マスター&リズ編
キャラや世界観を壊さないようには書いたつもりです。
やりすぎてはない筈です。
目が覚めたら知らない場所にいた。私はベッドの上にいて、それ以外は何も無い真っ白な空間。
あ、ドアはある。開かないんだろうけど。
それでここはどこだろう?
とりあえず状況を整理してみよう。
私は『病毒の王』メイド兼副官のリズと結婚して、クラリオン達の舞台を見て、みんなにアニマルパジャマを着せて、今日は一日仕事に追われて、疲れてリズと一緒にベッドに入った所までは覚えてる。
とりあえず頭がおかしくなったわけではないようだ。隣にはリズもいるし……。
「リズッ!?」
私の横ではリズがすやすやと眠っていた。
「リズ起きて、起きてよ」
「う、ううん……マスター?」
ゆさゆさと布団の上から揺さぶると、リズが眠そうに目を擦りながらも目を覚ましてくれた。
「よ、よかった〜」
そしてリズが布団から身体を起こす。そしたらリズの身を包んでいた布団が肩からずり落ちた。
「え」
素っ頓狂な声が上がった。リズは生まれたままの姿だった。そう、何も着ていないのだ。
「リ、リズ!? なんで服着てないの!!」
「え、マスターも着てないじゃないですか」
嘘でしょと思いながら自分の姿を見ると、私も何も着ていなかった。
「何これどうなってるの?」
とりあえず布団にくるまる。
「ここはどこなんでしょうか? あ、あそこのドアから出れるのでは?」
リズがこの空間から脱出する唯一の出入り口であろうドアに近づき、ガチャガチャと音を立てる。もちろん裸で。
(リズの背中綺麗だなー。私こんな子と毎日寝食を共にしてるんだー)
それにしてもよく堂々としてられるな。誰かに見られてるかもしれないのに。
そんな事考えていたらリズが急に振り返った。
「マスター大丈夫ですよ。この部屋にマスター以外の視線は感じませんから」
「あ、はい。そうなんだね」
リズは、私がリズの背中に熱い視線を送っていた事に気付いてるんだろう。恥ずかしい。
私の考えてることなんて、嫁さんにはまる分かりか。
「うーん、だめですね。開きそうにありません」
「そっか……じゃあ壊すって事は……」
「出来そうな気もしますが、出来なそうな気もします」
「どっち!?」
そうこうしてる内に、リズがドアに貼られている一枚の紙切れを見つけてきた。
「リズ。なんて書いてあるの?」
「えっと……『ここは百合百合しないと出られない部屋です。あなた方は一定以上の百合ップルと認められた為、この場所に招待されました。この部屋には決められた百合ップルしか入ってこれません。昼も夜もありません。好きなだけ百合百合し放題です。百合度が一定に達するとドアが開き、元の世界に帰る事が出来ます。それでは良き百合ライフを』って書いてありますね」
な、なんじゃそりゃー!!
リズが淡々と文章を読んだ後、「ふむ」と言って書かれている文章の内容を吟味し始める。
私も絶賛混乱中だ。
「えっと、つまり私とリズが百合百合しないと帰れないって事だよね」
「そうみたいですね」
まさか生きてる内に、こんな不思議な目に遭うとは思わなかった。
まあ、一度死んだんだけど。
あ、でも換算すると2回目か。一度目はリズのいる世界に来たことだし。
うんうん唸っていたら、リズが自然と私に寄り添って、耳に「ふぅ」と息を吹きかけてきた。
「ふひゃあ!」
「マスターとりあえずしましょうか? 私からでいいですよね? 最近受けが多かった気がしますし」
「そ、それはいいけど……いま、異常事態だって事分かってるんだよね?」
「はい勿論です。だからこそ言ってるんですよ。だってやらないと帰れないみたいですし。普段からしてるじゃないですか。それにマスターはレベッカや姉様、私たちの帰りを待っている人達がいる世界に帰りたくはないんですか?」
「帰りたいよそりゃ……」
でもリズがいてくれればそれで十分……って言えたらいいけど私欲張りだからなぁ。やっぱりみんなと一緒がいい。
「マスター?」
「うん、そうだよね。私たちがいつもやってる事だし、これもその延長戦だよ」
そういつもと同じ。違うのは場所だけだ。だからかな、少し緊張して――こんなにも胸が高鳴るのは。
「ではいきますよ?」
「うん」
リズが私を押し倒す。そして、私の耳を弄り始めた。
いつもなら絶対しないような場所にキスしたり、舌で遊んだりする。
「んんっ……なんでまたみみ?」
「マスターだって私の耳によくやるじゃないですか。そのお返しです」
リズがはむはむと私の耳たぶを甘噛みする。
耳にキスしていたと思ったら、今度は唇を奪われていた。あれ、今日の私完全に後手に回ってるよ。
彼女の舌が私の口内を貪る。
「……う、ん……」
「……んぅ……」
真っ白な部屋には私とリズの息づかいだけが聞こえてくる。
そして長くて深めなキスを交わし、私とリズは息継ぎをするように「ぷはっ」と離す。
「じゃあそろそろこっちも……」
リズの手が下腹部に伸びる。
「えっ、ちょっとま……はやいって……んっ!!」
今日のリズはとても積極的だった。私の身体がびっくりするくらい。
「マスター……好きですよ」
「ん。私も好きだよ、リズ」
そしてそのままリズが深く、優しく、覆い被さってきて……………
「だめだってぇぇぇぇー!!」
私は飛び起きた。そして隣で寝ていたリズがビクリと肩を跳ね上がらせる。
「あ、あれ? ここは……」
起き上がり、辺りを見渡す。ここは見慣れた私達の寝室だ。
そして私は天蓋ベッドの上でリズと一緒に寝ていた。
(え、さっきのあれは夢?)
