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学園都市アステラルテ  作者: 順砂
第三章『異邦の地にて』
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第2話「いつもの昼食会」

 明けて翌日、登校したハルシェイアは昼休み旧書庫にいた。今、ここにいるのは三人。ハルシェイア、メイア、それにリスティ。懲戒免職となったリーバイに代わりプリメラが担任なったため、もうこちらでホームルームを開くことは無くなったものの、ハルシェイアたちは書庫整理を進めることを条件に休憩時間や自習に使用させてもらえるようにしたのだ。とは言っても、元々、学校も重要視していない場所なので、使用するに当たって必要だったのは現在の彼女たちの担任で、ここの管理を押しつけられていたプリメラの許可のみだった。

 最近ではなんとか埃っぽさも消えて、昼食を持参した日にはここで食べるようになっていた。今日もハルシェイアはメイアと一緒に朝用意した揃いお弁当をここで食べていた。

 ちなみに中身はライスボールに、茹で野菜とハムというシンプルな物。

「それで、アルバイトすることに?」

 そう訊ねたのはハルシェイアの目の前に陣取ったリスティ。ふわりとした金髪に意志が強そうな表情であるのでなかなか気がつかないが、実はよくよく見れば童顔である彼女は入学当初の騒動以来、ハルシェイアの友人の一人となっていた。

そんな彼女が家から持ってきた小さめのランチボックスには上品なサンドイッチが三つ、そのうち一つは既に半分になって彼女の右手にあった。

「う、うん」

 ハルシェイアが肯くと リスティは残念そうに溜息をついて、

「私を頼ってくだされば良かったのに」

と言う。たしかに仕送り生活をしている他の友人達とは違い、彼女はアステラルテの有力都市貴族の娘であり、かなり裕福だ。一瞬、その考えが浮かばなかったわけではなかったが、友人に甘えたくはなかった。

「私もね、断られちゃったのよ」

 そう言ったのはルームメイトでもあるメイア。ハルシェイアは彼女には、昨夜この事に関しては話しあった。その際、メイアに援助を申し込まれたが、すぐにハルシェイアは丁重に断っている。ハルシェイアとは違い、ちゃんと生活費が届いたメイアだったが、だからといって自分の分だけでいっぱいいっぱいのはずだ。そもそもメイアの家は、歴史は長いがそれほど大きな家ではなく、メイアを送り出すだけでもかなりの負担だと聞いていた。

 すごく有り難いと思いつつ、同時に申し訳なかった

 それにはもう一つ理由がある。現状では貧乏なハルシェイアだが、実はこう見えてもなかなかの金持ちなのである――ただ残念すぎることに手元に無いだけで。役職に対する給料、戦功に対する褒賞金、爵位に対する年金――物欲も殆どなく、国元では父親の屋敷に居候状態のハルシェイアはこれらが手つかずになっているのである。特に爵位年金は、三十年前の改革で大幅に削減(余談だが同時に貴族への免税特権が廃止されている)され、他国の水準からみればかなり低いとは言え、節約すれば四人家族が三ヶ月十分暮らせるような額を毎月、一人で受け取っているのだ。

 ハルシェイアはそういった意味でも借りることに申し訳ない気になるのである。

「ごめん、ね…でも、ありがとう…」

 ハルシェイアははにかむ。それを見て、二人は敵わないと言った様子で溜息をついた。

「え?」

「なんでもありませんわ」

 リスティは頬を赤らめて、恥ずかしそうにそっぽ向く。それに対して、全く自覚のないハルシェイアは首を傾げる。その仕草ですらなんとなく小動物のようであった。

「と、とにかく…今日、授業終わってからアルバイト先に行くんですわよね?」

「うん」

「どこで働きますの?」

「ぇ……―――アレ?」

「え?」

 何故か疑問符を浮かべたハルシェイアに、訊ねたリスティも困惑げにハルシェイアのルームメイトであるメイアの顔を見たが、メイアは首を振り、そのまま心配そうにハルシェイアを見る。

「ハル、そういえば、私も聞かなかったのだけれど……?」

「まさか……どこで働くか、知らない、ってことは…無いですわよね?」

「……あの…、――ぅ、うん」

 ハルシェイアは首肯した。聞いた二人は頭を抱えたくなる。いくら信頼できる寮監さんの紹介とは言え、働き先を知らないで働きに行く人間が何処にいるのか。

「でも、デボネさんが、行ってからのお楽しみ、だって…。それに簡単な事務整理だって、言う、し……」

「あーもう、わかりましたわ。まぁ、寮監さんのご紹介というなら多分、そうそう悪い所でもないんでしょうが。でも、そんな調子で本当にしっかり仕事出来るのかしら」

 呆れているような、怒っているような、心配しているようなリスティの反応に、ハルシェイアはちょっと萎縮したように、

「多分……。経験、ある…し」

と小さく反論する。それに対して、

「経験…あるんですの?!」

とリスティが本当に意外そうに叫び、何故か確認するようにメイアに視線を合わす。気がついたメイアは苦笑気味に、

「お父様の手伝いであるみたいよ、結構、本格的に」

と答える。ハルシェイアの事情を知っている彼女は嘘を言ってはいない。ハルシェイアのジャヴァールでの仕事は拡大解釈すれば、父親の手伝いになるだろう。少なくとも動機はそれである。

