みずいろあくまと私
代々女子が意味解らん存在に目をつけられる家系に生まれ落ちた私が、例に漏れず日々絡まれ続けて十七年。
「全くもってついてない!通学路で通り魔だって!!国家権力は一体何をしているのだろうか、早く、早く犯人を捕まえないから」
怨みを持ちながら死んでいった被害者達が、私にとり憑いて復讐しようと狙ってくるじゃあないか!
更に騒ぎを聞きつけた妖怪やら妖精やらまでちょっかい出してくるし、誰だいま足掛けしてきたヤツ!!
全力で走る私を遠巻きに見つめる近隣住民の皆さま。ご近所でも私の家は有名だ。もちろん悪い意味で。
「蓮野家は女しか生まれない」
「婿を貰っても長女が生まれると程なくして死ぬ」
「蓮野の子はいきなり叫んだり暴れたり狂ってる」
等々。確かに家は女しか生まれない、父も祖父も既に亡くなっている。奇行に関しては霊やらにとり憑かれたり、ソイツらから逃げるためにやむなくである。
「くっそー!どうして私がこんな目に!!」
人の気持ちも知らずに周りの人間はひそひそひそひそ喧しいったらありゃしない。
母や祖母に愚痴を言っても「早く運命の人を見つけられないのが悪い」の一点張りで……。
「何が運命の人だ!自分の人生なのに何故他人に頼らなければならない!!」
毎日毎日毎朝毎朝こんなことの繰り返し。
いい加減腹も立ってくる。
どうして私ばかり。
何もしてないのに。
後ろ指指されて。
「良いコト教えてあげるよ」
「え―――――」
そう言って私の腕を引いたのは水色の瞳をした。
「あく………ま?」
※※※※※※
「よく俺が悪魔だって解ったね?」
いやだって角とか尻尾生えてるし。耳尖ってるし翼もあるし。なんかシルエットが禍々しいし。
「人を見た目で判断しちゃいけませんって言われなかった?」
「知るかアホそれより降ろしてよ。何故に銭湯の煙突の上に置いたし」
「逃げられないように?………それよりさ、良いコト教えてあげるよ」
「断る」
「どうしてさ。毎日を嘆いてたでしょ?理不尽な扱いに憤りを感じて何も知らない周りに殺意だって抱えてた」
「勝手に心を読むな悪魔め。それに、貴様らの手口だって私が知らないとでも?」
数多く存在する意味解らん存在のなかでも一番厄介で悪質なのがこの悪魔たち。人の弱味につけこんでロクでもないことばかりやらかす。
大抵の人間は「魔がさして」なんていうけれど、原因はコイツら。私なんかは直接こうして会話もできるから、余計つけ込まれやすいんだ。
「別にキミをどうこうするつもりなんて更々ないさ」
「嘘吐きめ」
「悪魔だからね。ただ、ただ俺は―――人間界を魔界にしたいだけだよ」
「……はぁ?」
「そもそもどうして霊やら妖怪妖精、悪魔たちがキミたちのような存在を狙うのか解る?」
「そりゃあ……憑きやすいとか、認識してもらえるからじゃ」
「その通り。ならさ、「憑く必要がなかったり、他の人にも認識出来るようになったら」どうなると思う?」
「いちいちとり憑かなくても良い……?」
でもそんなことって。
「魔界っていうのは人間界の一つ上のステージなんだよ。人間界に存在する者には魔界の存在を感知出来ないけど、魔界の者たちは低いステージのキミたちを感知できるわけ。で、たまに人間界のなかでも特殊な存在がいて」
「それが、私のような人たちってことか」
「そう」
「で?それがどうして人間界を魔界にしたいことに繋がるんだ」
「解らない?人間界と魔界を同一のものにしてしまえば、キミたちみたいな人に憑かなくても自由に動けるようになるわけ」
「!!!」
それはつまり。
私にとり憑く必要が、狙う理由がなくなるっていうこと…?
「解ってもらえたかな?――人間界と魔界が同一になれば、それまでキミを馬鹿にしてた連中もその愚かさに気がつくんだ。それに、キミと違って俺たちに慣れていない。きっと多くの人々が被害にあう、キミが今まで負った不幸以上のものに苛まれるんだ」
本当に?
「本当だよ。俺は嘘吐きだけどキミを傷付ける嘘だけは絶対に吐かない」
「…………悪魔」
「だから俺と一緒に」
「騙されると思ったか愚か者め!!」
「!?」
「しかしながらそうか、普通の人間にも貴様たちを認識出来るようになればこのクソッタレな生活が少しは改善される可能性はあるかもしれない」
「だ、だったら」
「貴様と手を組むとなると話は別だ。だって悪魔だぞ、手を組んだら最終的に私が破滅しそうだ」
「偏見だ……」
「何とでも言え。だがこの可能性を示してくれたことには礼を言うぞ」
流石は悪魔、普通とは発想が異なるお蔭で素晴らしい可能性を見いだすことが出来た。他人の不幸?そんなもの知るか、今まで散々な態度をとってきた奴らのことを何故気にしてやらなければならん。
「私はやるぞ!この世界を魔界とし、生きとし生けるもの全てを恐怖と混乱の渦に叩き落としてやる!!」
こうして私の人間界魔界化計画は青空の下、銭湯の煙突の上で開始となったのである。




