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ラングドック平原

クロマ「この果実、すっごく良い色で甘そう。1つ貰ってもいいですか?」


店主「クロちゃんはお目が高いわね、1つ5セントよ」


クロマ「そんな安くでいいんですか!?」


店主「今は雨が多いからよく採れるのよ」


クロマ「なるほど…ありがとうございます!」


私は頼まれていた買い出しを終え帰路に着く。


街の中心部で店が立ち並ぶ市場。今日も活気が満ち溢れ、立ち寄る人々の笑顔が飛び交う微笑ましい風景。私はそんなミリディアが好きだ。


クロマ「ただいま戻りました」


師匠「おかえり、どうじゃ?しっかり買えたかい?」


クロマ「子供扱いしないでください、買い出しくらいできますよ」


師匠「はっはっはっ、悪いのう少し心配だったのじゃよ」


王都ミリディアの外壁沿いにある木造の家屋。周りの建物の多くがレンガ造りのため少しばかり目立つが、私と師匠が2人で住むには十分の広さで不便に感じたことは無い。

私は家に入り、買ってきた紙袋の中身を机に広げ師匠に確認してもらう。


師匠「リースの薬草、魔法瓶、メルの実。バッチリじゃな!」


クロマ「ほぼ毎日買いに行かされてますから、さすがに覚えれますよ…」


師匠「それもそうじゃな……そろそろ頃合いかもしれんの」


クロマ「何か言いましたか?」


私は買ってきたものを棚に起きながら小さい声でつぶやく師匠に聞き返す。


師匠「クロも18になり人と問題なく話せるようになってそうだし、独り立ちさせても良い頃合いかなと思ってのぉ」


クロマ「本当ですか!?」


師匠「ワシが教えられることはもうないし、日常生活も1人でこなせそうと判断する」


クロマ「嬉しいです!ありがとうございます!」


童心に戻ったかのように飛んで喜ぶ。


師匠「そこでだな、どこで魔導師をするかが問題じゃ」


クロマ「あっ…そうですね…」


魔術師の多くは街で他のものに魔術を教える、先生のような職業である魔導師になることが常識である。


師匠「ミリディアには既にいるから、魔導師をするなら別の街ですることになる。一応ツテはあるん…」


クロマ「私!実は前々から考えてたことがあって…」


師匠は驚きながらも真剣な顔で次の言葉を待つ。


クロマ「魔導師をするんじゃなくて、旅に出たいんです」


師匠「……そうか」


クロマ「…ダメですか?」


師匠「う~む、旅をする目的を先に聞いておこう」


クロマ「魔界に、行きたいです」


額から汗が滴り落ちるほどの緊張が走る中、私は昔から夢想していたことを話す。


師匠「……」


クロマ「師匠のおかげで、私は普段の生活も魔術もここまで成長することが出来ました。でも、私は母様や父様の仇もありますけど、魔界や魔物の謎を解き明かしたい」


師匠「昔から言っておるが、ワシは魔界への行き方を教えるつもりは無いぞ」


クロマ「はい、自力で辿り着いてみせます」


師匠「ワシはクロに生きて欲しいから教えなかったんじゃが、何を言っても行ってしまうんじゃろうな」


クロマ「……はい」


師匠「分かった、じゃが2つだけ約束して欲しい。このペンダントを必ず着けること」


そう言いながら師匠は自身の首にかけていたペンダントを私の首に通してくれた。


師匠「もう1つは、必ず帰ってくること。ワシはもう歳じゃから着いていくことはできん」


クロマ「はい、必ずこのペンダントを返しに帰ってきますよ」


師匠「あぁ、その蒼いペンダントはクロの綺麗な銀色の髪とミントグリーンの目に良く似合う。またいつになるか分からんがその姿を見せておくれ」


クロマ「ありがとうございます」


こうして私は、無事1人前と認めてもらい王都を出る許可が出た。


その後、顔見知りの店主や街の人に挨拶をしたり、宮殿の魔術省の認定式にて第3等級の印として真紅の魔石が埋め込まれた豪勢な杖を頂いた。


クロマ「すぅ~はぁ~、よし!それじゃあ師匠、ミリディア、行ってきます」


私は深呼吸をし、街の門を潜り長い旅路への1歩目を踏み出した。


まずは、魔界への行き方から調べなくてはならない。なにせ師匠は行かせたくないからと教えてくれなかった。

ひとまずは王都から西に進んで別の街を目指してみることにした。

野宿しながら歩いて3日、風が気持ちよく感じる平原を進みようやく街が見えてきた。


クロマ「良かった、進む方向は合ってたわね」


私は街に入り、早速聞き込みをしようと人を探す。


クロマ「おかしい…」


王都ほどでは無いものの、ここもそれなりに規模がある街だというのに店に人がいない。


クロマ「すみませ~ん!お尋ねしたいことがあって!」


家のドアをノックして叫ぶも出てくる気配はない。


クロマ「変ねぇ、不気味なほど人が居ないわ」


不穏な空気を感じながら私は街を進むと、他の家と比べて少し大きい教会を見つけた。


クロマ「失礼しま…キャッ!」


私が教会に入ろうと中を見た瞬間、街の人全員が居るのではないかと思わされるほど多くの人が跪き、頭を下げて礼拝している光景が飛び込んできた。


クロマ「嘘…」


そして、その街の人が礼拝している先。神様を模したであろう人型の石像の手前に、縛られ口を塞がれた私と同じくらいの女の子が泣きながら立っていた。


クロマ「何をしているのですか!」


私は咄嗟に叫んぶ。


街人「なにをしている!早く君も跪くのだ!」


近くにいた人が、私に返答する。


クロマ「生贄ですよね?許されないことですよ」


街人「ここはフロム様を崇めるフロム教の教会だ。生贄は仕方の無いことなのだ」


クロマ(フロム教…?フロム教は生贄なんて文化はない。でも嘘をついているような目ではないし…)