どうやら、さっきまで見ていたのは夢だったようだ。
そう思うと続きが見たいような、そうでもないような……うん、夢なら見ても良かったかも。
なんか、あの後すごい事された気がするもん。覚えてないんだけど。夢の私、気絶でもしたのかな。
「うーん……マスター敵襲ですか?」
「ごめんねリズ、起こしちゃたね。でもリズって寝起きにそんな冗談言えるんだ」
リズが眠そうに目を擦りながら、枕元の明かりをつける。
夢ではない本物のリズを目の当たりにして思わず抱きしめたくなってしまった。
というより、今の私はそういう気持ちだった。
「リズッ!」
「わっ!」
リズの心音がよく聞こえる。ちょっと早い。でも、私の心臓の方がさっきの夢でまだバクバクしている。
「どうしたんですかマスター? 何か怖い夢でも?」
「ううん。怖いっていうより……凄い夢を見てた気がする」
本当にすごい夢だった。だからこそ、そういう気分になってしまった。
「ねえ、リズ……今からいい?」
私の上目遣いに、リズが私の意図を的確に察してくれる。リズが時計を見る。まだ、日本でいう深夜を過ぎた時間帯だ。
「今からですか……まあいいですけど……今日はしないんじゃなかったんですか?」
「うーん……そのつもりだったんだけど、ちょっとね」
「あー。もしかして、さっきの夢に私が出てきて何かしましたか?」
さすが私の嫁さん。私がどんな夢を見ていたのかも分かってしまうらしい。
「まーそうだね。現実世界のリズより、夢の中のリズの方が凄い事してきた気がするなー」
嫉妬するリズが見たくて、わざとそこだけ強調して言ってみた。
それにしても夢の中のリズは本当に積極的だった。いつもの数倍くらい。
「……それなら本物が夢になんか負けてはいられませんね」
あ、現実世界のリズもやる気になってしまった。
「マスター」
「リズ……」
やがて引き寄せられるように唇が近づき、ついばむように、触れるだけのキスを繰り返す。
「んっ……んん……あの、明日は公務があるんだから、その……優しくね」
「自分から誘っておいて優しくしてもらえるとでも?」
あ、この笑みは聞いてもらえないや。
「ううー、分かってるよ。でも本当に優しくね」
今の私、絶対顔真っ赤になってる。
「分かりました――私も明日の仕事に支障をきたすくらいまでやろうとは思ってないよ」
「――ッ!」
押し倒された。そのままの勢いでリズが私の唇を強引に奪う。
「ん、ふ……」
突然の事に驚いたものの、あれ、これ夢でも似たような事があったなと思い出し、リズの首に手を回すと、リズもそのしなやかな足を絡めてくる。
暫く唇を交わして、いつもよりちょっぴり長く貪られた後、解放してくれた。私もリズ成分をたっぷり堪能した。
「ぷはー! リズ、いきなりはずるいって!!」
「ごめんごめん。マスターが可愛くて、つい」
さっきの私、どんな顔してたんだろう? うん、考えても恥ずかしくなるだけだからやめよう。
それにしても……リズの敬語の使い分けは本当にずるいと思う。
「明かり消すね」
「うん」
リズが明かりを消す。今度は現実世界で甘い夜を過ごす事になった。
◇◆◇◆◇
次の日、私はリズに腰を支えられながら屋敷を出て公務に向かった。
屋敷を出る時、レベッカがすっごい呆れ顔で私達の事を見ていた。うん、普通に恥ずかしい。
でも私は悪くない。悪いのはリズの方だもん。
もしかしたら、これが夢の続きなのかもしれない。
だとしたら……悪くはないかな。
「さっ、今日も一日頑張りましょうね。マスター」
リズが不敵な笑みを浮かべる。
「う、うん……そうだねリズ」
でも、私は嫁に一生勝てないのかもしれない。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
少しでも、二人の百合百合した様子を描けてればいいなと思います。
全年齢ではここまでが限界です。