2.秘密結社「アリーを見守る会」緊急会議
短いです。
「さて、聞いての通り、本日聖女セイカ・アイダによる接触があった。
まずは、聖女について各々が知っている情報を共有しておきたい」
「はい。聖女は2週間ほど前に、第三王子アクシェイ殿下が主体となって行った召喚儀式により異世界から現れた人物です。年齢は15歳。浄化魔法を使えるとのこと。私が把握しているのはそのくらいです」
「ありがとう、リリアン嬢。
アデリン様は、王室内部からの情報を握っていますか?」
「ええ、ある程度は。第二王子失脚で、にわかに第三王子の周辺が勘違いの野心に目覚めたことが発端かと思われますわ。
おだてられたアクシェイ殿下がいい気分になり、王家の古文書を持ち出し、聖女召喚を敢行。注目を集めて、次期王位争いに参戦するつもりだったようですわね。
誰も魔物に困っているわけでもない現在、浄化魔法しか使えない聖女を呼んだって、王位が転がり込むわけでもないのに。面倒なことをなさったものだわ」
「本当ですね。魔の森の結界は知らないうちに強化されてるし、スタンピードの予兆があっても、知らないうちに正常化されてるし、いつだったか、教会が魔王復活を発表した時だって、知らないうちにその強大な魔力の波動が跡形もなく消えてしまいましたし」
「⋯⋯」
「本当に不思議なことですわよね。どなたか、とんでもない力をお持ちの方が、サクサク片付けているのかと疑うくらい」
「⋯⋯⋯⋯なるほど。ゴホン。
さて話を本題に戻しましょうか。私からは、今日、アリーに接触してきた聖女が、気になる発言をしていたことを、お二人にも共有しておきたい。
まず、聖女とは初対面であったはずだが、なぜか彼女は私を知っていたようだった。しかし、私に婚約者がいることに『そんなはずはない』『ゲームと違う』との不可解な言葉をつぶやいていた」
「それは気になりますね。異世界の人ですから、何か別の特殊能力があるのでしょうか?」
「そういえば、聖女は召喚された時、目の前にいた殿下を見て大変驚かれた様子で、『アクシェイ』とお名前を言ったらしいですわ。もちろん、名乗られる前に。アクシェイ殿下の周辺は、それを聖女の能力なのだろうと解釈したようですが。
それと、殿下のお名前を言い当てたこと以外にも、『攻略対象』と言っていたらしく⋯⋯。こちらの意味は、いまだ明らかになっておりません」
「ふむ。アデリン様、それは大変貴重な情報ですね⋯⋯。
しかし、現状ではまだ情報が少な過ぎる。とりあえず今は、さらなる情報収集に重点を置きますか。私の手の者も動かします。お二人には学園内での聖女の動きに気をつけていただければ」
「もちろんです」
「わかりましたわ」
「お話中失礼いたします、皆様」
「おやアンナ、ちょうどいい」
「僭越ながら、その情報収集に、ぜひ私もご協力させていただきたく」
「それは心強いですわ!」
「アンナさん、むしろ私の方が、情報収集のイロハをご教授いただきたいです!」
「当然だろう、アンナ。君にはこちらからお願いするつもりだったよ。申し出ありがとう。
では、本日の会議はここまで。
次の会議は3日後の同刻、この場所で」