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あんたれす

 うっかり夢オチに進んじゃった中にも熱に寒派を熱心と布教してたエアコンをやっと休ませ窓に丸投げする。朝早くから太陽は陽キャて、脳みそはもそもそする。4時間は寝た?へとへとで、頭割れた。ただ1日でこれなのに、しーちゃんはほぼ毎日『やこうぐらし!』録ってるよ。どうやって学校通ってんの。私だったら退学されるまで欠席だよ。学歴なんか知らない、身体が大事。

 まだ机の上を飾ってるソーイングボックスと「タペス」まで出来たタペストリーを、定位置(ひきだし)に運んで、お布団は簡単にだけ叩く。27℃ではずっと寄ってくる夏の空気にずっとずっと耐えきれなかったようだ。6月にこれだから、今年は苦戦しそうじゃない?何十年ぶりの猛暑、某時期以後最高温度的なニュースに今も接し続けられている。

 暑くさえなければ夏だって良かろうに。暑くない夏はない。南半球じゃあるまいし。

 部屋から出てはしばらくのお花見、からの、そちらを花畑というのだったら連れて草原って呼べる場所で、風呂に水を溜めさせといて(はざま)にスマホをいじる。東瀬さんの厄介なチャットはまだ確認しないように特に注意を払わなければならない。

 熱い水にはまったく勝てない。適当に洗ってから温かめのちょうどいい感じに落ち着いた湯に身を托す。

 睡眠に負けたら水面に埋もれる。降伏の期を探る目に名誉なる戦死を命令することで眠気を撤退させようとする。空色ん蝶さん、ゆらゆら空へと。

 お風呂が終わったら米を研ぐ。何を作るか決めてなくてもこれでさえ始めたらなんとかなる、はず。私はパンも好きだしなんなら米無しの生活にも困らないが、だからといってあるものを使わないとか、やり込みにも程があるよ。

 要は異世界で米の無限詠唱に収束しないこと、それだけだ。それはそして味噌でも醤油でも、んないとプリンやチョコレートだって。

 しーちゃんにとっては、なんでも丁寧に食べてくれるから。しーちゃんの嫌がる食べ物って、(かっら)すぎるものぐらいかな。そこまでになると体にも良くないから嫌がって当然でむしろ嫌がってほしいわ。

 なにが食べたい、ってよりはこんな系が食べたい、の感覚で今日の特選メニューを決めていく。自分よりなのは仕方ない。嫌なら起きなさい。

 今は冷たくないものアンド軽いものが口に合う気がするな。

 ただ、温めたものはしーちゃんの起き時が一生の悩みどころである。熱をかけ直すのは可能だけどそれは違う、説明難しいけどなんとなく違う。

 テーブルに全ディッシュ置いといて、部屋に帰って窓から代理権を没収し、すぐエアコンに頼る。お布団がライン同盟なベッドに亡命し、後回しから追いついちゃった苦心に苦しみ始める。

 今日はしーちゃんの顔にちゃんと向き合える?

 朝の吸血は飛ばしたほうがいいよね、きっと。

 無かった事にするといって記憶までは消せないわけだ。なんならかえって頭回(とうかい)にはっきりと刻んじゃったぐらいだ。(あたま)が痛い。寝不足のせいで。

 平然と(かっこう)つけれるのこれ。この人ってあんなに厚かましいくせに何故厚顔無恥にはなれないんだろ。たぶん人だからである。吸血鬼にでもなるがよい。

 人としては人間性が足りてない気がするが。

 ならば体温を10℃だけ下げてみせるのだ。

 あたまぁ。

 エアコンにバイバイ宣言してキッチンに戻る。冷蔵庫を開き、なんの考えもなくぶどうジュースを取ろうとして、失敗したことをわかったからウォーターサーバーに逃げる。氷水は夏に具合良いが朝には合わないらしい。またしても痛いんだ。寝不足のせいで。

 なんでも寝不足のせいに回せるから体の悪い分頭ん中は楽かも。頭痛いけど、寝不足のせいで。即落ち。

 しーちゃんを待ちながらもまだ来ないでぇほしがる恐れが共存する。おそらく少し経ったら黒に襲われる。

 黒に染まれ灰色になる私はしかし白とも距離がある。物理法則から脱皮する。色の混ざりと光の混ざりがあることに私は第3の混ざりに混ぜたがる。

 脳みそを回せば回すほどネガティブに落とされる。秘薬(さいほうぐ)を持ってこよう。薬も飲みすぎると効きが悪くなる、でも依存しない道がない、一本道に見えて。

 そして、その日んその他いつの日と同じく、足音を聴き、ふっと顔を上げる。まだ心の準備ができてない。でも言わなきゃ。


「しー、ちゃん…」


 おはようを、言わなきゃ。


「もぉか?どした?」

「うっ、なんでもな、い、から」

「…そぉ?ならいっけど。あ、もしかして寝れなかった?あくび我慢してるとか?全然いーよ?我慢しなくて」


 しーちゃんの言う事に乗って顔を隠し、盛大にあくびを、含む。涙は自然通りなだけ。ハンカチ持ってくればよかった。


「もぉか」

「うん」

「よし、おはよっ」

「…うん、おはよう。ちゃんと寝たほうがいいねやっぱ」


 やっと笑える。やっと。

 湿潤な目の縁をティッシュにでも拭く。化粧していたら今頃険しい格好になっていた。今だったら違うの?


「そーだよー。もぉかはいい子だからさ、早く寝ないとね」

「なにそれ、おばあちゃん?」

「おばあちゃんじゃよ?あーりゃいい子んじゃのー」

「うちのおばあちゃんもそんな言い方しないわ」

「うちもー」


 きっと、笑いすぎて涙まで出てるんだ。哀しくない涙を私は歓迎する。


「なんか飲む?」

「あぇーなにあったっけ。いや、自分で探すわ」


 コレを呑むことで3日は堪えられる気がする。

 いや、この3日間飽きるぐらいたくさん呑んだわ。で、私、乾くばかりだった。つまりは正気じゃないね。

 冷蔵庫から離れウォーターサーバーへと動いたしーちゃん辺りをちらちら盗み見る。

 氷水は冷たかったけど覚めるまでではなかったよ。

アンタレス

貴女レス

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