表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

再開

「寝過ぎた……」 

 夕日で、赤く染める教室。グランドでは、野球部やサッカー部のかけ声が響いている。教室を後にして階段を降りると吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。この学校は、青春に溢れている。僕は青春をこう考える。

 部活動で仲間と汗を流しながら、練習し、大会の優勝をめざし、そして負けて仲間と励ましあう。また、好きなな人ができて、その子と連絡手段を手に入れ、返信くるたび一喜一憂し、友人に洋服やデートコース相談し、告白して、振られて、別れて、また友人に励ましてもらう。

 俺にはとうてい無理だ。

部活動には……入れないし……好きな子もいない、ましてや友人なんてもってのほかいない。 

 俺は、今どんな顔しているだろうか、悔しい顔? 悲しい顔? 怒っている顔? たしかめるすべはない。

 昇降口につき上履きから靴に履き替える。ここまでくれば青春の音たちの金属バットの音も、楽器達の声も聞こえない。

でも体育館から響く、ホイッスルの音、バスケットシューズのスキール音

ドリブルしている音、シュートあとのリングに当たる音、何もかもが耳に入ってくる。

 この音は、聞きたくない。だから昇降口から校門でて近くの公園まで帰りは、走って帰るのが日課だ。

 だがいつも2秒ぐらいで履ける靴が今日に限って履けない。

 青春活動の音が邪魔してるわけではない、要因はわかっている、顔を合わせたくないだだ。これが犯罪者が、あたふたするやつか。

「ね、ねーえ、ねーってば!」

「聞いてるの? 鵜沢くんー周ちゃんー」

これはあきらめるしかなそうだな。くつ履けたし、このままダッシュでもいいんだけど、明日、教室まで来そうだしな。渋々答える。

「久しぶりだな、あやか。3年ぶりだな。あと俺の名前は周ちゃんじゃない。鵜沢周平だ」

「久しぶり? じゃないわよ!すぐに応えなさいよ。名前ぐらいしってるわ幼なじみなんだから! 」

「悪いな。耳悪いんだよ俺。森あやかさん」

「フルネームで呼ばないで! いつもみたいにあやかでいいわよ。今から帰りなの?あんた部活してないの?」

 だから顔合わせたくなかっただよ。聞かれると思って。

「やめたんだよ……バスケ。いい大学行きたいし、ホワイトな企業に就職したいな」

「あんたがバスケやめたの……? いい大学?」

「そうだよ。じゃあ帰るから、また明日」

入学からはや10日、初めて景色をみながら校門を潜る。

振り返ると、散り欠けの桜と悲しそうな幼なじみのあやか。

何か決心したのか俺の方へ走ってくる。

目の前までくると思ったが、途中で止まって叫び始めた。

「バスケやめたなんて嘘つくな!! バスケ大好きなくせに! それに昔私があげたバスケットボールのキーホルダーまだつけてるくせに!!」

 キーホルダー?

それは、バスケが好きだからつけてるわけじゃないんだよ……

バスケあきらめた。これは本気だ。いや本気もくそもない。物理的に無理なんだから。

これをつけている理由は、初恋の幼なじみに貰った、大事なものなんだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