プロローグ
世界観は剣と魔法のある世界で、ありがちな、ちょっと強い主人公(少女)が学園に入学して…という学園ファンタジーです。露骨な最強物にならないよう注意していますが、このような傾向が嫌いな方はご注意下さい。
私には悩みがある――
――私は何になりたい…?
――私は何をしたい…の?
私が――したあの王様が言っていた。
『君はまだ何者でもない』
と。
私は漠然とした願望もなく、漫然と日々をこなしていっただけ。
ある人は、出世したい、と言っていた。
またある人は、騎士になりたい、と言っていた。
家を継ぎたいという人もいた。
試験に合格して官僚になりたいという人も、
立派な皇帝になって国と国民を栄えさせたいという人もいた。
とにかく戦いたいという人もいたし、
自由に旅をして、色々と見て回りたいという人もいた。
結婚して安定した生活を送りたいという人もいた。
そして、ただ、殺したい…という人もいた。
でも私は出世したいとはとくに思わない。
騎士には気が付いたらなってしまっていた。
家は義兄が継ぐだろうし…
何か他の職…?何があるのかな?
得意なことは戦う事で、でもそんなに好きじゃない。
旅をするのは良いと思う…でもその先には何が?
結婚…想像がつかない。まだ。先、だと思う。
殺すこと…殺したいわけじゃない。
ある人は、このままでいいんですよ、と言った。
ある人は、好きなことをすればいい、と言った。
ある人は、得意なことをすればいい、と言った。
またある人は、好きにすればいい、と言った。
このまま、で良いのかな?
多分、このままでも…ううんこのままのほうが他の人から見れば良いのかもしれない。贅沢な悩みなのかもしれない。
でも違う気がする。なんか違う気がするの。
好きなことはしいて言えば美味しい物を食べること…でも、食べるのが好きだから料理人になりたいというわけじゃない。
得意なのは戦うこと、殺すこと…ううん、私これしかできないよ。でも、戦う自分、殺す自分、そんなに好きじゃない。肉を裂き、骨を断ち、絶叫を耳元で聞き、鮮血を浴び…戦場は変な安堵感がある、戦場行くと帰ってきたと思う。でも、好きじゃない…と思う。
あそこには行きたくない、あそこに行くと私は、私でなくなる。私はあれが心地いいとも思う私になる。それは嫌。
そう私は戦う以外の私になりたい。私以外の私になるのは怖い、殺すことを厭わない私が嫌い。私は私が恐い。だからもう――
――でも私は戦わない自分になれるのかな?
戦わないで何をする?
何を?
そのためにはどうすれば…?
「……学校、行ってみますか?それも遠くへ――そして多くの人と出会いなさい」
最後に先生がそう言ってくれた。
だから私は行くことにしたんだ。
学校へ、先生が生まれた街に。
……学園都市「アステラルテ」へ。
2010/10/12 加筆修正版に差し替え。