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学園都市アステラルテ  作者: 順砂
第一章『獣の剣』
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第1話「学園都市」

 独立都市アステラルテ。世界最大の大陸フォルイグアスタの中部にある大都市。

 七つの丘の周囲を城壁で囲み、また東西南北の交通の要所の一つ。

 また現在唯一の世界宗教と言えるイステ教の単一司教区として大聖堂もあり、その点でも重要な都市である。

 しかし、そのような特徴がありながらも商業都市や交易都市、まして宗教都市とは呼ばれない。

 独立都市アステラルテ――またの名を学園都市。市中に五大大学以下種種の教育機関を要する都市である。


「大きくて立派な城壁…新都に築いているのと同じくらい?」

 城門前の長距離乗合馬車発着場についた乗合馬車の一つから感嘆の声を挙げて一人の少女が降り立った。年の頃は十一、二才、歳に似合わない長い白髪が目立ち、きれいな翠色の瞳が印象的な少女であった。

「お嬢ちゃん、ぼっさとしてないでとっと荷物とりにきなさい」

「あ…、ご、ごめんなさい」

 少女は呼ばれて、ハッとしたようにあたりを見回した後、馬車の後部の荷物置き場に走った。そこには既に同じ馬車に乗っていた小父さんや小母さんたちが自分の荷物を点検していた。少女を呼んだのは、中継地点のルエゲンから隣の席だった小母さんだった。なんでも、夫に先立たれて、しかもこのアステラルテに留学していた娘がこの度、この街の人と結婚したので一緒に住むことにしたというのだ。

 小母さんはニカっと笑うと、地面の方を指さして

「ほら、これお嬢ちゃんの荷物だろう」

「あ、はい、そうです」

 そこにあったのは彼女には少し大きいように思える古びたトランクに長細い袋。

「持てるのかい?あたしでもちょっと重かったよ、その二つ」

「あ、いえ、力はあるほうなので、若いですし」

「言ってくれるじゃない」

「へ…えぇ?!ああ、いえそういう意味じゃなくて、えっと、あの…」

 その少女の可愛らしい狼狽え方にそこにいた御者や乗客がどっと笑った。少女はリンゴかと思うほど真っ赤になって、それがまた微笑みを誘った。


 あの後、小母さんはからかったのを謝った後、再度、心配して荷物が持てるかどうか少女に声をかけたが、少女は丁重に断る。

「そうかい?」

「ええ、ほら」

 と、少女はトランクの上に長い袋を乗せて小母さんの前で軽々と、まではいかないもののほぼ問題なく持って見せた。

「こりゃあ、すごいや。見かけによらないねー…と、そうだ、身重の娘が待っているんだ、あたしは急がないと」

「あ、そうですね」

 少女はそれを聞いてちょっと寂しそうな表情を見せた。すると小母さんは朗らかに笑って、言う。

「なんて顔してんだ、縁起が悪い。同じ街にいるんだいつでも会えるさ、娘の家は都市北東部オタブ地区アデン街、フルハスという家だ…まぁ私も行ってないからどんなとこかわかんないけどね」

「え、えっと、オタブのアデン街、フルハスさんの家ですね」

「そうそう、もう一回言うかい?」

「いえ大丈夫です、覚えました」

「ヒュー、流石学生さんだね…おっと、ほんとにもう行かなくちゃね、じゃあね、お嬢ちゃん」

「あ、はい、また」

 少女は重たい荷物を抱えて小走りで去っていく小母さんに別れを告げてから、ふと気が付いた。

「あ、小母さんの名前聞いてない…というより、私、名乗っていない…」

 そうずっと、小母さん、お嬢ちゃんできたのでそんな初歩的なことを忘れていたのだ。

(でも、次会ったときでもいいよね。住所も聞いたし)

