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あらいとて 二十

 人生楽しそうな人が目の前からうろうろしてる。声かけたいなら早くかけてほしい。かける気ないなら、どっか行ってほしい。マジ騒がしい。

 べつに限界に近づいてもないけれど離れたいという一念で花畑に入る。さすがにここまでは追いかけないみたい。まず菊川さんに助けを求めといて、運命(カオス)に立ち向かう覚悟を決める。手は洗っとくか。水だけかけとこう。


「何の用でしょう」

「ほんとに入ってこないつもり!?アタシ拗ねるっ!」


 子どもですか。

 ご自由に拗ねてくださいませ。文理部なんかごめんに決まってる。

 よけいに何か言っても言われ倍々になるばかり。口を黒四角とごまかして目も合わせず一方的なバイバイを決めようとする。


「あ、もぉか!探したよ、もー。なーにやってんの?みんな待ってるからね?」

「……え、しーちゃん!?」


 呼んでもないのに一番願ってやまない助けが来ちゃった。嬉しい誤算に思わず光源になっちゃいそう。だめだめ。今泉先輩に隙ありをやられたらどーすんの。心臓にアイロンをかけて飛ばないように片付ける。


「う、ごめん、手洗ってたの。5分間」

「はーあ?あたしでもそれはおかしいってわかるよ?」

「4分59秒だっけなー」

「もーぉーかー?」

「では、行ってみます今泉先輩。おかげさまでちゃんと洗いました」

「え?う、うん、2学期には入ってね!約束だよ!」


 あらあら。マイフェイスな人も自分フェイスを掴めないぐらい荒らしたらあわあわするんだ。いいこと知ったー。これからも使って……使う場面が無いことがなによりなのにぃ。


「ありがとしーちゃん。どーやってわかったかなぁ」


 4分59秒の水がまだ乾いてない手でしーちゃんの右手を独り占めする。


「……もぉか、なんであたしには送らなかったの?」


 なんで、って言われたら災害がやってきたからだろう。けど、そんな答えはいらないよね。見ればわかるし。


「しーちゃん、演技下手でしょ。ずぶとい菊川さんなら悪霊退散してくれそー、ってことで」

「悪霊って……」

「そーだそーだ、しーちゃん、何があったの?名演技でびっくりしたよー。もしかして才能の開花ー?」


 バレはしてもバレバレではなかった、と思いたいけれど。一瞬声上げちゃったよ。

 しーちゃんの形状に演技能力までメッキできたら業界が光源の目でやってくる。国民的女優まであと何歩?アメリカ着いたらたまに連絡はしてよ。


「そんなそんなー」

「じゃーあ?」

「菊さんが、こー言っとけば良いってー。あたしはただオウムっただけ」


 はあ。菊川さんに助けて送ったことをなんでしーちゃんが知ってんだろっ、ちょっと考えたけど、その菊川さんから情報が漏れたみたい。やってくれたね菊川さん。


「その先輩前も来てたよね?」

「うん。なんかー、どうしても私を文理部に入部させたいみたいで」

「入ったほうがもぉかにはいい気がするけど……」


 一般の人生なら優秀集団に足片方かけとけばきっとどっかでは役になる。しかししーちゃんから力を貰う私としては厄介になる。ウザいにウザいをかけないでよ。

 必須栄養素を追放してサフランを注ぎ込んだらどんなグルメができる、ってことだ。


「興味ないもん」

「もったいなー」


 真にもったいないことはしーちゃんとの時間なんだよ。

 失った4分59秒を返して。

洗い-と-手

アライ-とて

亜ライ-とて

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