10話 起床
10話です。
──ピリリリリリっ。ピリリリリリっ。
「んん」
スマホのけたたましく鳴るアラーム音に不快さを感じながらも毛布の中から右手を出し、近くにあるであろうスマホを手探りで探す。
俺はスマホらしきものが自分の右手に当たるとそれを持ち、長年培ってきた感覚でスマホのアラームの停止ボタンを押す。
アラームを止めても尚、さっきまでの音の余韻が脳内をこだまする。そして、その音も段々と小さくなり消えていく。
俺は一瞬、まぶたを開いたが朝特有の猛烈な眠気に誘われ再び夢の中へと入っていった·····。
「──きー! るきー! 春樹ー起きなさーい!」
「·····んん、なんだ?」
母のものであろう声で眠気が一気に振り払われた俺は、隣に置いてある自分のスマホの画面をつけ時刻を確認する。
そして画面がつき、出てきたのは、
『7:45』
の数字。
「·····」
この文字を見た途端固まる俺。
「·····あれぇ? 7時45分? 確か目覚まし、7:00にかけたはずなんだけどなぁ、かけてなかったっけ?」
俺は今の時刻に疑問を持っていると、ふと夢の中での途中の事を思い出す。
「確か、おかし食べまくってたらいきなり空からうるさいサイレン音が降り注いできてそれで·····」
「うわぁぁぁぁ!!! やっちまったぁぁぁ!!!」
夢の中でのサイレン音。それはいきなりやってきたことなので現実とリンクしている節がある。とすると、いきなりやってくるサイレン音の様なうるさい音なんて朝に鳴る目覚ましの音しかない。
「あぁぁぁ! なんで、こう朝に鳴る目覚ましの音っていつもより嫌な音に聞こえるのかな、まじでやめて欲しいわ」
目覚ましの音に理不尽な怒りをぶつける俺。
目覚ましという物は朝起きるためにあるのだから嫌な音ほど効果があるということ。俺はその目覚ましの本質を否定しながら、くるまっている毛布を投げ捨て1階へと駆け込んだ。
「母さん! ご飯は?!」
「はぁ、やっぱ学校あったのね、起こして正解だったわ。 はいはい、もう用意してあるわよ」
「あざす!」
俺は4人がけのテーブルの1つの席に座りそこに置いてあるハムエッグとご飯を食べ始める。
ハムエッグは母のいつもの味でとても穏やかな気持ちにさせてくれる。
しかし、今は穏やかになっている場合ではない。ゆっくり行くと完全遅刻だ。昨日も遅刻まがいな事をしたのに今日も遅刻とか、もうこのままいくと遅刻常連の火神の仲間入りを果たしてしまう。それだけは絶対に阻止したい。
一応俺にもプライドってものがあるからな
俺はいつもより5倍ぐらいのスピードでハムエッグとご飯を口の中にかきこみ、支度をして家を出た。
「行ってきマンモス!」
「はーい、いってらっしゃーい」
俺は自宅の最寄り駅まで全速力で走る。別に無茶苦茶速いという訳でもないし、遅いという訳でもない。平凡な速さだ。
「はぁはぁ、疲れたぁ」
サッカーもバスケもやってない。というかスポーツ自体をあまりやっていない俺は当然体力がない。こんな今にでもコケそうなひ弱な俺は自宅から最寄り駅の間のほんの500メートル程の道をバテながら走った。
空からは朝にも関わらず日光が地面にサンサンと降り注いでいる。夏の始まりを告げているのだろう。
俺はそんな太陽を鬱陶しく思いながら最寄り駅の改札を潜り「陽向駅」行きの電車に乗り込んだ。
乗り込むと電車の中の冷気がさっきまで走っていた俺の熱気を吹き飛ばしてくれる。本当に電車の冷房は必要な時にかけてくれるのでありがたい。
少し遅れたことにより、やはりいつも乗っている電車と違って満員電車。そっと、いつも座っている一番端の席を見たが当然座られていた。
ま、そうだよな
諦めて、このままスーツを来たサラリーマンが沢山ぎゅうぎゅう押しあっている荒波で呑まれようと、目を離そうとするがそこに座っていた人物に、自然と再び視線が吸い寄せられる。
ん、あれって·····
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