パン屋さんの2人
つぼみが色とりどりの花を咲かそうとしている春。
朝日が差しこむレンガ造りの市場に、活気が出てきた。ある者は、野菜を売りに店先へ。ある者は、パンを求め匂いにつられて玄関を飛び出した。
「ふわぁぁ〜。んんっ!はぁ〜。よく寝たぁ〜」
女の子が目を覚ましたのは、木の柱が剥き出しのとてもとても質素な作りの部屋だった。
ベットのマットはお世辞でも柔らかそうとは、言えない継ぎ接ぎだらけのものだった。
赤茶色をした少し癖のある髪をとかし、鏡越しに自分を見つめる緑の瞳をじっと覗き込んだ。
1人で起きて、1人でご飯を食べ、1人で家をでた。
外に出ると目の前広がっていたのは、膝よりも高い植物がない地平線が綺麗に見える平坦な草原。
そんな草原を小走りに横切っていった女の子。ふと、振り返るとさっき出てきた小さな家以外、1本のとても大きな大木が立っているだけの物悲しい風景が広がっていた。
でも。彼女には、朝日に照らされキラキラと輝いている様に見えていた。
「よしっ!今日も頑張りますかぁ」
自分自身をもう一度奮い立たせ、家とは反対方向に元気よく歩いていった。
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「いらっしゃい!朝のご飯にうちのパンはいかがぁ?」
小さな身体で、必死に声を出している男の子。少しでも多く客を呼び寄せようと頑張っている。そんな効果もあったのか1人、2人、と客が集まってきた。
「毎度あり!これからもうちのパンをよろしくねぇ!」
爽やかな笑顔でパンを売っていく。お得意さんがくると、
「今日もありがとうね!とっておきのパンを用意したよ!」
何処からそこまでの活力がでてくるのだろうか。薄汚れたTシャツにサスペンダーがついている黒い短パン。そこから伸びているのは小枝の様な細い手足。裕福とは言えない暮らしをしていそうだ。
だが、金髪の髪はツヤツヤと輝き鳶色の眼は好奇心に満たされていた。
朝の売り込みが、ひと段落ついたら男の子は一度家へ帰っていった。
男の子の家は、住宅が密集している迷路の様なところの端の端。細い煙突がついている石造りの小さな借り住まいだった。
家に入るとまず最初に向かったのは寝室。ベットの横に立てかけてある写真立てを手にとり、
「母さん今日も頑張ります。明日も輝けますように・・・」
と、そっと語りかけた。
写真立ての中で微笑んでいるのは、赤茶色をした髪に深い緑色をした目をもったとても美しい女性だった。




