再開
「寝過ぎた……」
夕日で、赤く染める教室。グランドでは、野球部やサッカー部のかけ声が響いている。教室を後にして階段を降りると吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。この学校は、青春に溢れている。僕は青春をこう考える。
部活動で仲間と汗を流しながら、練習し、大会の優勝をめざし、そして負けて仲間と励ましあう。また、好きなな人ができて、その子と連絡手段を手に入れ、返信くるたび一喜一憂し、友人に洋服やデートコース相談し、告白して、振られて、別れて、また友人に励ましてもらう。
俺にはとうてい無理だ。
部活動には……入れないし……好きな子もいない、ましてや友人なんてもってのほかいない。
俺は、今どんな顔しているだろうか、悔しい顔? 悲しい顔? 怒っている顔? たしかめるすべはない。
昇降口につき上履きから靴に履き替える。ここまでくれば青春の音たちの金属バットの音も、楽器達の声も聞こえない。
でも体育館から響く、ホイッスルの音、バスケットシューズのスキール音
ドリブルしている音、シュートあとのリングに当たる音、何もかもが耳に入ってくる。
この音は、聞きたくない。だから昇降口から校門でて近くの公園まで帰りは、走って帰るのが日課だ。
だがいつも2秒ぐらいで履ける靴が今日に限って履けない。
青春活動の音が邪魔してるわけではない、要因はわかっている、顔を合わせたくないだだ。これが犯罪者が、あたふたするやつか。
「ね、ねーえ、ねーってば!」
「聞いてるの? 鵜沢くんー周ちゃんー」
これはあきらめるしかなそうだな。くつ履けたし、このままダッシュでもいいんだけど、明日、教室まで来そうだしな。渋々答える。
「久しぶりだな、あやか。3年ぶりだな。あと俺の名前は周ちゃんじゃない。鵜沢周平だ」
「久しぶり? じゃないわよ!すぐに応えなさいよ。名前ぐらいしってるわ幼なじみなんだから! 」
「悪いな。耳悪いんだよ俺。森あやかさん」
「フルネームで呼ばないで! いつもみたいにあやかでいいわよ。今から帰りなの?あんた部活してないの?」
だから顔合わせたくなかっただよ。聞かれると思って。
「やめたんだよ……バスケ。いい大学行きたいし、ホワイトな企業に就職したいな」
「あんたがバスケやめたの……? いい大学?」
「そうだよ。じゃあ帰るから、また明日」
入学からはや10日、初めて景色をみながら校門を潜る。
振り返ると、散り欠けの桜と悲しそうな幼なじみのあやか。
何か決心したのか俺の方へ走ってくる。
目の前までくると思ったが、途中で止まって叫び始めた。
「バスケやめたなんて嘘つくな!! バスケ大好きなくせに! それに昔私があげたバスケットボールのキーホルダーまだつけてるくせに!!」
キーホルダー?
それは、バスケが好きだからつけてるわけじゃないんだよ……
バスケあきらめた。これは本気だ。いや本気もくそもない。物理的に無理なんだから。
これをつけている理由は、初恋の幼なじみに貰った、大事なものなんだから。