1話 憂鬱
新連載です!
良かったらぜひ読んでみてください!
「噂」
それは、とても怖いものである。下手したら心霊現象とかよりも怖い。いや、怖さの種類が違うか。
まあ、それよりも噂というのには怖い点が二つある。
まず、怖いところ一つ目。噂というのはまず出どころが分からない。
「その噂誰から聞いた?」と聞くと「○○君から聞いた」そして、その○○君に誰から聞いたか聞くと次は△君。その繰り返し。
結果、分からないとなるのだ。
だから出どころをつぶそうとしても無理。(出どころをつぶしても噂は消えないが)誰が何の目的で流したのかも分からない。
恐怖以外の何物でもないだろう。
そして二つ目。噂は時に事実を塗り替えてしまうという点だ。
これが噂の一番怖いところと言っても過言ではない。
「噂は所詮、噂」と考える人もいるだろう。だが「所詮、噂」では片づけられないのだ。
例えば、噂が嘘だったとしよう。そしてその嘘の噂が自分の周りの人たちに瞬く間に広がってしまった。
そんなことがあって君は冷静に訂正できるだろうか?おそらくテンパってできないだろう。
しかし、もし仮にしっかりと一人ずつにテンパることもなく訂正したとしよう。
けれども、噂は消えないと思う。なぜなら、人は信じてる人が多い方の意見を信じようとするからだ。
一人一人、丁寧に誤解を解いたとしても他に信じてない人も大勢いるわけで、誤解を解いた人もまた誤解が生まれ、その大勢に流されてしまうだろう。
まあ、とにかく俺が言いたいのは
「噂を侮るな」
ということだ。
─────────
俺、笠柳 春樹は今猛烈に困っていることがある。
ん?困っている顔に見えない?
ああ、まあ、そう見えるかもしれない。だって、他の人が思っているような「困っている内容」ではないのだから。
俺は複雑な顔で校庭のベンチで朝、コンビニで買ったカレーパンを貪る。小学校以来食べていなかったので久しぶりのこのパン用のカレーが口に入ると新鮮だった。
そして、カレーパンの余韻に浸りながら空を見上げる。空には雲一つなく、今の俺の状態とは真反対だ。
後明日は台風が来るとかなんとかとテレビで着ぐるみの被ったキャラが言っていたのでほんとにくるのか?と言いたくなるぐらい快晴だった。
俺はいつまでも空を見ていたい、そんなことを思っていたのだが真上にある太陽の光のせいで途端に前を向く。
「まぶしっ」
俺の目に見えているのは太陽の跡だけだった。光をずっと見ていると目にその光の跡が残るだろ?あれだ。
当然の光の跡はどんどん薄くなっていきやがてろうそくの灯火のように消える。
消えたその先に映るのは、一年生たちが作った花壇にそこに植えられたパンジーやコスモスなどの色とりどりの花たち·····
ではなかった。
「ねえ、あんたほんとにあんなのと付き合ってんの?」
「えへへ」
「まあ、あんたがいいんならいいんだけどさ。美里ならもうちょっといい人と付き合えるのに」
「い、いや春樹くんが一番いいの」
「あらら、もう下の名前呼びですか。仲がよろしいようで」
「えへへ」
そんな会話をしながら俺の存在に気付くこともなく少し前を通り過ぎていく二人の女子高生たち。
一人は、黒髪でまつげが長く、胸も大きい、誰が見ても美人と思うであろうルックスの持ち主。
もう一人は、金髪でスカートの丈も短い如何にもギャルという言葉がお似合いな人物。
別に聞いていたわけではないが聞こえてきた言葉から読み取るに、どうやら片方の黒髪の人物の付き合っている人について話しているようだ。
付き合っている人の名前は「春樹」と言っていた。
春樹と言えば俺の下の名前でもある。普段なら「珍しいこともあるもんだな」で終わっていたかもしれない。
しかし俺は今、猛烈に肌の毛穴という毛穴から汗が放出されている。おかげで制服もびしょびしょ。
なぜ、俺がこんなに焦っているのか。
この答えは二日前にさかのぼることになる。
読んでくださりありがとうございました!
評価やブクマをしてくださるととても嬉しいのでよろしくお願いします!!!