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学園都市アステラルテ  作者: 順砂
間章『寮にいてはいけない日』
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 『寮にいてはいけない日』④

 あれから三十分ぐらい後、ハインライやアルナのアドバイスもあって、丈夫そうな小振りな短剣を買ったハルシェイアは、同じく剣を決めたケイン、ダッテン等とともに店の外に出た。

 ただ買い物している間、アルナとセラフィナが妙に話し込んでいるのが妙に気になった。二人は初対面のはずで、セラフィナは実は人見知りな面もある。だから少しだけ疑問に思ったのだ


(何を、話していたのかな…?)


 そんなことをハルシェイアが思っていると、ハルシェイアに遅れてアルナが店から出てきたセラフィナがこんなことを言った。


「というわけで…今から皆様をわたくしのお屋敷に招待することにしました」

「………え?」


とハルシェイアは首を傾げた。


「セラフィナ、の、おうち?」


 ハルシェイアは疑問符を浮かべながらセラフィナをみると、ニコニコと華やかに笑う彼女がそこにいた。セラフィナの金色の長いまつげとその奥の翠玉が輝いている。


「ええ、昼食でもご一緒にと思いまして。ハルシェイアに、アルナティアさん、ついでにそこの男子たちも招待してさしあげますわよ」

「うわ、いきたくねぇ~」


 ついでのように言われてすぐに顔をしかめたのは、もとよりセラフィナ達にそれほど良い感情を抱いていないケインだった。とはいっても、それは客観的にみてもちょっとした悪態にすぎず、セラフィナも「別に来たくないようでしたら来なくてもいいですよ」と軽口で返す。


「そんなことより、ハルシェイアはどうですか?」


 セラフィナに「そんな」呼ばわりをされたケインが抗議の声をあげたが、華麗に無視された。


「え、えっと…?」


 ハルシェイアは答えを求めて、ハルシェイアを寮から連れ出して、ここまで連れてきてくれたアルナの顔を窺った。


「私は大丈夫にゃあ。でも…ハル、次第、かな?」

「え…、と」


 ハルシェイアはそう言われて迷う。正直行きたかった。友達の家に呼ばれるのは記憶にあるだけで二度目。この間リスティの家に泊まったのが最初だった。でも、今日の約束はアルナとのもの。ここでセラフィナの誘いをうけることは、アルナの予定を崩すのではないかと、ハルシェイアはそんなことを恐れた。


「あ、あの…その…」


 困ったハルシェイアはもう一度アルナを見上げる。

 するとアルナもハルシェイアが何を悩んでいるのか察したようで、苦笑気味にハルシェイアに言う。


「ん~…?あー…にゃるほど――午後は何も考えてないから、ハルがきめていいよ。というか、私は既に行くつもりだけどにゃ~」

「え…そう、なんですか?」


 それを聞いたハルシェイアの顔がパァーと輝いた。ほくほく顔になったハルシェイアはセラフィナに向き直る


「せ、セラフィナ、あの、その…行っても…いい?」

「もちろん、ぜひいらっしゃって下さい!」


 セラフィナにこやかに笑ってハルシェイアの手を包むように握る。ハルシェイアは、そんな嬉しそうなセラフィナの様子に自分も嬉しくなって同じく微笑んだ。そして、思う。


(セラフィナ、って…やっぱり、美人、だよね。なんか、顔近いと、よくわかる……)


 碧色の宝石のような瞳に、高い鼻、金糸のような長いまつげに、柔らかな線を描きながらもメリハリのある鼻梁、全体的に彫刻のように整った相貌――やや幼さを残すとは言え、セラフィナは同性も羨む花のような正統派の美女であった。自分の容姿を気にしないハルシェイアも、これを前にすると流石に若干の恥ずかしさを覚える。

 もっとも、鏡のないこの場では自分の姿などみることができず、自分の容姿が劣っていると思い込んでいるハルシェイアには、傍目には甲乙付けがたい美少女二人が手を握り合っているようにしか見えていないということなど想像もできていなかった。

 そんな時、店を出てから黙っていたハインライが声を上げた。


「男子も、ということは私も行ってよいのかな?」

「ら、ライ?!」


 ケインが隣にいたハインライに驚いたような声を上げた。いつもクールで女性にも権力にも興味なさそうなハインライが女性の家に行くと言うとは思わなかったのだ。

 それは他も同じ思いだった。言い出したセラフィナも、そのお付きの二人も、ダッテンも、ディランも心底、意外そうな顔をしてハインライを見つめた。そんな雰囲気を掴めていないのは、ハインライをよくしらないアルナと浮かれ気味のハルシェイア、そしてハインライ本人だけだった。

 そしてその本人と言えば続けて、


「ゴリウスの摂政の邸宅はどんな造りなのか、興味があったのだ」


と平然とのたもうた。さも当然のように。


「「「「………」」」」


 純粋な好奇心だったかと、ハインライの同級生達は唖然したと同時に不思議と納得した。


「あ、私も、気になるよ、セラフィナのおうち」


 無邪気に言うのはハルシェイア。可愛い笑顔で騙されそうになるが、一同は「そういう意味じゃない」と内心ツッコミを入れたのだが、もちろんハルシェイアには伝わっていなかった。


「…?」

「?」


 そんな面々にキョトンとするハルシェイアと怪訝そうな顔をするハインライに、誰ともなしに自然と溜息が出る。そんな微妙な空気を破ったのは仕方なそうに頭を掻いたケインだった。


「ったく、ライが行くなら俺も行くわ。確かにゴリウスの摂政邸に滅多に入れないしな」

「あら、別に来たくない、というのであれば、来て下さらなくともよろしいのですわよ?」

「いんや、行く。意地でも行ってやろうじゃないか!」


 そうやってケインは笑った。やや勝ち誇ったような顔をセラフィナに向ける。

 それに対してセラフィナはちょっとだけムスッとした表情を作ったが、仕方なさそうに溜息をつき、周囲はそれをみて吹き出した。ハルシェイアもなぜみんなが笑っているのかよく状況が掴めていないものの、楽しい雰囲気に乗って一緒に笑った。

ちょっと短かったかもしれません。

しかし、うちの主人公はつくづく残念な子……。


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