勤労感謝の日
高校2年の井野嶽幌は、同級生の宮司宮司から頼まれて、庭の土が出ているところで、ご飯を藁で炊いていた。
「今日は新嘗祭だからか」
「そうだからさ」
「新嘗祭?」
庭の様子を見に来た幌の双子の姉の桜が、聞き慣れない単語を繰り返した。
「飛鳥時代に始まったっていわれている、宮中祭祀の一つだね」
宮司が説明を始める。
「五穀の新物を天神地祇に感謝するっていう祭祀なんだ。簡単に言えば、全ての神々に、穀物の収穫に感謝するっていうお祭りだね」
「へぇ」
宮司の説明に、桜は短く答えた。
「それで、これを使うんだと」
新米で炊かれた米を指さしながら、幌が言った。
それは、とてもおいしそうに炊きあがりつつあった。