三話
エルマンダの家
色々と買い込んでそれを全て鞄の中にしまって家に戻って来たエフィーは師に近付く。
「ねぇ?、師匠、あの人が言ってたママが師匠の弟子って言うのは本当?」
隠していた事を批判する気はエフィーにはない。ただエルが本当にエルマンダの弟子なのかどうかを知りたいのだ。
「本当だ」
「そうなんだ、ママも師匠の弟子だったんだね」
母がエルマンダの弟子であったと知ったエフィーは胸に手を当てて嬉しそうな顔を見せる。
「隠してた理由はお前達親子を育てて来た私だからこそ分かるが、お前達は気負いすぎるところがある、それを防ぐためだ」
「あはは…」
気負いすぎるところがあると言われたエフィーは苦笑いをする。実際母がエルマンダの弟子であったと聞けば母のように頑張らなくては!と無理をしていただろうと思う。そのため伝えなかったエルマンダの判断は正しいと思う。
「こうして話せるようになった今だから言えるが、お前達親子は良く似ているよ、優しくそして確かな真の強さを持っている、それがお前達親子の良いところだ」
「…」
母に似ていると言われたエフィーは再び嬉しそうな顔を見せた。
「さぁて、エフィー、夕飯にしよう」
話を終えたエルマンダは夕飯の時間だと言う。エフィーは頷き夕食を作り始めた。
シホーハッタの街
ラナと合わせて旅に出る予定であるエフィー。ラナの師が最後の試練をラナに与えているため。旅立ちまではまだ数日掛かりそうだ。
「試練はどう?」
ラナの元にやって来たエフィーは試練の進捗について聞く。
「まだまだよぉ…」
ラナの師が旅立ちの試練として与えた試練はキングリザードマンを倒すと言う試練だ。キングリザードマンはこの辺りの地域では上位の強さを持つ魔物であり。中々倒せる敵ではない。
「ただもう少しで勝てそうな気がするからもう少しだけ待ってくれるかしら?」
「うん、待つよ」
「ありがと、今日も行って来るわ」
ラナは頑張る!とガッツポーズをすると椅子から立ち上がりキングリザードマンの元に向かって行った。
「さぁてと、私は日課でもするかな」
ラナを見送ったエフィーは日課である人助けを始めた。
街を歩いていると子供達が木の周りに集まっていた。どうやら猫が木に登ったのは良いものの降りれなくなってしまっているようだ。
「降りれなくなっちゃったかぁ…」
エフィーは子供達に待っててねと伝えると空を飛び猫の元に向かい抱き抱えると降りる。
「エフィー、ありがとー!」
猫を渡してやると飼い主の女の子がとても嬉しそうにお礼を言って来た。
「うふふ、どういたしまして」
エフィーは優しく微笑みながら彼等に手を振りこの場を去る。そしてお気に入りの公園に向かうといつもそうしているようにベンチに座りポケーと空を見上げる。
「ふふっ、懐かしいわね」
「ええそうね、あの子の母親もあそこで良く空を眺めていたわ」
二人のエルのことを知る老婆が親子で同じ行動をしている事を微笑ましく思う。
「あの子が生きていれば、二人であそこに座っていたのかしら…」
「でしょうね…」
エフィーを見守る二人の老婆はエフィーの隣にエルがいない事を悲しく思う。
「はぅ…」
寝てしまっていたエフィーは目を覚まして辺りを見回す。するとすっかりと夕方になってしまっていた。
「洗濯物片付けなきゃ!」
ヤバい!と立ち上がった少女は慌てて家に戻ろうとするがそこにボロボロになったラナがやって来た。
「おお、ラナ」
エフィーはボロボロな様子を見て大丈夫?と手を取る。
「問題ないわ、それよりも倒して来た、だから明日にはもう旅立てるわ」
「おおー!、凄いね!、でも旅立つのは明後日にしよ?、旅の道具とか買い揃えないと後で困る事になるよ?」
「…そうね、なら明後日旅立ちましょう」
ラナの旅道具を揃える時間も考えて二人の旅立ちは明後日に決まった。
「それじゃ私は帰るわ」
「うん、また明後日ね」
「ええ」
手を振りラナと別れたエフィーは急ぎ家に帰る。
エルマンダの家
家に戻ると洗濯物が片付いていた。
「遅かったね、どうせあの公園で寝てたんだろう?」
「よ、よくお分かりで…」
「お前の母親もそうだったからね」
「あはは…」
エルマンダの言葉を聞いたエフィーは再び苦笑いをする。同時に本当に自分と母は似ているのだなと思った。
「師匠、ラナの試練が終わったから明後日には旅立つよ」
「そうかい」
エルマンダは明後日に旅立ちが決まったと聞きエフィーから背を向けた。そんな師を見てエフィーは彼女の背中に抱きついた。
「寂しくなったら転移でいつでも帰って来るからね」
「フン、三日後には帰って来てそうだね?、お前は」
「ふふっ、かもね」
「さぁ、エフィー、夕食にしよう」
「うん」
エフィーはエルマンダから離れると今日も料理を作る。