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Re:re:  作者: 炯斗
1/14

001

_神代も終わりかけ、次第に神の消え行く時代。

 ゲブラー、マスカルウィンより。




流れる雲も赤く染まる黄昏の大地。山々は高く聳え、その山肌は夕陽の赤を照り返す。

岩と砂利の大地に三つの人影が現れる。その影は赤の沈黙を容易に破り、風の嘆きすら掻き消した。

「はぁあ~、相変わらず真っ赤だねー。死んだまんまだ」

「………」

「だねぇ。少しくらい草でも生えたかと思ったけど」

十三年も経ってなお死の気配は色濃く残っている。どこまでも朱い赤。それは視覚出来る『死』か。このマスカルウィンの地は何年経っても死んだままだ。貯まりに溜まった狂気は風に掻き回され、少しずつ少しずつ排斥されていく。何年か何万年、何億年と気の遠くなるような時間を掛けて、この土地は回復に向かっている。人間の目にはその歩みは見れなくても、確かに世界は自己再生を行っている。

それでも、まだまだたった十数年。底に澱った狂気の渦。それはまだ草木の芽吹きすら許さない。

「…此処って、緑だった事あるのかね?」

言いながらKは振り返った。aもまたそれに倣う。背後で不服そうに顔を歪めるのは背の高い長髪の男。

「何が言いたい?」

彼──貝空の前身こそ、この世界を死地に変えた張本人だ。

「いや、厭味じゃなくてね?」

彼の不機嫌な様子にKは呆れ顔だ。

aはもう一度辺りを見回した。

「確かに、マスカルウィンも最初からこんなじゃなかったんだろうな」

玄霊が生まれるより前。まだ死ぬ前のマスカルウィンは、一体どんな世界だったのだろう。



「無理だ」

黒光舞う空間で、神秘の神ジズフは一言そう言った。

「え、なんで」

「俺が生まれてないから」

呆然としながらもKはジズフを仰ぎ見、ぼんやり開いたままの口から言葉を漏らした。

「…マスカルウィンが緑な処が見てみたいって言ったんだけど?」

ジズフもまた面倒くさそうにKを見下げた。

「だから、俺はそんな処見た事が無い」

即ち、緑だったことがあるとしたら、それはジズフが生まれる前、若しくは死んだ後ということになる。神という長寿の存在が生まれる前か、死んだ後。それは過去へも未来へも膨大な時間を要するということだ。

「貝、おまえいつから居たのさ…ッ」

隣に控える貝空を揺さぶって叫ぶK。

「知らねぇ。貝って呼ぶな」

「ち。あーあ、見てみたかったのに」

くたっと体中の力を抜いて貝空に凭れ掛かる。

「貝空が意外に年寄りだってのが判っただけか」

『これでお終い』とaが大きく伸びをして還ろうとするが…

「…ぁあ…、行けない事も無いかな…」

小さく洩れた呟きを、聞き逃すようなKでもなかった。


「え? カルキストって…まだ居たの?」

引き合わされた小さな緑色のカミサマは、そう言いながらKたちをじっと観察した。

「…かわいい」

KもKで呆っとその鬼神を見つめ、ぽつりとそう零した。彼女はにっこりと笑って賛辞と受け取る。

「ありがと。あたしサリルス。7の時と開扉を司ってるの」

「開扉…成程」

つまり彼女は、ゲートキーパー。あらゆる扉を開く鍵の神。例え次元の扉だろうと開けられぬ扉はない。


開扉の神の助けを得、Kとaは、セフィロートの遥かな過去へと続く扉を潜る。最後にジズフのしてやったり的な表情を見て、二人は同時に溜息を吐いた。

──そうだった、と。

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