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8.子爵令嬢のワクワク諜報活動レポート

 例の聖女様が、アリア様を追いかけて図書館に向かったのを目撃した私たちは、すぐさま尾行を開始いたしました。

 メンバーはもちろん、アリア様を見守る会の面々と、特別顧問のアンナさんです。アンナさんはこのところ、ずっと学園に潜入して、アリア様の警護をしておられます。学園の職員を装い違和感なく周囲に溶け込むその技術は、さすがとしか言いようがありません。一体、どのくらい多くのスキルをお持ちなのでしょうか。


 聖女様はアリア様に声をかけ、二人で談話室のひとつに入って行かれました。私たちもすかさず隣の談話室へ。

 ここからは、アンナさん作製の魔道具が大活躍です。


「隣の部屋で壁がありますのに、音が拾えるんですの?」

と、アデリン様。私も不思議に思っておりました。


「はい。ターゲットの魔力に反応するので、壁はほぼ関係ありません。でも、魔法バリアを張られると、少し難しくなりますね」


「十分素晴らしいですわ! 魔法バリアを張れる者など、そうそういませんもの」


「二人の声を皆で聞くこともできるのか?」


「もちろんです。スピーカー機能がありますので」


「完璧ですね」

 思わず、感嘆の声を上げてしまいます。


「では、念のためこの部屋には防音魔法をかけておこう」


 その素晴らしい魔道具「盗み聞機2号」は、アリア様そっくりのお人形の中に仕込まれています。そのせいで、サルーシャ様が、やたらと触りたがって少し気持ち悪いです。


 そうこうしている間に、鮮明な音声が魔道具から聞こえてきました。



  ・   ・   ・   ・   ・



「⋯⋯、あちらの世界のサルーシャ様は、なんというか壮絶ですわね」


「不幸を全部背負ってますね」


「暗いですね」


 サルーシャ様は、眉間に皺を寄せ、複雑な表情をしています。

 話を聞くに、聖女様のサルーシャ様への思い入れは、相当なものです。それだけの理由があるのもうかがえました。


「アリア様、すごく泣いてますね」


「お嬢様は清らかですから」


「⋯⋯あらまあ! 聖女様ったらサルーシャ様を譲れだなんて、何を言い出すのかしら」


 聖女様の申し出に、若干驚きはありましたが、私を含め、全員まったく動揺はありません。むしろ、あるのは期待。おそらく、ここからがアリア様の真骨頂です。


『⋯⋯⋯⋯お願いです! サルーシャ様を救ってくださいまし‼︎』


 思ったとおり、話がまったく噛み合わなくなってきました。笑い上戸のお二人がプルプルし始めます。

 最初から、アリア様は聖女様の語るサルーシャ様を、まったくの別人と捉えていらっしゃることがわかります。



 あ、ようやくアリア様が、全然噛み合わない原因に気づきました。


 笑い上戸を暴露されたサルーシャ様が、ショックを受けています。まさか、バレてないとでも思っていたのでしょうか。


「猫? 鳥? なんと情けない。なんですか、その稚拙な言い訳は」

 アンナさんが、冷ややかに言い放ちます。ほんと、アンナさんのおっしゃるとおりです。サルーシャ様は、冷や汗をかいて縮こまっています。


 さらにアリア様から放たれた「ヘタレ」の言葉に、サルーシャ様は石化。アデリン様は「ブフォ」と淑女にあるまじき音を発してくずおれ、アンナさんは「おーっほほほほ」と高らかに笑いました。カッコいい。



 そして、クライマックス。アリア様が魔王の話を語り始め、それを聞いた私は興奮でどうにかなりそうでした。

 アンナさんが魔王を倒したなんて! もう、私の尊敬と憧れはMAXです! アンナさんは世界一カッコいい侍女です! ああ、師匠と心に決めたことは間違っていなかった。

 アリア様を推すと決め、そのお陰で人生の師匠に出会うことができた僥倖に、心から感謝です。


 その頃になると、アデリン様は床に這いつくばってヒーヒーと変な音をさせ、サルーシャ様は完全なる石化状態でピクリともせず、アンナ師匠は誇らしげに顔を輝かせていらっしゃいました。心なしか、お肌もツヤツヤしています。




 実に充実した諜報活動でした。

 聖女様も無事に納得されたようですし、アデリン様は「お、思い出しただけで、プッ、ふふぉっ、く、苦しい」と、大変ご満足なご様子ですし、アンナ師匠はキラキラしていらっしゃいます。


 あら、サルーシャ様は、すっかり石像ですね。

 ⋯⋯これ、どうやって運べばいいのでしょうか?




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