幕間2-0 「とある姫君の話」
実質、第二章のプロローグとなります。
今となっては昔の話、ある国に一人のお姫様がいました。
そのお姫様は大変可愛らしく、周りの人たちはとても可愛がり、なんでも言うことを聞きました。
お姫様が「綺麗な服が欲しい」と言えば、次の日にはお姫様のために広間を覆い尽くすほどのドレスが並べられていました。「お友達が欲しい」といえば、すぐに百人の見目麗しい女の子がお姫様のために呼ばれました。「城の外に遊びに行きたい」と言えば、五百人の兵隊さんと三十人のメイドさんと一緒に綺麗な湖に、お姫様のために新しく建てられた綺麗なお城に遊びに行きました。
お姫様は何でも手に入りました。何でもしてもらえました。そして、何も知りませんでした。
ある時、お姫様の国が滅んでいました。お姫様は言います。「綺麗な服がほしい」、でも新しい服は出てきません。「友達と会いたいわ」、でも友達はひとりも来ません。「外へ遊びに行きたいわ」、五百人の兵隊さんに連れられて、暗い塔に閉じこめられてしまいました。お姫様はその後もあれが欲しい、これをして欲しいと言いましたが、寒い塔に虚しく響くだけでした。お姫様は分かりませんでした。なんで自分の言うことを聞いてくれないのか分かりませんでした。
それからしばらくしたある日、お姫様は言いました。「ここから、出して」と。すると、すぐに兵士が来て、お姫様を連れ出してくれました。お姫様はとても安心しました。
でも、お姫様はそのままお城の前の広場で首を切られてしまいました。
お姫様は最後まで何も知らないままでした。
――『贈女王の政治寓話集』巻一より――
※『贈女王の政治寓話集』 レンタール朝ゴリウス王国第十四代国王レルテハイト三世が幼少時に、その父王十三代アルテイト四世に代わり国政を指揮していた義母で、当時の正妃<贈女王>から聞いた寓話を、レルテハイト三世が<贈女王>の死後、自分の記憶や一緒に聞いた元侍従、弟妹の記憶などを元にまとめさせたもの。全三巻。主に王族、上流階級としての心得や、政治や権力のことが寓話として語られている。その後、ゴリウス王家のみならず、各国王家に読み継がれていった。
ようやく第二章開始ですお待たせしてしまってすみません。
ただ、長い期間書いたせいでかなりぶれている部分もあり、修正しつつ投稿となるので、毎日更新とはいかないと思います。
三日に一回ぐらい更新出来たならなぁ、と思います。