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3.隠密侍女アンナの華麗なる諜報活動

 危険人物、聖女セイカ・アイダ。彼女は、サルーシャ様にただならぬ興味を持ち、その婚約者であるお嬢様に、良からぬ感情を抱いている模様です。


 もちろん、このアンナ、お嬢様に害をなす者は速やかに排除する所存。今度こそ、サルーシャ様に先を越されることなく、私がこの手で仕留めたい。

 これはもう、私の悲願と言ってもいいかもしれません。


 そう、あれは2年ほど前になりますか。東方の国で魔王復活の波動が感知されたと教会から発表がありましたが、それよりも早く魔王復活を感じ取った私は、すぐさま現場に向かいました。

 長い旅になることが予想されたので、お嬢様には実家の母を見舞うとかなんとか言って2週間ほどのお休みをいただき、それでもサクッと終わらせて1週間で戻る気満々でした。


 計画は順調で、私は目覚めたばかりの魔王を特製の巨大ぬるぬる落とし穴に落っことすことに成功しました。穴の壁面を覆うぬるぬるは、ターゲットの魔力をぐんぐん吸い取ってさらにぬるぬる度を増す仕様になっているアンナ印の魔道具です。こんなこともあろうかと、開発しておいて良かった。さて、あとは殺るだけ、と数秒後の達成感に思いを馳せそうになった、その刹那。



ちゅどーん



 私のぬるぬる落とし穴に突き刺さる、絶対零度の超特大氷柱。


「あああああああ」

 思わずこぼれ出た私の絶望の声。


「あっ! アンナ⁉︎」


「ひどい! ひどすぎる!」


「ああ、アンナ、ごめん、悪かった。君がいるとは知らなくて⋯⋯。いや、魔王の魔力を察知したので、その発生源にピンポイントで当てたんだけど、君が、その、殺るところだったとは⋯⋯。ごめん! 知らなかったとはいえ、本当にすまない!」


「あああああああ」


「ごめんなさい! すまなかった! この通りだ!」


「はあ〜〜〜〜〜。⋯⋯これは、貸しですよ、サルーシャ様」


「は、はい、わかりました。君の獲物を横取りするような真似をしてしまって申し訳ない⋯⋯。二度としません」


「⋯⋯氷の理不尽男⋯⋯氷の詐欺師⋯⋯氷の快楽殺人者⋯⋯」


「本当にすみませんでした!」




 今思えば、懐かしくも胸くそ悪い思い出です。


 さて、氷の残念男のことは置いといて。⋯⋯そう、私はこの手でターゲットを仕留めるべく、今は情報収集です。


 被疑者・聖女は取り巻き(第三王子とその他)を引き連れて街に繰り出しています。今回の目的は、聖女が何を目論んでいるのかを明らかにし、次の行動を読むことです。


 この日のために、私は新作の魔道具を用意しました。このアンナ印魔道具「盗み聞機2号」は、ターゲットの魔力にロックオンすれば、そいつがしゃべることをすべて遠隔で聞き取り、なおかつ録音もできるという優れものです。

 大きさは小石くらいの、見た目には面白味のない機械ですが、私はそれを特製アリアお嬢様人形のお腹に埋め込み、愛すべきアイテムに仕上げました。

 こうすれば、ターゲットの声を聞き取る際、傍目からは人形にずっと頬ずりしているようにしか見えません。


 客観的に見れば、愛らしい人形に頬ずりしている不気味な女なので、周囲は静かになるし、私はお嬢様人形に癒されるしで、一石二鳥です。すべてが完璧だと言わざるを得ません。


 聖女と取り巻きは、小物店や宝飾店などを覗いたあと、街の広場で休憩を取る様子です。取り巻きが軽食や飲み物を買いに、その場を離れます。聖女はベンチに腰掛け、彼らが戻るまで待つことにしたようです。


「はあ、楽しくないわけじゃないんだけど⋯⋯、私、アイツらにはそんなに思い入れないんだよね〜。推しはサルーシャただひとり! でも、なんで婚約者がいるんだろう? サルーシャのトラウマはどうなったのかなぁ。

 まあ、私と一緒に魔王を倒せば、とにかくサルーシャは救われて、私とハッピーエンド! それまでに、私はアイツら全員攻略しなくちゃだけど、そっちは結構順調だし」


 ありがたいことに、聖女はものすごくひとり言の多いタイプでした。こんな人いるんですね。


「ええと、サルーシャ攻略は5回もやったから、ストーリーはちゃんと覚えてる。

 教会が魔王復活を発表してから2年後、魔王は軍勢を作り上げて人間を襲い始める。聖女はそれに対抗するための天啓を受ける。魔王軍と戦うためには、攻略対象の協力が必要。でも、魔王を倒すのには聖女の浄化魔法を凍らせて閉じ込めた強力な氷魔法が必須ってことだったんだよね。魔王が強すぎて、普通の魔法じゃ倒せないから。

 つまり、世界の平和のために、私とサルーシャの協力は絶対なのよ。で、世界を救ったら、必ず聖女とサルーシャは結ばれる。

 婚約者がいるのは気になるけど、ストーリーに影響があるようには思えないなあ。今できることは、魔王の情報を集めることくらいか」


 いやーよくしゃべる。いつもこのくらい諜報活動か簡単だと助かるのですが。


 そろそろ取り巻きが戻って来る頃合いですし、十分な撮れ高を確保できましたので、私は聖女にささやかなお礼をしました。

 今日もらった商店街のチラシを風魔法に乗せて、彼女の膝の上に。



「⋯⋯な⁉︎ なにこれ⁉︎ 『魔王完全消滅・2周年記念セール! 全品10%オフ!』?? ど、どういうこと⁉︎」



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