17話 理由その2
17話です。
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「じゃあ、なんで告白してこなかったんだ?」
松島は俺の事を好きらしいが告白はしてこなかった。しかし、あの噂を認めることにより俺と付き合っているという事を噂から事実にし、周囲に認知させた。それにより、俺と松島は他人から見るとラブラブカップルになったのだ。(俺の許可も得ず)
正直に言う。
俺はそんなやり方、嫌いだ。
好きになりもし付き合いたいのならば、玉砕覚悟で告白するというのが筋だと思う。振られてもいいじゃないか。死ぬ訳でもないんだし、またアプローチを続けてその人のハートをゲットすればいい話だ。
簡単では無いかもしれないが、簡単じゃないからこそ、自分自身も燃え頑張り続けられ、相手もその熱さに自分を好きになるのではないだろうか。その過程こそ恋愛というものには必要なのではないだろうか?
松島はどんな考えを持って、この卑劣な方法を行ったのかは知らないが、もし理由が「恥ずかしかったから」とかだったら俺は·····。
だが、松島の意見も聞く必要がある。
俺は松島の次の発言に耳を傾けた。
「そ、それは·····」
案の定、口篭る。
「なんでだ?」
俺は強い口調で言った。
それに対し、松島は、
「こ、告白しようと思ったんです·····で、でも、できなかったんです·····」
「ん? どういう意味だ?」
できなかったとは自分が恥ずかしくてできないのか、それとも、何かに制限されていてできないのか。
「は、はい·····。 私、実は·····」
実は·····?
「許嫁がいるんです·····」
い・い・な・ず・け?
許嫁ってあれだよな。 よく金持ちが言う単語。
「え?! 松島さんって、か、金持ちなのか?!」
許嫁よりまず松島が金持ちという衝撃的事実に驚く俺。
「え、い、いや、まあ、他の人よりはあると思います」
あ、よくよく考えてみればさっき言ってたな。松島書店の社長って。
で、それはそれとしてもう1つ。 なんだっけか? えっと、許嫁がいるんだよな。 許嫁·····許嫁·····許嫁ぇぇぇ?!?!
2つ目の衝撃的事実が脳内を襲い、顔が、なまはげのようになる。
「許嫁って本当にあったのか·····。 ま、松島さんって、い、許嫁がいるのか?」
笠柳氏。現実を受け止めきれていない模様。松島が「いる」と言っているのに再度聞き直す。
別に嫉妬とかそういうのではないのだが、クラスの美少女に許嫁がいるって知ったら誰しもが再確認ぐらいするだろう。
「は、はい·····。 さっきも言ったんですけど·····」
「ごめんな」
「い、いえいえ、大丈夫です!」
「話を戻すけど、許嫁がいたとしても告白はできると思うんだが。 まあ、付き合うというのは難しいと思うけど」
許嫁がいたとしても告白という行為自体はできるはずだ。
「い、いや、それが·····元々、父にダメと言われていて」
「好きって言う事もか?」
「は、はい·····」
「ん? それだとさっき言ってた事アウトなんじゃないか?」
さっき俺に恥ずかしそうにしながらも大きな声で「好き」と言っていた。今の話からするとこれはアウトな気がするが·····。
「はっ。 ど、ど、どうしましょっ。 か、完全に忘れてましたっ」
そう言いながらその場であたふたする松島。
か、可愛い·····
なんとも言えない可愛さについ見惚れてしまう。
「よし、さっきの言葉は無かったことにしよう」
俺はそれを紛らわすように言う。
会った時から思っていたことだが松島はおっちょこちょいである。外見からは想像できないが話しているとこのような感じ。これがいわゆるギャップ萌えと呼ばれるやつなのだろう。
しかし、松島の親は厳しすぎないか? 許嫁がいたとしてもそれは親が勝手に決めたのであって、その親は娘の気持ちを全く考えてないじゃないか。
これでは、まるで松島は操り人形状態だ。
「だから、噂として·····か」
松島は親によって告白ができない。だから、噂を認めるという手段で俺と付き合おうとした。けれどもそれは、好きという事だけを伝えるためにそうしたのであろうか?
「今、俺と松島さんは付き合ってるってことになってるけど、松島さんは、本当に俺と、その·····付き合いたいのか?」
「もちろんです!」
松島は目を見開きながら、俺の問いかけに対し即答する。すく答えたことから本気という事が分かる。
でも·····
「でも、俺は──」
俺は、松島の告白的発言に返答しようとした瞬間、俺の前、松島から見たら後ろから声が聞こえてきた。
「い、いたぞ! 美里お嬢様だ!」
「そ、そうか! 良かった! ん? お嬢様の隣にいる男がいるぞ!」
「な、なんだと?! お嬢様が危ない!」
その会話が終わると俺の方に向かって走ってくる黒服を着た、いかにもボディガードの風貌をしている二人の男。
聞こえてきた会話、服の上から見てもガタイがよく見える二人の黒服の男からなんとなく察する俺。
え〜っとこれは·····ヤバいやつでは·····?
脳裏に昨日のここでの一件の事がよぎる。
「お、俺は悪い人じゃないです!!!」
咄嗟に俺は叫び、
「ち、違います! 笠柳くんは悪い人じゃないです!」
前にいる松島も俺を庇うようにボディガードに訴えた。どちらの発言もいかにも悪い人が言いそうなセリフだが。
しかし、もう遅く、黒服二人は俺をサンドバッグのように殴りかかってきた。
俺はそれを上手くかわし松島をさらって逃げる·····のでは無くただただボゴボコにされる。
「ぐほっ。 おへっ。 うはっ」
ドン、ゴン、バン。
俺の意識は闇の奥深くへと消えていった·····。
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