第一話 神様がいなくなった
ひらひらと散ってゆく桜のうちの一つが、私の頬をかすめる。桜並木のなかで歩を進めて目的地にまで向かう。私の足の先にあるのは、私が通う学園であるエアニス学園だった。
風がなびく。そういえば、私今ウルフカットで黒色の服って、この学園で変な目で見られないかな。と、少し不安に思ったが、別にいいやと吹っ切った。
しばらくあるいて桜並木を抜る。そして、今までさえぎっていた太陽の日が強くなり、私は思わず目を細めそうになった。しかしそれよりも、私は最高峰の学園と言われた校舎を見たかったため、必死に目を開けた。
校舎はキレイだった。普通の校舎ならヒビや老朽している箇所がいくつか存在しているが、その個所すらもない。ただ、純白の校舎がそこにはあった。
それにしてもと、私はあたりを見渡す。私の視界には、大勢の人間がおり、広々とした校門前が埋め尽くされていた。しかも、ここにいる全員は合格者。すなわちエリートである。しかしそれゆえに個々が孤立しており、仲良くしようとなどととは思っていないようだった。
そう思った時、校門から複数名の教師が現れ、私たちに深くお辞儀をした。その後、中央にいた一人の女性が一人だけお辞儀をし、一歩前へ躍り出た。
「まずはご入学おめでとうございます。ようこそエアニス学園へ。私がこの学園の学園長のアリスと申します。こうしてこの学園が開園できたのも、あなたたちのおかげです」
アリスは深々と、またお辞儀をして見せた。
「そして私の周りにいる人たちは教員で、各クラスの担当になります」
彼女の言葉で、教員全員が一歩前に進み、挨拶を始めた。
「アルベルトだ。Aクラスを担当する」
「シアです。Bクラスを担当することになりました」
「ルスフェルです。Cクラスを担当することになりました」
「アワンです。Dクラスを担当することになりました」
総勢四名のあいさつが終わると、四名は後ろに下がった。
それを確認したアリスは、この学園の制度について話し始めた。
「エアニス学園。きっと、この学園に来たということは、この学園のルールを知ってここに来たのでしょう。ですが、まだ知らない人や、忘れている人もいるかもしれません。なので今からこの学園のルールについて話し始めようと思います」
えー。や、いいよ~。という様々な意見が飛び交う中、私はじっとアリスの言葉を待つことにした。
決して忘れたわけではないぞ?いろいろというのがめんどくさいだけだ。そうだぞ?
「今から300年前、神様によって私たちに能力が宿りました。今までの生活が一新し、私たちに不可能はないと思われていました。しかし、神様は皆さんの能力をバランスよく調整していたのか、次第に不可能なことが出てきました。人びとは神様に向けて不満をぶつけ続けました。神様というのは噂によって姿を変えてしまう。そんな存在です。人々は神様に不満をぶつけ続け、神秘的だった噂だったものは悪い噂に変わりました。そのせいで100年前、神様は祟り神へ変化し、人々を襲いました」
私はアリスの話を聞きながら、過去の歴史伝書で読んだことを思い出していた。
祟り神。性別や姿などは記されていなかったが、過去の情景を描いていた絵が記載されていた。左には血まみれになっている能力者が何百万人。右には祟り神と、その後の神が激しい戦闘を繰り広げている描写があった。その後は...。
「その後、次期神様と四千五百万人の能力者が祟り神が戦い。犠牲者が約四千三百万人。大きな犠牲の中、なんとか勝利をつかむことができました。そしてそれから100年がたった今、神様が席を外し、人々の能力が強くなりつつあります。そこで我々は国を治める抑制力を欲しています。私たちはその抑制力を持たせるため...いや、この学園に合格した時点で、様々な恩恵を受けられることかな?はたまた、首位でこの学園を卒業した者に与えられる賞金と権利が目当てかな?それは私にはわかりませんが、あなたたちのご活躍を楽しみにしています」
深く一礼をし、アリスは後者へ入っていき、やがて姿を消した。
私はこの学園に興味がある。一体どのような学園生活が待っているのか、一体、どんな奴らがいるのか。今の生徒たちはどの程度の強さなのだろうか。あいつらは、どれほど文化を進化させてきたのだろうか。
そう思うと、胸が高鳴ってきた。
校舎に入って全員が各教室に入れられた。私はBクラスと書かれた表札が飾られている教室に入り、教卓から見て左奥の席に座った。
その後、先ほど自己紹介を済ませた、Aクラスの担任をする教師であるアルベルトが入ってきた。彼の手には、何かが握られていた。ただ、大きいこぶしのせいなのか、それともそれが小さいのかは定かではないが、彼の手には何かが握られているのがわかった。
彼はそれを丁寧に机へおいて、顔を上げた。
「それでは今からクラス分けをするべく、お前たちの能力値を計測させてもらう。これを見ろ」
そういって、アルベルトは机に手の平をおいた。
「この機械で能力値を図り、今後のクラスを決める。まずは私から見て一番右手前のお前からだ」
指名された男子生徒が目を見開き、体が震え始める。トップバッターの時の緊張はわからないが、よほど怖いものなのだろうと思った。
よろよろと、安定しない足取りで教卓の前にまでたどり着き、アルベルトの眼をじっと見つめる。
「機械に手をかざせ」
アルベルトのいわれるがまま、男子生徒が機械に手をかざす。しばらく手をかざし続けていると、機械の中にあるプロじゃクターのようなものが作動し、彼の能力値を映し出した。しかし、どうやら能力値は低かったらしく、男子生徒は半泣きになっていた。
しかし、アルベルトは気にせず、次。と一言だけ言った。
にしても性格が悪い。そう思いながら、私は彼の能力値を見る。
なんといっても、能力値がここにいる生徒全員に見られるなんて。
能力値は926と記されていた。
その後、数々の生徒が機械に手をかざし続け、やがて私の番に回ってきた。
「手をかざせ」
何回も聞いたアルベルトの声を聴き流しながら、私は手をかざした。
これまでの能力値的に、平均値はおおよそ3000程度。それを超えられればいいのだが...。
そんなことを思いながら、私は高揚していた。
しかし、結果は良いものではなかった。
機械は、810と記しており、このクラスの中でも最小値だった。
その時だった。一人の女子生徒が笑った。
「あんた、よくこの学園に入れたわね笑」
次第に、周りの生徒も笑い始める。気が付けば、教師であるアルベルトも笑いをこらえていた。
だが、私は表情を崩すことなく落ち着き払って席に着いた。
別に能力値がどうとかは、私には関係ない。私はただこの学園の生徒たちや、この世界のことを。だから、こんなことで落ち込むわけにはいかないのだ。
その後、クラスが発表された。驚くもの。喜ぶもの。悲しむもの、泣くもの。いろんな奴らが様々な言葉を言っている中、私は校門前に張り出されたDクラス生徒一覧表に目を通していた。そこには、私の名である『ディアディ』の文字が記されていた。
この瞬間、私は学園で最も底辺であるDクラスからのスタートを切ることになった。
反応が良ければ続編を作って投稿してみようと思っております。面白ければブックマーク等をしていただけると執筆速度が速くなるかもしれません。
次回はもっと面白い話にしようと励みます。応援よろしくお願いします!!