ごしじょう 二十五
俵 あさひ
赤と青が目立ちたくて目立ちたくてあれだけ頑張ってるのに、いずれかの色盲でも色弱でもない私は紫の光に目を奪われる。隅っこ好きな面がこんなところにも出たりする?それとも、見えないだけで紫外線というのがちゃんとあるから厳密には隅っこじゃない、と言い張ってる?
アスファルトすら割れるのにぴったり付いてるコレを一つと言わないのか。汗は病を表す。汗は、元気を表す時もある。水気は接着とお互い補い、赤方偏移と青方偏移の説明によく用いられる救急車は今度、等速直線運動を披露したらしい。嘘に判明されるまでは全世界の物理学者の睡眠が没収されるわ。
こちらしーちゃんは紫乃でむしろ赤で私こそが紫だから、ちょっとは速く歩かないと隣を守れない。生活体育とはこういうことなんだろうね、たぶんきっと。
「もぉかー、今日さぁ、学校終わったらどっか行かなーい?」
「いいよ、どこ行くの?」
「どこ行こー、えー?」
「決めないで言い出したの……」
どこでもいいんだけれども。日本内は当たり前、海外でも全然行くよ。宇宙?問題ない、いけるいける。高くて何十億円ぐらいでしょ?
しーちゃんのそばにいられるなら地獄以外はいいんだ。地獄に関しては、しーちゃんが堕とされるはずがないから。そもそも論外として。
「いーじゃーんよー。じゃーあー、えーぇと、なんか食べぇ行く?」
「いいよ。食べたいことあった?」
「や?ふっと思いついて、そのまま」
もちろん家に行きたいーとか、学校にいたいーとか、宇宙なんかとは真逆なこと言われてたら、それにも私は従った。私は推しに対して全肯定コメしかつけられない人なんだ。
手を離してると思いきや手の甲を引っ張ってくる。どしたの。
「痛くない?」
「うん、そんなに?」
左ダブルタッチで巻き戻され歩き直すも、すぐ次の広告にひっかかってしまって。がっかりだよ。プレミアム会員になりたいわ。
……いったいなんだったの。なんで引っ張ってきてたの。ゼロの痛みに何を掛けて私を痺れさせるの?こころを見せて、おねがい。
考え込むには倍速再生しても時間が足りない。引き続き次の動画に。教室に着いたらやや冷たい空気が私達を迎えてくれる。わくわくはまったくしない。暑さをわかっちゃって少々疲れるばっか。夏に朝日が喜ばしいわけがない。俵さんも共感してくれる、私信じるよ。
「もぉか」
「……ぅえ?」
いきなり歩きやすくなって。歩みづらくなって。
「今も、手、離したい?」
光が狂う。時間が流れない、少し、ほんの少しだけ。
「放さないよ」
バッテリーが切れたスマホのように。それから充電ケーブルに挿されたスマホのように、私は蘇る。
十一歩も歩いて、しーちゃんが覚えられないって言っていた事について語っていたと、やっと気づいた。しーちゃんねるの生配信はDVRが禁じられてて、過ぎたならもう二度とキけない。
「もぉかもぉか」
「うん」
「……なんでもない!っへへ」
溶かされちゃうよ私。スゴい光、吸血鬼にはキツいんだよ?
「なぁにそれ」
五指-上
御私情
五-四-乗