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ほらあぶる 二十二

 ノックに反射する犬は寝転びやめて飼い主(えさ)を心から歓待する。飯も血の味をしたデザートもお腹参りで仲間入りする夜10時過ぎ、一緒に住んでいるとはいえ、この時間にお互いを探すのはなかなか無い。かえってちょっと後なら寝る前のおやすみでも言うのに。


「どうかしたの?しーちゃん」


 大変にゃミリも思わない怠り億倍の意気込みを見せつけるようにため息が音声に混ざり、冒頭が窓から逃げ出すようにひっくり返る。心臓を台に載せたら逆様よりは安定に見えても、捧げた立場じゃ(よろこ)べないらしい。


「もぉか、映画見ない?」

「映画?いっけど、どんなの?」


 話してくれない。代わりかどうか、右手を上げた、みたい、ドアに遮られてほとんど見えないけど。あっちどっかを指してるのかな。手首の方向からは階段、リビング?行こって?頷いて了解を伝える。


「お布団持ってく?」

「……いいねそれ」


 雑に抱いて行くつもりを布団ごとに折り畳む。階段では踏み外しを気をつけながらゆっくりと下りる。Notflexの画像がテレビに映っている。


「え、ホラーじゃない?大丈夫?」


 エアコンをつけてソファーにばゎっと座る。次いでカップを持ってきて、横を取ったしーちゃんが気遣わしくて眺め続ける。布団なくない?いいねそれ言ったしてっきり持ってくるかと。


「う、だいじょばない、でも……」


 2年前かな、友達で映画見に行ったしーちゃんはホラーに決まっちゃっても抜け出すことができなく館でずっと怖がってたらしい。んっみたいなことなのかな。私は知らないけどどっかで話題になってるとか。


「いつでも辞めていいからね」


 主導権(リモコン)はしーちゃんにあって、そこは任せるしかない。奪い取るわけにもいかないし。

 ホラー映画っていってもしょっぱなからホラーはやらない。作品によるも10分から30分ぐらいは(すじ)をわからせる、作業(まえ)だ。

  どこで幽霊が出るなんかの風の便りがある。だから行ってみる。

 騒々しい事件が起きた。だから調べる。

 田舎に転入した。だけどなんだか周りの人達がおかしい。

 つかまれてどこかに来ちゃった。脱出したい。

 この映画は1番目のと似た感じ。こーゆー流れからはたいてい4番目のと同じくシンプル恐怖が強めだ。精神的恐怖のタグは付かない。

 たまーにふざけやがるのもあるけれども。


「ほんとにいけるの?」

「い、今まで全然平気だったしぅっ」


 なんも出てきてないから平気だったんだよ。いや、それでも結構震えてたぞ。平気のまま終われるを祈るも叶うことはない気がしてならない。

 恐れ抱かせる対象がいる所、この映画では隅の屋敷だが、そこに着いてもホラーが始まるわけじゃない。最初何分ぐらいは歩き回っていろいろ確認できる。ホラーの世界に入ったときに使えるtips(ヒント)である。


「……ぅ、ひぃ……」


 声漏れとるわ、もう。

 何度も思う、見られないなら無茶して見ないでって。たった一本の映画がどれだけ話題になってても、それ見なかったから話が通じなかったり爪弾きされたりはしない。もしもの話、これで弾かれたら、腐った集まりから抜け出す(あや)にしてやったらいい。

 すっごい握りしめてる、痛そう。しーちゃん爪短くはないし、痕出来ちゃうかも。今はそっちに気がつけられないみたいで、よかった……のかなこれって。どーかな。

 その手を覆い掴んで励ましてあげたい気持ちもある、しかし只今触れたらびっくりさせてしまうかも。最初から繋いでったら。ミスった。

 ホラー映画のホラーパートが始まるらしい。


「ひゅぁ、っぐ、ぇうっびあぅ……」


 こぉれはダメだ。迷いを画面向こうに投げ入れしーちゃんに話しかけるために口を開ける。せめて指一本、頼りになれたら。

 しかし私は話せない。話す必要がなくなった。

 先にすがってきたから、彼女が。布団越し、肩と腕を掴み頭も首近くに寄る。

 瞬間、危険を感じて私は私の魅惑された視覚と嗅覚を半分だけ殺す。()を見せしめとする。

 怯えながらも私を日傘にさせずテレビを見続けている。小さく優しく、だいじょうぶ、囁く。また、更に、もう一度、繰り返す。ずっと。


「寒い?入る?」

「……うん」


 魅惑されちゃダメ言いながら優しさをミミって(しん)を布に頼るに彼女を惑わす私は吸血鬼くらいも人間の心を持っていない。

 同じ布団に包まれその(なか)私にピヂっと付いている彼女を、っしても他無く(おも)わないこと。触覚は半分だけ生かす。()をお手本とする。

 このまま眠り姫にでもなってほしい、けど毎日のように月を日とさせて、たまには徹夜までしちゃう彼女が眠たがると思える?なんなら私が寝落ちしちゃう可能性はある。私には月は月だから。

 その時には潰した半分の(いしき)を蘇らせてでも起きなきゃ。あの屋敷に彼女一人取り残してたまるか。無敵時間も終わったんだよ。


「大丈夫、大丈夫。怖くない。そばにいる」


 全然大丈夫じゃないことを自分でもわかるだろう。それでも彼女が見続ける気なら私としは阻められない。まあガチで気絶しそうになったらそれは電気消したりしてやる、でもそもそもそれは事件で、嫌だ。

 ムリしないで100%損な関係は切り捨ててほしい、でも私の私だけの私のためだけの100%無理な願いなのはかの私もわかってる。

 彼女は広々交わって盛んに輝く(たいよう)であり、もとはブラックホールに引っ張られてはならない存在である。

 重力は弱すぎる力であって、手を繋ぐ余力がない。身体の左半分を貸してあげて、甘苦い現況を食う。カカオ何%なんだ。

 映画を見る暇も無いが彼女に集中しない逃げ場が前方以外与えられてない。もしかしてこれって睡眠を邪魔する拷問か何かなの?

 音は聞き流すと言う、場面はどこへと流せるか。ただ彼女に擦れないようにしないと。

 ふびっ、この音は流せないなあ。

 更けた夜の奇声は罪深い。さっきは、驚きすぎてちゃんとした叫びにもなってなかったけれど。

 完全に私にくっついて彼女はだんだんと懐に潜り込む。もうテレビは見るものじゃない。

 ちっぽけな(なみだ)が服に掛かって星になる。夜空は周る。26,000年に一度でも良いんだ。バカは治らなくていいから。


「眠くなったら寝ていいから。いつでも」


 眠ってくれ、と彼女を抱きつつ頭の上で囁き誑かす、どてっ腹の黒々なアレは、悪魔と呼ばれがちなアレではないかしら。少なくとも天使ではないことだけはわかる。こちらいらっしゃる天使様はダレに決まり切った。

 映画にさせられたら、どれだけぶっ壊れた格好になるのか、つい期待してしまうわ。

 あの幽霊なんかよりは明らかに暗い。

 天秤(あまのはかり)が測りに余るくらいには。

法螺-炙る

ホラー-振る

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