第八話 第一回特別試験開始
そうして翌日。私、いや私たちエアニス学園生徒一同は水上船に乗り、目的地である無人島に向かっていた。
そんな中、私は水上船に乗っている間、ずっと海を眺めていた。エメラルドグリーンのような神々しい色をしつつ、日光によってそれはさらに輝きを増していた。そんなものを私が見ないわけなく、気が付けばずっと眺めていたのである。
「ディア、そんなに海が好きなの?」
そんな時だった。後ろからメルが声をかけてきた。どうやら彼女にとってはこの海は普通らしい。きれいなのに...。と、心の中ではあるがメルを哀れんだ。
振り向かずに私は答える。
「そうだよ。私はこの景色が大好きになったんだ」
「試験前なのに、ずいぶんと余裕なのね」
そういって、彼女は私の隣に来て海を眺める。
「余裕というわけじゃないけど、リーダーが私である限り、私が最初に焦ったらみんなも焦る。だから、私は余裕の表情をすることで、みんなの士気を上げようとしてるだけだよ」
「あなたって、案外やさしいのね」
「さあ」
あまりにも的が外れたことを言われたせいで、私は思わず彼女の発言を軽くあしらった。
「ちなみに、私は余裕よ」
「それはどうして?」
「それはね...」
彼女がどうしてこんなに余裕そうなのか。不意に私は疑問に思った。
そして彼女は、私のほうを見て、自信満々に。そして笑顔で、その言葉を口にした。
「あなたが特訓してくれたのだから」
「...そうか」
私は静かに目線を細めて、視線を下に落とした。
「おーい、リーダー。そろそろ出発の時間だぜー!」
後ろから、リーダー決めで剣を生成する能力を持つ男、ボトルが私にそう呼びかける。気が付けば、生徒全員が移動していた。
そろそろか。と、私は海を眺めるのをやめ、全生徒のたまり場になっている水上船の降り口に行く。私の見る限りでも、周りはそわそわしており、やはり緊張しているのだと、私は再認識した。
しかしその中で、緊張の色を全く見せていない男が一人いた。その男は緊張というより、そわそわしていた。
その男は、言うまでもなくセガであった。
『目的地の無人島に到着いたしました。水上船の降り口から降りてくださいませ』
前方にいた操縦士がそういうと、水上船の扉が自動的に開いた。
さあ、第一回特別試験の始まりだ。
そうして、私たちの団体戦が始まった。
「それで、どうするよ。リーダー」
無人島に着いた私率いるDクラス一同は、開始早々にアクシデントが起きていた。別に食料や寝床の不足といったアクシデントではない。それだったらいくつかグループを作って各々物資を集めればよいだけの話である。だが、この問題は、行ってしまえば解決策がない問題だった。それが...。
「私は男子と近くに拠点を作るなんていやよ!!」
「そうよ!特にボトル!あんたは特に近づかないで頂戴!」
「あぁ!?お前なんか興味ねぇっつーの!!」
ボトルが大声で反論する。すると、それに便乗してほかの男子生徒も遍路運を始める。気が付けば、メルと私以外で口論になっていた。
そう。これが現状の大問題。女子が男子と一緒の拠点にするのが嫌らしい。しかも近くに拠点を立てるのさえ嫌だときた。こうなると、どちらかのチームがいつ壊滅状態に陥ってもありえなくはない状態になる。
どうすればいいか。思わず頭を悩ませる。二つのグループに分かれるとすると、護衛が二人必要になるのだ。
...。そうか。そこで私は気が付いた。そうじゃないか。唯一護衛を任せられる人物がいるじゃないか。私はまだ喧嘩しているボトルたちの仲裁に入る。
「まあまあ。そう争わないで」
『あ”?』
ボトルと最初に言い争っていた女子と本人が、私をにらんだ。おー怖い。だが、その威嚇にひるまずに、私はある提案をする。
「落ち着いてよ。で、女子たちの要望は男子と距離を置きたいってことでいいよね?」
女子たちがうなずく。なんだ、案外わかってくれる人たちじゃないか。と安堵した。
「おい!でもそしたら...」
「わかってる。だから、男子陣と女子陣に一人ずつ護衛をつけようとおもう。それでどう?」
「...。へっ。さすがはリーダー。頭がいいじゃねぇか。だけどよリーダー。護衛は誰にするんだ?」
ボトルの質問に、私は少し言葉を詰まらせた。そう、心配だったのだ。
この提案は一か八かの賭け。だけど、それなりのリスクを払わねば、この問題は解決しなかった。だからこそ、私はみんなに了承してもらえるよう心の中で願いながら、言葉を吐き出した。
「女子陣にはメル。そして...」
そういって、私は親指で自分をさす。
「男子陣は私が護衛を務める」
「...」
全員が黙った。やっぱり、リーダーである私が出るのは博打だっただろうか。と、少し不安になる。
しばらくして、ボトルが口を開いた。
「いいぜ。賛成だ」
「ええ。その提案をするってことは、それなりの自信があるってことよね?なら、不満はないわよ」
「ありがとう。二人とも」
「ちょっと待ってよ!」
それじゃあ、この作戦でいこうか。と、作戦を提案した時のことだった。メルがみんなを呼び止めた。
「どうして私なの?ディア!」
「なんでって...」
口角を上げて、私はさも当たり前かのように答えた。
「お前、さっき余裕って水上船で言ってたろ。それに、私の特訓を受けたんだ。そう簡単にはやられんさ」
「そ...そう」
メルはそう言って、照れくさそうにしながら、一線を退いた。
「そしたら、行動開始だ」
私の掛け声と同時に、女子陣と男子陣が間反対の方向へ一斉に移動する。
そうしてようやく、Dクラスによるサバイバル生活が幕を開けたのだった
反応が良ければ続編を作って投稿してみようと思っております。面白ければブックマーク等をしていただけると幸いです
次回はもっと面白い話にしようと心がけながら、今後も続編を書いていきたいなと思っております。応援よろしくお願いします!!