クロマ「誰からこの礼拝を教えられたのですか」


街人「複数大陸を旅したという冒険家だ」


クロマ「なるほど…それは真っ赤な嘘ですよ」


街人「なに…!?無礼だぞ!フロム様の前で!」


クロマ「私は王都ミリディア出身ですが、フロム教にそんな教えはありません」


街人達「ミリディアですって」「じゃあ本当にこのしきたりは嘘ってこと?」「そんなはずは…」


男「おうおう、黙って聞いてりゃお嬢ちゃん、せっかく上手くいってたのによお」


街人達がざわめき始めた時、石像の裏側から1人の男がでてきた。


街人「冒険者様!」


クロマ「冒険者?」


男「そうだとも、俺が教えたんだ生贄が必要だってな」


クロマ「嘘を吹聴するのはやめて、どうせあなた人攫いでしょ」


街人「え…?」


男「王都出身者にはお見通しってか」


男はゆらゆらと身体を揺らし不穏な動きをする。


クロマ「皆さん!教会から出てください!」


私は叫び避難を促す。


男「もう遅せぇよぉ!」


男は懐からナイフを取り出し、私目掛けて襲いかかってくる。


クロマ「グラス!」


男「うお!?」


杖を構え詠唱した瞬間、床からツルが生え足に巻き付き男は転ぶ。


クロマ「アイシクル!」


転ぶと同時にナイフを落とし、手が空になった所を凍らせ抵抗出来ないようにする。


男「くそが!痛てぇ…!」


クロマ「考え無しに突っ込んできて、甘く見すぎですよ」


男「こんなちっちぇ子供にやられるなんてな…」


クロマ「なっ、子供じゃないです!もう少し痛い目にあいますか」


私は杖を構え直し鋭くとがらせた岩を生成する。


男「ひぃ!」ガクッ


クロマ「あ…まぁこの方がやりやすいですね」


男はそのまま気絶してしまったので、魔術をといた後に男を縛って端に置いておく。


クロマ「おまたせしました。大丈夫ですか?」


女の子「うぅ…っぷはぁ、ありがとうございます」


私は女の子の拘束を解き、話を聞こうとした刹那。


???「大丈夫か!?」


クロマ「!?」


教会の扉が勢いよく開き、重厚のある雰囲気がある魔術師らしき男が入ってきた。


魔術師「貴様が人攫いか!アリスを返してもらう!」


クロマ「待ってください、私は違います!」


魔術師「アイシクル!」


クロマ「仕方ないですね、メガ・フレイム!」


私を凍らせようと襲いかかる氷魔術に、1つ上の等級の炎魔術で対抗する


魔術師「そう甘くは無いか、ならば!」


クロマ「あなたは外に逃げてください。すみません!話を聞いてください!」


魔術師「人攫いの言うことを信じるものか、メガ・ウィンド!」


強力な風魔術が建物の壁を削りながら迫る。


クロマ「分かって頂けないのであれば、実力行使するまでです。『凍てつく波紋よ、全てを飲み込め』ギガ・アイシクル!」


風魔術が構えた杖に到達する寸前、さらに1つ上の氷魔術が一瞬にして消し去る。私の前に広がる建物の中全体を相手の魔術師諸共全てを氷漬けにした。


魔術師「ぐはっ…!」


クロマ「お話、聞いて頂きますよ?」


魔術師「分かった…」


魔術をとき、女の子を呼び戻して事を経緯を説明する。


魔術師「この度は、大変失礼なことを申し訳ありませんでした!!!」


クロマ「分かりましたから、土下座はやめてください」


魔術師「申し遅れました。わたくしローレン・クリスと申します。この街で魔導師をしている、第4等級魔術師です」


クロマ「私はクロマ・アリウス。王都ミリディアから旅をしている第3等級魔術師です」


ローレン「お見逸れしました。あんな氷魔術久しく見てないので驚きました」


クロマ「ちなみに、そちらの女の子は?」


アリス「アリス・メリーです、魔術師見習いをやっています」


ローレン「僕が街を出ている間にこんなことになっているとは、お助けして頂きなんとお礼すれば良いか」


クロマ「いえいえ、私も魔導師の方に失礼しました。代わりにと言っては変ですが、調べてることがあって聞きたいことがあったんです」


