第05話(野性の証明2―兄弟の力―)
剛田は音楽関係で働いていた友人と一緒にアルバイト。
そのバイト先のコンサート会場でたまたま居合わせたステージ映えする背の高いイケメン。
ただそれだけの理由で、剛田はヘビメタバンドの前座を務めることになった。
「ボーカルがバックレで翔君さぁ、頼む。
シャウトし続けてくれればバッチのグーよ。
これバイト代とお駄賃ね。
お客さん待たせてるからド派手にイッちゃって♪」
剛田は時給換算で五万円近いお金を握らされ思った。
「芸能界、おいしいとこだな……バッチのグーって、
拳突き上げながら大声出せばいいんだな!」
剛田は自己紹介したつもりが観客にはこう聞こえたようだ。
「Show Not Death ! You are Rock-Killer !!(翔なんですヨロシク)」
規格外のパフォーマンスに観客はスマホを向けSNSへアップした。
その動画は演奏中に跳躍絶叫男としてすぐさまバズった。
「俺の流儀じゃねぇ」
剛田は売り物として作ることを一切しなかった、しなかったが案件が次々と舞い込んできた。しかし、芸能界は素で生き残れるほど甘くはなくしぼんでいった。
「翔、蒼が言ってたがお前は役を作ろうとしないのではなく
既にお前の中に役が宿っているらしい。
恥ずかしくて世にさらしたくないだけなのだと。
翔、挑戦し続けて欲しい」
後日、剛田は岩城と一緒にオーディション会場にいた。
「えー、ドラマ『君砂』の一次選考会にお越しいただき、
ありがとうございます。事前に説明あったかと思います。
それでは一分間、はじめ!」
剛田は虚ろだった、思い出していた。
(こいつは何かに憑りつかれてる。
あの子と一緒に遊んじゃダメ。
翔すごい!ケガが治ったよ。
どうして死んじゃったの?)
しばらくたって剛田はセリフにはない言葉をつぶやき涙を流し始めた。
「俺には救いがない」
普段は成人のオーディションに付き添いは入れないのだが岩城は両手をついたまま泣き止まない剛田を見た。
「兄さん、助けて!」
「翔、僕を見るんだ!」
他の審査員の幾人かは見とれていた。
「もう、この二人で良いんじゃね?」