 少しこっちの生活に落ち着いたら会いに行こう、そう結論づけて少女は荷物の確認を始めた。


 アステラルテを囲む重厚な城壁には砦のような六つの門(実際には七つだが、西のフランジ門と西南のフランジ南門を一組一門と数える)がある。そのうちの一つ北のルイシュテン門。荷物確認を終えた少女はそこに居た。ここで入市検査をするためである。

 五つある窓口のうちの一つに並び、五人ほどのちに少女の順番が来た。

 少女は荷物と一緒に入学証明証と入寮通知書を審査官に渡した。

「ふむ、ジャヴァール出身のハルシェイア・ジヌール、十二才…この九月一日よりアステラルテ第三中等学校に入学、ふむ。寮は第三学校第二女子寮…なるほど」

 審査官は書類を確認したあと、荷物の検査に入った。トランクの前に長い袋の方を持って、ちょっと緊張気味の少女――ハルシェイアに訊ねた。

「あ、それは…太刀です」

「太刀?武器かね」

「は、はい…剣の一種です」

(もしかして、武器の持ち込みはダメだったの?)

そんな不安のためハルシェイアはガチガチなってうつむいて答える。ただ、審査官はそんなハルシェイアを気にすることもなくあくまで事務的に、

「ふむ…では、こちらの刀剣その他類持ち込み所持許可登録用紙に記入を。あとこちらと、こちらの用紙にも記入して後日、寮と学校に提出。武器はこれだけ?」

「いえ、もう一本脇差…小剣の一種が」

「じゃあ、こっちも書いて」

 と、同じ用紙がもう一枚出てきて、ハルシェイアはちょっと辟易するが、文句は言わない。都市には都市、国は国ごとのルールがある。幼い頃、旅暮らしをしていたハルシェイアはそんな風に義父から教わっていた。

 そんなことを考えていると、隣の窓口で入市審査を受けていた傭兵らしき男が武器の検査をほとんど受けずに門を通っていった。

「あの…」

「なにかね?」

「えっと…隣の窓口で、武器の検査をせず入った人がいたみたい、ですけど…?」

「ん…?あぁ、おそらく市内での就学就労経験があったのだろう」

 検査官によると、どういう制度かハルシェイアにはよく分からなかったけれども、一度でも市内で通学、就労した経験・実績があれば、入市審査が軽減されるとのこと。

(厳重かな?と思ったけど…)

 もちろん、そんなことは口にしない。

 その後、彼女が用紙に一生懸命所定事項を書き込んでいるうちに、その他の荷物のチェックも終わり、各種許可証とその他学校への提出書類などを渡されて、ハルシェイアはようやく門を抜けて市街に入ることができた。

 そこはよく舗装された広場になっており、屋台や露天商の姿があちこちに見えた。この広場から市壁沿いに東西、また門からまっすぐ南に大きな通り、その他中小の道が東西南に伸びている。

(…どっちだろう?地図はないし…)

 ハルシェイアはけっして方向感覚が悪い方ではない。ないのだが、流石に地図無しでここまで大きさの街になると見当がつきにくい。

(確か中東部のアルベタイ地区に学校も寮もあるって書いてあったから…南へ行って、適当なところで聞いてみようかな)

 街の中で道が分からないときはとりあえず方向だけ決めて大通りを行くのがハルシェイアのやり方であった。本当は路地に入ることなども好きなのだが、それは必死に我慢する。そんな事をすれば、目的地に着くまで日が暮れて…明けてしまう。



初投稿です。拙い文章ですみません。

影響を受けやすい人間なので、この先もし読んでくださるなら分かると思いますが、色々なものに影響されています。


主要な物を上げますと、

ファンタジア文庫の『鋼殻のレギオス』や、”小説家になろう”では「ルーフェイア・シリーズ」、『迷い子は夜明けの歌を歌う』など。

パクリにはならないよう、努力しているのですが…どうなんでしょう?


計画性の無い筆者ですが、宜しくお願いします。

また批判・感想、誤字脱字、ここは明らかに間違っているぞ…などという指摘があればお願いします。

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