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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

竹内緋色 短編シリーズ

robelti

作者: 竹内緋色

Robelti


 僕、三枝水希には気になる女の子がいた。

 そんな女の子が、今、僕の部屋にいる。


「どのフィギュアをもらっていいのかしら。」

 そう言われて、目が覚めたように僕は正気に戻る。そうだ。今、僕の部屋に白戸樟葉が来ているんだった。

「ええっと・・・」

 僕はまだ夢心地で言いよどむ。

「どれでもいいんじゃない?」

「なら、部屋にあるいろんなものをほじくり返そう。」

 だって、僕の部屋には白戸樟葉以外に二人の妹がいるんだもの。

「おい、ほじくり返すな。そういうのもをほじくり返すと碌なものが出てこない。」

 エロ本とか、昔書いた小説とか、マンガとか、エロ本とか。

 妹二人で開拓しているタンスの中には僕の古い衣服しか残っていない。だから、安心だ。

 そこで、おざなりになってしまっている白戸に気がついて、僕は声をかける。

「どれでもいいよ。ほとんどが拾い物だし。でも、『けいおん!』のフィギュアには触らないでくれ。」

 僕の部屋にはけいおんの唯ちゃんとそのほか、ラブライブのおざなりなアミューズメント品が並んでいた。

「そうなの。」

 部屋に来たいと言った割りに、白戸は興味がなさそうだった。むしろ、部屋にあふれているぬいぐるみに興味があるようだった。

 白いふかふかの、なんのキャラクターでもないぬいぐるみを抱いて、彼女は僕のベッドに腰かける。

 目の前に、黒いタイツに包まれた足が組まれている。

 思わず飛び込みたくなるのを我慢する。なにせ、妹がいる。

「それなら、押し入れの中にいっぱいあるよ!」

「よし、やっちゃおう!」

 妹たちは新たなターゲットを見つけて、物色にかかる。別に僕を貶めようとしているわけではないのはよく分かっていた。やることがなくて、とてつもなく暇なのだろう。

「少し、買い物に行きたいんだけど。」

 白戸は眼鏡越しに、僕に柔らかな視線を投げかけている。

「じゃがいもと、ニンジンと玉ねぎ・・・今日はカレーでどうかしら。」

 僕は白戸の言った言葉の意味を探る。そこに意味なんてないはずだ。退屈過ぎて今すぐ帰りたいのかもしれない。少なくとも、家でカレーを作りたいとか、そう言う意味ではないと思う。

「さあ、買い物に行きましょう。」

 誘われた僕たちは買い物に行くことにした。

 耳のいい妹たちは、犬のように白戸の言葉を聞きとり、ついて行く意を示した。


「博物館で作りましょう?」

 買い物袋を下げた白戸がおかしなことを言う。そして、おかしなことに、僕は、博物館にいた。博物館は空いていないみたいで、薄暗い。それに、博物館みたいな風貌であるけれど、何一つとして展示品が並んでいなかった。

「おい、白戸。これは――」

 振り向いた僕は、後ろに白戸の姿がないことに気付く。

 そして、同時に鳴り響いた、不快な音とともに現れたのは――

 宙に浮き、虫のような風貌をした機械の両手には、嫌な、けたたましい音を立てる丸のこぎりが回転している。その傍らには、まるで白戸そのもののようにくすりと笑って見せるマネキンのようなロボット。

「兄ちゃん・・・」

「逃げるぞ。」

 僕は妹二人とともに逃げる。構造も分からない、博物館。薄暗くて足元に何があるのかさえ分からない。

 僕らは鳴り響くけたたましい音から逃れるようにぐるりと博物館を、道に沿って逃げた。

 そして、現れたのは分かれ道。どちらに行こうかと迷っている暇なんて少しもなかった。なにせ、奇妙な機械二体は僕らの後ろからじゃなく、二つの分かれ道の一方から迫ってきたからだ。

「こっちだ。」

 僕は機械が迫ってきていない方の道を行く。

 でも、最悪だった。

 別に行き止まりなんかじゃない。

 長女がこけたのだ。

「大丈夫か!」

 僕は声をかけた。

 でも、少しも大丈夫じゃない。

 長女は機械の丸のこぎりの餌食となった。

 上がる悲鳴と、舞い散る血飛沫。

 僕は、ただ、朽ちていく長女を見ているほかなかった。

「あら。ありゃりゃりゃりゃぎくん。大変なことになったね。」

 僕の前に現れたのは、アロハシャツの男だった。

「すいません。かみまみた。」

「わざとじゃない!」

 そういうことではなかった。これではまるで化物語じゃないか。

 つまりはそういうことか。

「この怪異の原因は君だよ。」

 男は僕に言う。だったら――

 白戸の偽物が僕の胴を、腕で貫いた。

「君たちはどうしようもなく偽物だ。」

 僕は次女に向けて言う。

 だが、アロハシャツの男は意味の分からない言葉を吐いた。

「そうだね。今回ばかりは、お嬢ちゃんたちが偽物というわけじゃない。偽物は君の方だ。」

 僕が偽物?よく分からない。

「何を言ってるんだ。」

「もうじき分かってくる。そら、君の中に彼らの記憶が流れてくる。」

 僕の頭の中に何かが入ってきて、僕を塗り替える。

 それは意味の分からない写真の断片のような記憶。

 捨てられた子犬を拾った少年。でも、それ子を捨てなければならなくなった。親に反対されたのだ。少年は子犬を捨てた。子犬は少年を恨みながら死んだ。どうして希望なんか見せたのだと。

「それがこの不可解な現象の正体だ。捨てられたものを拾った者が恨まれるというお門違いな現象。君にも覚えくらいあるだろう。」

「待って。作者が悪いんじゃないのか?作者はアニメの化物語しか見ていないんだ。偽物語を見ていないから、だから――」

「君が偽物だって言っただろう。君こそが、この怪異そのものなんだ。」

 白戸は僕の体から腕を引っこ抜く。僕の体から大量の血が噴き出す。

 そして、僕の意識は深く沈んでいった。


 僕は目を覚ます。自分に外傷がないことに気がついて、嫌な夢だったんだと胸をなでおろした。

 夢オチなんて最悪だけど、この時だけは、天に救われた気持ちだった。

 身支度を済ませようと、僕は洗面所に向かう。

 その時、僕は鏡を見た。

 僕を見つめているのは、マネキンのような機械人形だった。


「結局、あれはなんだったのかな。」

 姉の死骸など目もくれず、妹は男に聞いた。

「あれは悪霊(ロベルティ)だよ。物を捨てた人を恨んだ物。それは結構古典的な幽霊話だけど、今回はさらに続きのある都市伝説さ。物を捨てた人を恨んだ物がまた拾って捨てた、あまり罪のない人を恨んで殺すっていうね。」


 という、作者の不思議な夢でした!


 夢について

 夢に見た光景を小説にするのはこれで二度目で、一度目は大分脚色を入れて長期化してしまいましたが、今回は夢をそのまま仕上げました。薄れゆく夢の記憶をなんとかつなぎとめるよう頑張りましたが、夢であることを悟られないように違和感なくつなげるのはとても難しい事だと思いました。

 今朝も嫌な夢を見て、世の中には夢を全く見ない人もいるらしいので、ちょっとうらやましく思います。ある意味天啓かもしれませんが、夢が何を言いたいのかわかりません。

 では、またどこかで。しーゆー。

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