「なら、いいのですが……そう言えば、書架整理も慣れていましたし」

 この旧書庫の整理の様子を思い出したのか、リスティはメイアの説明を聞いてしぶしぶ納得したような表情をする。リスティはリスティなりに友人の心配をしているのだ。それに気付いているメイアは優しく微笑み、それにハッキリとは気付いていないハルシェイアは首を傾げる。

 それでその話は終わりかと思えば、突然良いことを思いついたとばかりにリスティが嬉々とした顔になって、勢い込んでこんなことを言い出す。

「そうだわ!もし仕事が合わなかったら、私の所に来ればいいのよ。うちで仕事あげますから。私のコンパニオンとかどう?――むしろ、今からでも」

 この場合のコンパニオンは上流階級の女性の話し相手のことで、主にアステラルテより西、セラフィナの出身地のゴリウスやメイアの出身地であるルメゲンなどにある職業である。それら国の貴族や大富豪の女性は殆ど外へ出ないため、教養高い同性を話し相手として屋敷に雇うことがあるのだ。

 もちろんそんな職業は女性が比較的活動的なアステラルテではあまり流行ってはいない。おそらく、言ったリスティ自身、そういう知識だけしかないのだろう。これは事実上、「ハルシェイアなら喜んで養います、むしろ養わせて」と言っているようなものだ。

 それに気がついたメイアはリスティに対して苦笑気味に息をついた。そして、やんわりとリスティを窘める。

「それは最終手段よね?」

「あら、私としては最初手段でも良いのよ?ふふ」

 なんとなく牽制し合っているような雰囲気になってしまっている二人の様子が理解できないハルシェイアだったが、一つリスティに言わなくてはならないことを思い出した。

「あ、あのぉ…リスティ?」

「あら、ハルシェイア、やっぱりうちに来る?」

「あ、いや、そのありがとう…でも、ね?――先約、が…」

「……先約?」

 意外なことを言われたとばかりにリスティは首を傾げる。今のは全くの思いつき。先約が有るなどと予想の範囲外だった。

「さっき、体術の時間の時、セラフィナに話したら『もし仕事が合わなかったら、わたくしの所に来なさい、うちで仕事あげますわ――そうね、とりあえず私のコンパニオンとかどう?』って、言われて…」

「ナっ」

 既によく話をする中になっているハルシェイアやメイアと違い、入学当初のごたごた以来、今でもリスティとセラフィナの仲は悪い。何かと授業でも休み時間でも何かといがみ合っている。基本的に似ているところがあるので、同族嫌悪もあるのかもしれない。

 リスティは机をバンと叩いて身を乗り出す

「なななな、なんっで、すってぇぇ!?--セラフィナ?よりによって、どうして?!」

「あ、あの…え、えーと――なんで、だろう…?」

そんなことを聞かれても、ハルシェイアそう答えるしかない。だけれども、リスティはそんな答えでは納得せず「あの女…一度…」などと何やら物騒なことをつぶやいており、ハルシェイアの横のメイアは仕方ないといった様子で二人のやりとりを眺めていた。

そしてハルシェイアは、

「ほんとうに…なんで、だろう…ね?」

と、何となくもう一度、つぶやいてみたが、勝手に盛り上がってその呟きを訊いていなかったリスティと聞こえてはいたが何となく答えを言う気になれなかったメイアしかこの場にはいないので、当然ながらそれに対する応えは返ってこなかった。


リアルにハルシェイアと同じ状態になりそうな筆者ですorz

冗談ではなく。


大学院に進学したは良いけれど、先輩から「毎週月曜日、懇親会あるから」…と。

バイトも現在はしていないし毎週、3000円未満出費は痛すぎる…。

しかも、お酒飲めない、コンパ嫌い、ノリ悪い、人付き合いが苦手な自分がコンパ係とか…orz


というわけで、ハルシェイアの気持ちがよく分かる……。

ともかく、暫く新生活で忙しいですが、更新は書きため分を放出まで週一ペースでいけたらなどと思っています。


愚痴ばかりで済みませんでしたら。良ければまた次回。

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