第02話(インパクト・ゼロ―大戦末期の断末魔―)
衝撃とともに二人は水面に叩きつけられた。
静かな川音と冷たい感触。
霊脈本堂近くの五十鈴川だった。
ヨハンはゆっくりと立ち上がり岸辺までペテロを運んだ。
ペテロの拘束具を解いたヨハンは黙っていた。
静かだった。
先ほどの戦場が嘘だったみたいに。
ペテロは何か言おうとして、やめた。
二人は視線をあわせようとはしなかった。
ヨハンは唇を嚙みしめ、ペテロは拳を強く握っていた。
今日の五十鈴川は穏やかで静かな、二人だけの夜だった。
ヨハンが口を開いた。
「兄さん……世界は救われたよ」
ペテロはすぐにはこたえなかった。
「だろうな……お前はいつも、
僕らより一歩先を見ているから。
だから一番最初に、一番辛い選択を迫られるんだ」
ヨハンはうつむいたままだった。
「これからはお前がガーズを率いてゆけばいい。
僕は後任に引き継ぐよ」
「兄さん……私も引き継ぐよ」
「僕は黒川 修。
初めまして、だね」
黒川の背中は少し寂しそうだった。
ヨハンは黒川を見て微笑んだ。
「私は青野 真。
占いが得意なんだ。
悩みがあったら相談にのるよ」
「青野君」
青野は少しだけ黒川の方に身を寄せた。
「うん」
「最近ね、とても親しい人を亡くしたんだ。
最後を看取ってあげたかった」
「命に代えてでも」
青野は息を詰めた。
「でもその人は君に生きてほしかったんじゃないかな」
黒川は震える気持ちを抑えられずにいた。
握っていた拳を更に握りしめた。
「間違いじゃなかったはずなんだ。
全員で逃げられたはずだった」
「ごめん黒川君、壊れてしまいそうな君が怖い」
「青野君、僕は大丈夫だから」
「ごめんね、黒川君……ごめんないさい、本当に」
「青野君、こうなる結末だったんでしょ?
誰のせいでもないよ……ちょっと休ませてくれないかな?
本当に大丈夫だからさ」
「わかった、もう行くよ。それじゃあ、また会おう」
「ううん……サヨナラだ」
「だよね、そうだよね。黒川君、さようなら」
黒川は河原に仰向けになり、夜空を見上げた。
星々がゆっくりと歩み、川音が心の底をさらっていく。
「さようなら愛しい弟たち」




