第13話(彼らの日常―頼りがいのある奴ら―)
それから幾年か経って、剛田は指導する側になっていた。
「えーっ、今から岩城さんからのご命令で皆さんというおめーらを指導することになった剛田です。
じゃあ、手始めに三人まとめてかかってこいや!」
剛田はやはり剛田で、相変わらずだった。
しばらく経って、二本の足で立っていたのはやはり剛田だけだった。
「ジジイになってもおめーら俺に敵わないってことで、ハイ終了」
「剛田さん、シンプルに剛田さんのストレス発散の場になってますけど」
「そうだな、そうかもな。そういえば蒼の奴が言ってたな。いつか、俺を封じなければならない時が来るって。それやるか?」
「あ、はい」
後任の黒田、朝霧、赤羽は困惑した表情で顔を見合わせた。
――後日、剛田は自分の霊力をストックできる霊玉を何個か彼らに手渡し、自分が不在でも練習できるようにした。
「入力量ごと二つずつ用意した。割るなよ、ここら辺一帯が消し飛ぶぞ」
三人は霊玉を手に取りながら、黒田は不思議に思っていた。
(霊玉に霊力を入力する際、
一気に入力すればそれなりの霊振が起こるはずだ。
しかも、なぜこれほど多くの霊玉をこの短期間で準備できたのか。
剛田さんだからっていう理由で片付けられない部分がある。)
「剛田さん、これどこで」
同じことを考えていた朝霧が口を開きかけた。
「聞くな、お前の場合は『見るな』だったな。
本当に手に負えなくなった時におめーらが俺を止められるようになる日まで、俺はちゃんと俺でいてやるよ」
剛田は珍しく真剣な表情で言った。
「黒田はコマンド、赤羽はパワー、朝霧はバランス役だ。
今からやる技は三位一体。
多分、朝霧が始めに落ちるから赤羽、お前は二役できるようになっとけ。
じゃあ、二割の剛田……いきまーす」
そう言って剛田は霊力を解放した。
途端に空気が一変した。
「うわっ」
三人は思わず後ずさった。剛田から放たれる霊力の圧が、まるで重力が数倍になったかのように三人に圧し掛かる。これが二割、信じられなかった。
「ほら、ボサッとすんな。言われた通りにやれ」
黒田が真っ先に動いた。
「陣形展開」
三人は剛田を中心に三角形の頂点に位置取る。それぞれが霊力を解放し、互いを結ぶ線が淡く光り始めた。
「霊力反転、シンクロナイズ」
三人の霊力が同調し、剛田の霊力に対して逆位相の波動を形成する。剛田を包み込むように、三角形の結界が展開された。
「いいぞ、そのままキープだ。
今回、タメはいらないから黒田、とっととコマンドしろ」
剛田は動じる様子もなく、結界の内側で腕を組んでいた。
黒田は叫んだ。
「汝、我が秩序に静まれ」
霊力で描かれた三角形が折りたたまれ、正三角錐へと変化する。
「おっ、形になってんじゃん。
じゃあそこから一分キープしてみよう」
剛田に言われた三人だったが維持するだけで精一杯だった。
「ごめんねみんな、これから撮影なんだ。
ハイ、今日はここまで」
剛田は霊力を収め、何事もなかったかのように立っていた。
「まあ、初日にしちゃ上出来だ。じゃあこれを毎日がんばれよ」
「明日も……ですか」朝霧が呻くように言った。
「当たり前だろ。俺を封じるってのはそういうことだ」
剛田は背を向けて歩き出した。
「八割剛田の霊玉、
それを止められるようになったら俺で実際試してみよう。
売れっ子は忙しいんだよ、じゃな!」
三人は荒い息を吐きながら倒れ伏していた。




