6話 笑顔
6話です。
「だからここは㏌が入るわけ~い。 O·····K?」
英語の先生の少し英語の発音が入った日本語が二年四組の教室中をかけめぐる中、二年四組の生徒の大半はある場所を陰ながら見ていた。
そのある場所というのは言わなくてもわかるだろう。
クラスでは様々な顔色、異常な行動が多発。もうテロでも起きたんじゃないかと思うほどに爆発的に。
ある一人の生徒はもうそれはすごい色の顔色。例えるなら目の前に怪獣でもいるのかと思えるほどの死んだような真っ青な顔。
その隣りの生徒はこんなの生きている価値がないと言っているかのような泣き顔。
廊下側の金髪の生徒は怒りなのかそれともその現実をただただ受け止めきれていないだけなのか分からないが英語のノートを手でぐしゃぐしゃにし机をバンバンと叩いている。
この異常な光景に先生は内心帰りたいだろう。実際今の先生の手では小刻みに震えている。
そしてある場所ことある一人の生徒こと俺こと異常な顔色の生徒代表、笠柳 春樹、
ヤッホー、ヘイヘイヘーイ、ヒューヒュー、ハッハー、ネッムイー
このように俺は顔色どころか頭の中まで悪くなっている。
もう何も考えたくない、早く帰りたい、眠い。最後の感情はあれだがこれらの感情により完全に俺の思考回路の線は故障していた。
あの松島の一言が発せられた瞬間授業が始まる鐘が鳴った。よって松島に何も追求する事も出来ず収集がつかなくなりこの状況を生み出しているわけだ。
たった一言されど一言·····。
─────────
「──っ、ルっ、ハルっ起きてっ」
「んん」
どうやら寝ていたらしい。寝ていたこともあってか頭は冴えていた。
見上げると小動物を彷彿させるあかりの可愛らしい顔。その顔に写っている表情は昼休みの絶望的な顔とはかけ離れた笑顔だった。
しかしいつもと違う。あかりはこんな風な作りものの笑顔はしない。
俺はどこか不信感を覚えながら問いかける。
「今の時間は?」
「もう学校終わったよ! ハルったら5時間目の後も爆睡で起きなかったんだから!」
「うわっ、まじかよ」
咄嗟に周りを見るとあかり以外誰もいなくあかりだけだった。
俺が記憶がないのはあのいかれてた時からだ。
あの後俺はどうなったんだ?
あの状況の後どうなったのか俺は知らない。というか5時限目の時もいかれててあまり周りを見ていなかった。だから昼休みの後の出来事は全くだ。
俺は恐る恐る聞く。
「えぇっと·····俺が寝てた時クラスの人たちはどうしてた?」
あかりの笑顔は一瞬消えたがまた偽の笑顔になり俺の問いかけに答える。
「別に何もなかったよ!」
「え、本当に?」
「う、うん!」
俺は注意深くあかりの目を見る。俺はあかりも目をしっかりと捉えるとあかりの目の様子を伺った。
するとあかりの目は右往左往。あかりの見る先を見たが何もない。
確信犯だな
あかりは噓をつくと大体目をキョロキョロとする。
この仕草、一見可愛く思えるがだまされるなよ。 これをしたら明らかに噓をついてるからな もう一回言っとく、キュンとしたら負けだからな
俺はじろっと疑うような目をしてあかりに言う。
「本当に本当だな? 本当じゃなかったら·····分かってんだろうなぁ?」
俺は先程会得した技『金髪男の圧』を使った。
この技は昼休み校舎裏で金髪男に尋問された時金髪男が俺に言ってきた言葉、
『──別れなかったら·····分かってんだろうなぁ?』
これから会得した。
「~たら」を先に言い、少しためてからの「分かってんだろうなぁ?」だ。(みんなも使ってみよう!)
俺はこの技(いや別に金髪男は自然と口から出ただけだと思うが)を金髪男から使われた時何とも言えない圧を感じた。
この技で普段のほほんとしているあかりは本当のことを吐くだろう。
俺はあかりを再度じっと見つめる。
「ご、ごめん·····何かは起こったよ·····」
よぉし!
俺は心の中でガッツポーズをする。技が利いたのだ。
「やっぱりか。 で、何が起こったの?」
「い、いやそれは言えないよぉ」
あかりは恥ずかしそうに少し怒ったように言った。
「ん? なぜに?」
「い、いや、だからぁそれは言えない!」
「はぁ?」
言いたくないような理由でもあるらしい。俺はその理由は何なのかを考えているとあかりは続けざまに、
「で·····その·····昼休み松島さんが言ったことは、な、何かの間違いだよね?」
「当たり前だろ。 何言ってんだ。 俺があんな高嶺の花と付き合えるないだろ。 何かの間違いだよ」
俺はあかりの質問に怒りをおぼえる。
あかりに対しての怒りではなく松島に対しての間接的な怒りだ。あのクラスメイトへの松島のふざけた返答によって俺の学校生活の平穏の字が崩れ去った。
松島は何を考えているのだろうか。
「そ、そうだよね! よ、良かったぁ」
「良かった?」
「い、いやなんでもないよ」
そう言うあかりの笑顔は偽物から本物へと変わっていた。
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