ローレン「私が分かることであればなんでも答えますよ」


クロマ「魔界に行きたいのです」


ローレン「魔界に…ですか…」


魔界という言葉を出したと同時にその場は重苦しい雰囲気になる。


ローレン「魔界に何しに行くかは聞きませんが、魔界の中で戦うのであれば4つある古代魔術が必要になりますよ」


クロマ「古代魔術、やはりその名前を聞くことになるんですね」


かつて魔術が発現した時代、先代が魔物を倒すのに使われた魔術の名前。

あまりに強力な秘術は口伝で継承することは出来ず、スクロールで残されたものの長い年月と魔物の襲撃から王都から失われていた。


クロマ「その古代魔術のスクロールは手に入れることが出来るのですか?」


ローレン「僕が分かるのは1つだけですね。このラングドック平原の山岳にある旧魔術研究所跡地、この遺跡にあると踏んでいます」


クロマ「なぜ分かるのです?」


ローレン「その遺跡にある魔術が住み着いているのですよ」


クロマ「ある魔物?」


ローレン「魔獣の中でも直立二足歩行型の魔獣、オークです」


クロマ「なるほど、二足型のオークが居るということは何かを守っている可能性が高いということですね」


ローレン「はい、僕が分かるのはそれくらいですね。力になれず申し訳ないです」


クロマ「そんな、十分嬉しい情報でした。ありがとうございます」


ローレン「あ、あと遺跡に行くのであれば言っておきたいことが」


クロマ「なんでしょう?」


ローレン「オークは炎に強いのでお忘れなく」


クロマ「はい!」


クロマ(魔界に行く方法は分からずとも、遅かれ早かれ魔界で戦う術は必要だもんね。なら、とりあえずはスクロールを集めながら、魔界への行き方を調べていこう)


私は考えをまとめながら教会を出て街の出口へと向かっていく。


アリス「お待ちください!」


クロマ「どうしたのです?」


街の出口に着いた瞬間、アリスに私は呼び止められた。


アリス「クロマさんは、これから旅に出るんですよね?」


クロマ「そうですね、先程教えて頂いた遺跡に行こうかなと考えてます」


私が問いに答えると、彼女は緊張した面持ちで深呼吸する。


アリス「私もついて行かせてください!」


クロマ「……え?」


豆鉄砲を食らったかのような驚愕の申し出に私は困惑してしまう。


アリス「私もその旅について行って、魔術を磨きたいんです」


クロマ「あの~…教会で話した通り私は魔界へ行くつもりです。その事はちゃんと聞いていましたよね?」


アリス「はい、承知の上です!」


クロマ「しかも、魔術師見習いが急に旅だなんてご両親が心配なさるのでは?」


アリス「……私のママとパパは私が子供の頃、魔獣に殺されました」


クロマ「それは、失礼なこと言ってしまい申し訳ないです」


アリス「いえ、いいんです。私が魔界へ本気で行きたいと思う理由を話す上で避けては通れませんから」


クロマ(私と同じ境遇で、魔界へ行きたいと思うのもほとんど同じ…それに、私も師匠のところこんな風に無理やり出てきたんだよね~…)


私は彼女の真剣な眼差しを尻目に熟考する。


クロマ「分かりました。ついて来たいなら勝手にしなさい。それと、途中で気が変わるようなら直ぐに帰ること、魔界は甘い場所ではありませんから」


アリス「絶対最後までついて行きますよ、安心してください!」


クロマ(少しばかり不安ですね…)


半ば強引に頼み込まれ、私は渋々了承し、二人で遺跡へと向かうのであった。


街が遠くにうっすらとしか見えなくなるほど歩いて山道へと着いた。

舗装されているとは言い難いものの、歩かれた跡であろうハゲた芝に沿って進んでいくと段々と人ならざるものの気配を明確に感じ始める。


アリス「嫌な空気ですね。今にも魔獣が出てきそうな感じがして怖いです」


クロマ「ちゃんと警戒しててくださいね、もう見えてくるはずですから」


グオォォォォ!


