一話
シホーハッタの街二番通り
二番通りに出たエフィーは楽しげに鼻歌を歌いつつ歩く。すると街行く人々が挨拶をしてくれる。彼等は大抵修行の一環として何かしらの手助けをエフィーは行っている。なので皆挨拶をしてくれるのだ。
「よっ!、エフィー」
エフィーがにこやかに挨拶を返しながら歩いているとラナがやって来た。彼女も魔女であり剣聖の魔女アスィリアが開いた流派アスィリア派の魔法剣士である。
アスィリア派の他には通常の杖を使って戦う魔女もおりこれはオーソドックスな魔女であるため特に何派とは呼ばれてはいないが。通常の魔女も含めて魔女三大派閥と言われている。
「やっほー、ラナ」
エフィーは親友であるラナとハイタッチをした。
「おっ、今日は銃を忘れていないわね?」
「…、もしかして私は毎日うっかりを起こす子だって思ってる?」
ちなみにエフレ派の魔女は杖でもある銃を身に付ける事で銃を手に持たなくても魔法を行使する事が出来る。しかし銃を忘れたりすると魔力の安定化が難しくなり実質的に魔法が使えなくなってしまう。そのためエフレ派の魔女が銃を忘れるのは御法度なのだ。
「うん」
「…、小さい頃私と一緒に寝てる時にお漏らしした癖に…」
真顔でうっかり魔女だと言うラナに対してエフィーはポツリと幼い頃の出来事を言った。
「ち、小さかったんだから仕方ないわよ…」
「やーい、ラナったらお漏らし女〜」
「こ、こいつめ…」
ベーとしつつラナを揶揄うエフィー。恥ずかしさの限界が来たラナは顔を真っ赤にして俯いた。
「ふっふっふ、今日は私の勝ちだね!」
「くぅー…」
エフィーに負けたラナは恨めしげな顔でエフィーを見る。
「…はぁ、そう言えばエフィーは師匠にそろそろ言われた?、旅に出なさいって」
ラナにも師匠がこの街におり。その師匠が最近ラナの旅について仄めかし始めているのだ。なのでエフィーにその事を聞いた。
「まだだよ、ただ、そろそろかなぁ?って感じてる」
エルマンダが何やら悩んでいることにエフィーは気付いている。八年間一緒に暮らした仲だそう言う気配は分かるようになるのだ。
「そっかー、ならさ、一緒に旅に出ましょうよ」
「良いよー、でも私が行きたい場所とラナが行きたい場所が別だったら別れる事もあるかもよ」
「それは織り込み済みよ」
二人が行きたい場所は常に同じではない。そのため出発は一緒だったとしても別れることは間違いなくあるはずなのだ。
「ならオッケーだね」
「ええ、楽しみね、世界を見て回るの」
「ふふっ、だね」
二人はどんな街に行こう?とベンチに仲良く一緒に座り話し始める。
暫くしてラナと別れたエフィー。ラナは師匠に買い物を頼まれていたのを親友の姿を見てスッパリと忘れていたのだ。そのため慌てて頼まれていた物を買いに行った。
「エフィー、ちょっと頼まれてくれるかな?」
ベンチに座りぽけーと空を眺めていると街の住民が話しかけて来た。
「はーい、魔弾の魔女の弟子にお任せ〜」
エフィーは立ち上がると芝居掛かった仕草でお辞儀した。
「ははは、この前採って来て貰った、オルバンゴ草がなくなってね、採って来て欲しいんだ、勿論報酬は渡すよ」
この世界に冒険者ギルドはない。その代わりに魔女を見かけたら頼み事をすると言う習慣がある。頼み事をされた魔女は別の依頼を受けていたり他にやらなければならない事がある場合を除いては基本的に依頼を受けるのだ。
「任せて、転移して見てくるね」
高難易度魔法である転移をエフィーは使える。何故この魔法が高難易度なのかと言うと。魔法の行使に優れた魔女でなければ体がバラバラになってしまう可能性が高いからだ。そのため転移が使えると優秀な魔女である証となるのである。
「頼んだよ」
「うん」
エフィーは転移をするとオルバンゴ草が生えている場所に転移した。
オルバンゴ草の群生地
オルバンゴ草は洞窟の月光が差し込む場所に生える。エフィーはこの場所をエルマンダからここまで行って帰って来ると言う修行を通して知っており。一度ここに来ているためこの場所に転移が出来るのである。
「おっ、生えてる生えてる」
エフィーはオルバンゴ草を確認すると採集し腰に付けている鞄に入れて行く。この鞄は空間拡張を自分で施してありかなりの量の荷物が入る。
「…」
十分なオルバンゴ草を回収したエフィーは何かを感じたようで銃を抜く。
「来た!」
エフィーが感じていたのは魔物の気配。現れたのはゴブリンであった。
「もう…この前お宅訪問して壊して回ったばかりなのにもう増えたんだね…」
ゴブリンは繁殖力が高くすぐに増える。そのためゴブリン退治は魔女がよく受ける依頼なのだ。
「…」
エフィーは先手を取り二匹攻撃をされる前に倒した。
「それじゃまたね」
今回の目的はゴブリン討伐ではない。オルバンゴ草も回収出来ているため。怪我をする前に帰ろうと判断したエフィーは転移して街に帰還する。
シホーハッタの街
シホーハッタに転移して来ると先程の街の住民が待っていた。
「採って来たよ〜」
「おお!ありがとう!、これが報酬だ」
オルバンゴ草を渡すと住民は報酬として一万ゴールドを渡して来た。
「はい確かに」
報酬を受け取ったエフィーは今日はもう帰ろうと思ったため。エルマンダの家に向けて帰って行く。