表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破魔の力  作者: 天解 靖
7/20

第07話(夢の始まり―蒼の覚醒―)

清水にとってちょっとした救いだったが彼女の未来をこれ以上見たいとは思わなかった。

他の出会いと同じで清水はまた一人になった。なりたかったというのが正確な表現だった。

しばらくして、学校から「教会に行こう」というチラシが配られた。

実はこのチラシ、毎年もらっていたのだがなぜか今年は清水の目に止まり興味がわいた。

何か変わるかと思い、教会に行ってみたが清水に奇跡は起きなかった。


「宝くじ買って小遣い稼ごうかな」


清水は帰り道、当たりをひいては次の売り場へ、次の売り場へと彷徨っていた。


「これの何が楽しいんだろう、全部並べてもらったけど四等までだったし」


次の売り場でもそうだった。


「あなたよく当たるわね、スピリチュアル系?」


眼帯をした売り子が言った。


「いや、今日は神社でおみくじひいて大吉でたから、

 宝くじ買ってみようかなって」


「そう、次のあなたは……大丈夫、信じて」


清水は横断歩道で信号が変わるのを待っていた。


「なんじゃ? あのへんてこ」


振り返るとまだ売り子は笑いながら清水をじっと見ていた。


「十二秒後に信号が切り替わるけど信号無視の車が横切る。

 子供が引かれそうになるけど大丈夫。ケガはない。

 子供って大人が思ってるより視野狭いし、親どこいんの?

 ダメじゃん」


清水は、なぜか今日は自分を疑った。


(ホントにそうなのかな?

 私も外すことあるし、見てるだけで良いの?

 人の命かかってるよ……やるの?

 助けるの? 次もやるの? その次も? 毎度やるの?

 変な人じゃんか。

 でも!)


とっさに足がでた。


「おっとっとって」


鞄から筆記用具やノートが、スマホまで横断歩道に散らばった。


「あらっ……」


清水は凝縮された時間の中で思った。


(やばっ、でも立ち止まってくれた。

 この子の未来はオッケーだ。

 あぢゃー私の人生、おわた。

 あの車やっば私のとこに来た……だよね的中率、九十九パーだもん。

 もしこれが間違いで、あの車止まってくれたら何しようかな?

 絶対、今までとは違うことやろう。

 まずお金稼いで……いや、そんなことじゃない

 もっとほらパッションってやつ?

 ヒリヒリするような命を賭すって感じの。

 でもなんでさぁ)


清水は叫んだ。


「なんで私には何もないのよ!」


車は清水を乗り越えて行ったようだった。

気づけば岩城に抱っこされていた。

さっきの売り子は驚きもせず、まだ笑っていた。


「へっ?」


「おっ、青野さんの言う通りクロノグラスだ……」


「遂にキタっ、イケメン、胸キュン、お姫様抱っこ

 イケメンはいい匂いって相場が決まってますな」


清水は岩城に気を失ったふりをした。

岩城は霊脈を使って清水を教会に運んだ。

目を開けると岩城がいた。


「譲さん、私は清水 蒼です。

 結論から言います。

 未来が見えます。役に立ってます。

 譲さん大好きです」


「清水さん、あなたとちゃんと会話できる人が

 すぐ来るから……もう少し、横になっていよう」


別の霊脈からジャンプしてきた青野が遅れて到着した。


「蒼ちゃーん、お疲レンコン。はい! これ落とし物」


(更にキタっ、ここはイケメンの巣窟か!)


「あの……」


「私の未来が見えんってことでしょ?

 だって私輝きすぎてるからね。

 次のお前は『いかん、譲さんの方がいいわ』って思っちゃうでしょ?

 その通り……だけど君は私のことを師匠って呼ぶよ。

 さっそく君の霊力の流れを整えよう、少し息止めてくれる?

 紹介遅れたけど、私は青野。

 よろしくねー」


そういって青野は清水の額と胸骨に手を添えた。

清水は岩城をチラッと見て目を閉じた。

青野はラテン語で清水を祝福した。


「手を置いてくだされば、救われて生きるでしょう。

 衣に触れさせていた……ちょっと待って、君のお父さんって仏教徒?」


「ガチバリの真言宗ですけど」


「ああそう、ならもう一度ね。

 最高の真理であり、偉大な呪文であり、比べるもののない真言である。

 これはあらゆる苦しみを取り除く偽りのない真実である。

 だから私はこの真言を説くのだ。

 行けるものよ、行けるものよ、彼岸にまったく行けるものよ、幸あれ」


青野は般若心経の最後のフレーズをつぶやいた。

と同時に清水の胸から鋭いトゲのようなものが幾本も伸びてきて、青野の手を貫いた。

青野は少し顔を歪めながらも、優しく清水に言い聞かせた。


「蒼ちゃん、ちょっと痛痒いの続くけど我慢してね。

 昔の嫌な記憶が心に刺さりまくってる。

 一本ずつ取らないといけないからね」


文字通り一本ずつ丁寧に青野はそれを抜いて行った。

青野が最後の一本を抜いた時、清水は起き上がった。


「何も変わってないけど……」


「うん、でも君泣いてるよ。

 まあ、ある意味で……おかえり」


青野は笑顔を清水に向けた。


「師匠、辛かったよ、寂しかったよ、誰にもわかってもらえなかった」


清水は青野を抱きしめた。


「そうか、そうか、んって君、女の子?

 ここは女子禁止なんだけど」


「えっ? ここはひとつ感動シーンの尺は長めって設定なんじゃ、ぐすん」


岩城は頭を抱えた。


「青野さんさー、なーんで先に性別判断しないのよ。

 清水さん、クロノグラス……っていうか、僕らの未来はどう見える?」


清水はそう言われ右目を手でおおい、意識を集中した。


「ええっと……すっごい、前よりぜんぜん見える!

 荒っぽい人にキスしてゲロって悪い奴ら倒してる。

 霊脈って何? 師匠がヨハンで私もヨハンってどういうこと?

 うわっ、なんか目まいしてきた」

「この眼帯使いなよ、楽になるよ」


そう言って青野は自分の眼帯を清水に渡した。


「なら、協会には正直に話そう。

 ここまで先を見れるヨハンは貴重な戦力だ。

 まずはその若者言葉を直すところからだな。

 そしてお父さんとお母さんには丁寧に説明して行こう」


岩城と清水は「常識」ある両親を説得するのに半年以上かかったという。


清水は眼帯を触った。

これから見る未来は、もう一人で背負わなくていい。そう思えることが、少しだけ嬉しかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