アリス「ひぃ!」


クロマ「っ!」


辺りを警戒しながら進むと、先の方で叫び声がこだました。

そのまま歩を進め続けると崖に挟まれた道に変わり、目の前に半壊し朽ちた建物が現れた。


クロマ「これが旧魔術研究所跡地、間違いないですね」


アリス「クロマさん!あれを見てください!」


クロマ「あれは…」


かなり大きめのドーム状の建物の中に、複数体の魔獣と一際体格の大きい二足歩行の魔獣が見える。


クロマ「おそらく、周りにいるのは野良の魔獣。真ん中に座っているのが例のオークでしょう」


アリス「気づかれないように入りましょう」


クロマ「いえ、オークはとても鼻が利きます。下手に近づくと帰ってバレてしまうでしょう」


アリス「ではどうしましょう…空から奇襲?でも、半壊しているとはいえ上から入れそうな隙間はないですし…」


クロマ「ちっちっち、甘いですよアリス。ここは!」


私が物陰から道に飛び出し、杖を遺跡目掛けて真っ直ぐ構える。


アリス「まさか…」


クロマ「そのまさかです!メガ・エレキスター!」


一体が眩しく光り、凄まじい速度で電撃魔術が遺跡諸共オーク達を襲う。

一瞬にして建物は全壊し中にいる魔獣は全て倒したかとように見えた。


アリス「ていうか、中にスクロールがあるんじゃないんですか?建物崩れましたけど」


クロマ「あ……急いで確認しに行きますよ!」



肝心なことを忘れアリスにカッコつけようとしたことを後悔し、壊れた建物へと急いで向かう。


グオォォォォ!!!!


クロマ「危ない!」


アリス「うっ…」


突然建物の中から叫び声が聞こえ、何が勢いよく起き上がる。それと同時に瓦礫が私達を襲いかかってくるものの、私は避けながら風魔術をアリスに当て、吹き飛ばすことで回避する。


クロマ「あれで倒れてくれたら楽だったんですがね、オークさん」


黒紫色の霧が体全体を覆い隠しているような風貌で、目が赤く光りいかにも凶暴そうな雰囲気を纏っているオークが姿を見せる。


クロマ(あんな大きな魔獣は初めて見ましたね、二足歩行とはいえ私達なんて手に握ってそのまま潰せそうなほど大きい…)


