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どうやら竜人の街に転生したようです

作者:

 どうやら私は竜人の街に転生したみたいです。

 『みたい』というのは私が竜人ではなく、ペットのトカゲでもカエルでもなく……家政用の機械……前世で言う所のアンドロイドになっているからです。




 今の私が居る世界は……星は?どうやら前の地球とは違うようで、私が知る限りこの星のいわゆる知的生命体は全て竜人です。

 もしかして、遥か未来の地球では?と考えたこともありましたが、大陸の有り様も、古代の発掘品の数々も前世の知識に、かすりもしませんでした。……まあ、絶対と言うわけではないのですが。


 私が自分の転生に自信が持てないのは、自然に産まれた存在ではなく、生み出された存在だからでしょうか。

 身体の大部分は無機質で作られ……でも神経や一部の脳髄に当たる部分は有機質ですね。


……もしかして、私が本当に転生したのは、


 いえ、そんな今更確かめようもないことは、どうだって良いのです。

そろそろ、お嬢様が目覚める頃合いです。軽食の準備をしなくては。




 私のお仕えするお嬢様は深緑の鱗を持つ、まだ幼いと言っても良い方です。本当ならもっと明るめの鱗のはずなのに、最近は少々くすみがち。

 

 ……あぁ、腹立たしい。本当ならもっと美しい鱗であるはずなのに。


 家政機としても、不甲斐ないとしか言いようがありません。

 なぜこんなことになっているかと言うと、それは栄養が足りていない……食べるものをまともに食べていないから。なぜ食べていないかと言うと、お金が心許ないから。なぜ、お金が心許ないかというと、お嬢様の父親……ご主人様が仕事だか趣味だかに没頭し過ぎて、口座の金額が足りなくなったから!!

 もし私が前世の身体を持っていたなら、眉間にしわを寄せ、思い切り歯ぎしりしていたことでしょう。


 全くもって腹立たしいことに、権限第一位のご主人様から『呼ぶまで邪魔をするな』と言われたために、すぐそこにあるドアをノックすることさえ出来ず。使用中の端末機にメッセージを何度となく送っても全て無視され。石造りの家を崩すことも出来ず。権限第一位が相手のために、迂闊に役所に届けも出せない。


 ……あぁ、この身体に強制項目などなければっ。







 やっとのことで、外部の竜人にお嬢様を助けさせる事が出来ました。

 直接的な事が封じられていたため、恐ろしく遠回りをすることになりましたが……。

 まず、前世の記憶を流用した料理のレシピ……もちろん竜人の好みにしたものを外部のネットワークに大々的に無料公開しました。次に商業利用……文献にするのは勿論、食堂やらイベントに一段上のレシピを流します。……最終的に世間の興味を煽って、【自宅対談のインタビュー】に持ち込み、お嬢様とご主人様の家に呼び寄せ、『呼び鈴を鳴らしても出ない……もしや倒れているのでは?!』という不安を植え付けて警察機関に踏み込ませました。




 あぁ本当に長かった……間に合わないかもしれないという恐怖と怒りで、どうなることかと。





















 私は罪を犯した。


 私には妻がいた。

 幼き頃から傍にいて、年頃になったのでなんとなく一緒になった。妻は私と違って感情の起伏が激しく、楽しいことがあれば顔中を使って笑い、私が食事を抜いたと言って怒り、私たちをおいていくのが悔しいと言って泣いた。

 妻が居なくなって、私はどうしたら良いのか分からなくなった。



 ……もう一度、私に笑ってくれたら。




 私は罪を犯した。

 妻の遺体を切り開き、とある機械の素材に使った。


 私が許される日は、永遠に来ない。






 全てを忘れるために、研究に没頭した。……その振りをした。

 

 


 私が  に会えないのは、研究をしているから。

 ドアをノックして  が顔を出さないのは、私が集中しすぎて、聞こえないから。

 端末に  のメッセージが送られて来ないのは、研究が佳境に入り、私が見ることを忘れているから。




 この研究が終わればきっと……。




 ……私と私の娘は、かなり危ない状態だったらしい。

 いつの間にか家政機に入っていた、料理のレシピを目当てに人が集まり、助け出されたそうだ。


 ……料理のレシピなど入れただろうか?

 確かに、ある程度の自由……インターネットでの検索程度の権限は付けていたが……。

 

 なんとか回復して、家に戻れた私の前にはものすごく苦手な虫の山盛りが。

 ……娘の前には良い匂いのする、料理が。


 他に食べるものが無いため、仕方なく虫を口に放り込みながら、これからの予定を考える。

 

 戻ってすぐに点検したはずなのに……再点検か?

 直ぐに廃棄をするには時間もないし、資材も掛かりすぎる。




 私が研究を再び始めるには、かなりの時間が掛かりそうだ。






 









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