらどうする?」


 アランがファングの追撃を心配する。

(やっぱりアランは戦争の事が一番に思い浮かぶのね。)


「心配ないさ。E.G.が撤退したとはいえ、デトロイトの占領に時間がかかるだろう。俺達が新型のオンパレードだからって、ファンみたいに追ってくる事はないさ。さぁ、一緒に行こうバークス少年」


 カーライル中尉がアーサーの反対側に回り、アランと肩を組む。

 凛はアーサーとカーライル中尉に左右から肩を組まれ連れ出されるアランの後ろに続いた。

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