オーク「オレノ、イエガ…イエ、ガアァァァァァ!」


クロマ「魔獣なのに話すことが出来るんですか、そんな種は初めて見ましたね」


アリス「クロマさん!大丈夫ですか!」


クロマ「私は大丈夫です。アリスは自分の身を守ることに集中してください」


オーク「オマエガ、コワシタナ…」


クロマ「えぇ、あなたが守っているスクロールが欲しいんです」


オーク「コワシタナァァァァ!」


私の問いに答える素振りはなく襲いかかってくる。


クロマ「グラス!」


足にツルを巻き付けるよう草魔術を出すも力技で切られてしまう。


クロマ「避けるしかないですね」


地面を叩きつけたり、握ろうと手を伸ばして来たり、攻撃自体は単調なもので避けること自体は容易い。


クロマ「こちらの番です。メガ・グラス!」


鋭く尖った木の根が地面からかなりの速度でオーク目掛けて伸びていく。


オーク「グッ!グワァッ!」


今回の草魔術は効いたようで、勢いを潰しよろけさせる。


クロマ「やはり第4等級以上でないと効かないようですね」


オーク「オマエ、ソレマジュツ…オレモ、ツカエル!」


クロマ「なんですって…?」


魔獣が魔術を会得することは本来は無い。体に魔力が備わっていないとその身から魔術を編むことは出来ないためである。


オーク「ウオォォ…フンッ!」


ブウォォォォォン


クロマ「ぐっ…」


オークが力を貯める素振りを見せ、私に向かって放った瞬間、独特な重低音が響き私の近くにかかる重力が強くなった。


クロマ「なる…ほど…重力魔術…ですか…」


アリス「クロマさん!くそぉ…食らえ!アイシクル!」


私が強い重力で動けないのを見るや否や、アリスが氷魔術をオークに放つ。


オーク「オマエラノマジュツ、モウアキタ」


氷魔術は届くものの、第5等級では効くことはなくオークは大きく手を振りかぶり、思いっきり空を振り抜く。


アリス「いやっ…!」


強風が起こり細かい塵や瓦礫による埃や煙がアリスを襲う。


クロマ「いいえ…その一瞬で十分です…!メガ・ウィンド!」


私はアリスに向かってくる強風に、自身の風魔術をぶつける。


クロマ「いっ…!」


アリス「きゃぁ!」


オーク「ナンダ!?」


私とアリス2人とも岩壁に当たるが、その衝撃波を利用し、私は重力がかかったエリアから抜け出す。


クロマ「もう重力魔術は使わせません」


クロマ(さっきの草魔術を当てた腹辺り、黒紫のモヤが少し晴れている…あそこを狙えば一撃で決めれる)


オーク「マジュツハモウ、ツカワセナイ!」


オークが再度力を溜める。


クロマ「『秘めたる雷光よ、全てを蹴散らせ』ギガ・エレキスター!」


先刻の第4等級の電撃魔術とは、比べ物にならないほどの閃光と雷鳴が辺り一帯を照らすと同時に、巨大な雷が杖から放たれ、オークに直撃する。


オーク「グオォォォォ…!オォォォォォォ!!」


苦しそうな唸り声があがり、オークは前屈みに倒れる。


アリス「やりましたね!クロマさん!」


クロマ「えぇ…魔術が効いて良かったです…」


第3等級の魔術を立て続けに使い、さすがの私も疲弊する。


アリス「あ、オークが…」


黒紫の霧が晴れ、体の大きさも萎むよう徐々に小さくなる。

そして他の魔獣同様に灰になって消えた。


クロマ「良かっ…た…スクロール、ちゃんとありましたね…」


オークの体が灰になって消えると同時に、体があったであろう場所にスクロールが出現する。


アリス「恐らくですが、オークに守られている古代魔術と聞いていたのが、魔獣に取り込まれ魔術を扱えるようになりオークとなったと」


クロマ「おおよそ合っていると思います」


私はスクロールを手に取り、内容を確認する。


クロマ「やはり重力魔術のことが記されていますね」


アリス「でも、どうして魔獣がスクロールを取り込むだけで魔術を扱えるようになったのでしょう?」


クロマ「たしかに気になりますね…黒紫色の霧も初めて見ましたし、スクロールを取り込むなんてことも、本来は出来ないはず…」


アリス「なんですか!杖が光ってますよ!」


クロマ「あぁ、少々お待ちを。『汝、クロマ・アリウスの名のもとに、此魔術を我がものとする』」


私が詠唱すると、スクロールが端から徐々に塵になっていき、光る杖に吸収されていく。


クロマ「アリス、私が属性魔術を使っていたのを見ましたね?」


アリス「は、はい!」


クロマ「あれも、こうして杖がスクロールを吸収して会得するのです。自身の魔力量と技術によって習得可能かどうかは杖が判断してくれます」


アリス「それは存じてます、、、まだ第5等級とはいえ私もそうして会得したので…」


クロマ「あっ………///」


アリス「いえいえいえ、でも本当にわかりやすい教え方でしたよ!私が何も知らない状態で聞いてもきっと理解できるほどに!」


クロマ「もう…やめてください…」


クロマ(しっかりとした魔導師っぽく教えたつもりが、アリスの知っていることを話しただけで、ものすごく恥ずかしい思いをしました…)




???「クロマ・アリウスか……彼女は才がある。近いうちに面白いものが見れそうだなぁ…」


崖上から私達を見下ろす黒い影。オークを撃破し歓喜と疲弊に苛まれる私達は気づいていなかった。




アリス「それで、次はどこに向かうのですか?」


クロマ「そうですね…ローレンさんから聞いた情報は合ってると判断し、残りの3つのスクロールを探しながら、魔界への行き方も見つけようかなと考えてます」


アリス「では、ひとまずはこの山岳を登ってきた方と反対側に降りた先にある、サルメール砂漠に行くってことですね!」


クロマ「はい、そこで情報収集をしましょう」


反対側は過酷で険しい山道を抜け、草木が徐々に少なくなっていき、砂岩でできたトンネルに出た。

意を決し2人でそのトンネルに入り、私達はサルメール砂漠へと向かうのであった。


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