8話 一悶着の始まり
8話です。
三人称なので心の声にかっこを使いました。
──春樹が寝ていた頃。
「じゃあ、今日は終わりよ〜、気をつけて帰ってね〜」
6時限目の後、担任の金本先生が帰りのホームルームを終わらせる。
先生の一声でホームルームが終わると一気に教室内が騒がしくなった。中には終わった瞬間扉を開けて部活へと走っていく生徒や今から帰る準備をする生徒など様々。金髪男こと佐々来 奏多は部活へと走っていく生徒の一人だった。
いつもの騒がしくなる原因は「今日の○○面白かったよね」や「もうあのマンガ読んだ?」のような現在の友達の状況把握。「今日」という日の総復習的なものだ。自分の価値観が友達と違ったらどうしよう、もっと友達と楽しみたい!などの思惑が見て伺える。人は他の人からの評価を気にするのでこれらは当然の心理と言える。
今日もこれらの総復習が行われる。だいたいの話題はさっき提示した通り。
しかし今日はそんなほのぼのした話題になるわけが無い。
今日はあの噂が広まった日、松島がものすごい発言をした日。こんな話題があるのにも関わらず他の話題をする人がいるであろうか。
否。そんな人いるわけが無い。
「松島さんと笠柳くんって本当に付き合ってたんだね〜」
「まじ、びっくりした〜。 まさかあの美里がね〜」
このように驚きその驚きを共有する女子。
「あいつ、ちょっと1発殴りにいかね? なんか呑気に寝てやがるしよ」
「いやいや、バカなのお前? 1発で俺の怒りが収まるとでも? もう100発はいいだろ」
驚きを通り越し怒りをあらわにする男子。
普段部活へとダッシュで向かう生徒もところどころ残っていた。よってより一層普段より騒がしくなっている。
そして、当然その話題の渦中の人物、松島 美里の周りには人だかりが出来ていた。まるでハリウッドスターがきたのか?と思うほどに。
もう1人本当はそうなる人がいるのだが、今はぐっすり寝ている。その寝顔は気持ちよさそうに眠る猫のような可愛い顔·····ではない。
それは置いといて、美里の席では周りの人だかりから美里への質問が飛び交っていた。質問の内容は人それぞれで主に女子が美里の周りを包囲していたため日頃の恋愛の話を聞きたい女子達は松島と春樹の仲を疑うような質問は出ていなかった。
「ねえねえ美里! 笠柳くんとどこまでいった?! もうキスとか?!」
「いやいやまだそこまでいってないよぉ」
「ねえ! どっちからなの?! どっちから告白した?!」
「えへへ、それは·····ねぇ?」
「なにそれーーー!?!」
困惑したような表情を浮かべながら答える美里。しかしどこか嬉しそうな雰囲気を醸し出している。その雰囲気を周りの女子達はなんとなく読みとっているらしく気兼ねなく質問していた。
しかし、周りにいる女子達の多くはいつも美里とご飯を食べたり帰ったりなどしている美里の友達。残りはゴシップ好きの女子や美里とあまり話してはいないがクラスカースト上位の人達。
このことから分かるように、たいして美里とは仲良くない、ゴシップ好きでもない、別にクラスカースト上位でもない。この三拍子揃ったあかりは教室の隅でハンカチをかみながらわいわいしている女子達の真ん中にいる美里を鋭い目線で睨んでいた。
他人から見ると恋人を取られて恨んでいる女子そのものだ。
(なんで?! なんでなの! 松島さんがハルのこと狙ってたなんて! 松島さんなんてノーマークだよ!)
睨んでいるその目には悔しさや後悔などがにじみ出ている。松島に春樹をとられた、さらに松島のことをなぜ自分のライバルとして認識していなかったのか、それらが合わさり、疑う目線が睨みへと変化しているのだろう。
美里はあかりのその目線に気づくことも無く春樹とのあったのか分からない惚気話に現を抜かしている。
あかりは目に映るその光景に怒りがふつふつと煮えたぎっていく。
(私のことなんて眼中ないの? ハルの相手はこの幼馴染のあかりが1番分かってるのに?! うぅぅぅ。 こうなったら松島さんに宣戦布告してやる!)
あかりはその自分の中にある怒りを活動源とし、いつも雲の上の存在と思っていた松島さんと全面戦争しようと闘志を燃やすのだった。
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