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やむきかい

 デジタル時代の写真はたった1枚に限らない。他の人に送っても自分のデバイスにそのまんま残り存在をアピールする。

 すでに1回送った写真でもあちこちよじれるし、それもまた送れるわけだ。

 漫画風で吹き出しの中に、私には知能の溶けたセリフ、しーちゃんには、決してしないであろうヤンキーなセリフを入れ込んだひどい編集写真が1枚、余計に可愛い手書き文字と飾りのステッカー、とにかく明るい系フィルターの使われたシュールヘンな編集写真がまた1枚。

 肖像権を唱えたい。唱えるべきだった。

 4枚目で、繋いだ手と、腕、体の横少しだけ見えるようにカットされた写真。それもそれなんだけど。

 その下、1行2個のテキストがそれはそれは厄介なものであった。

 NEW・脚本が、で1行。

 百合になりそー、で更に1行。

 最後の写真を送ってから秒でチャットも届いたから私たちの写真をネタとして扱ったわけだ。もう悪意しかない。

 顔だけは映さなかったっていう最終編論であり事後報告であるのだろう。大事だけど大事じゃない。しばらくは東瀬さんと絡みたくない。無理だよね。無理だけど嫌だ。

 わざわざ帰る前にお花摘みの嘘までついて確認するもんじゃなかった。

 吸血鬼は写真にも写らないね。憑依されていたかった。昼と同じような放課後の空を拒否して顔として陰を建てる。


「しーちゃん」

「うん?どぉした?」

「手、離したほうが良いのかな」


 隣を守っていた足元が止まって私も連れにエンジンを止める。一歩強からとぼっと振り向く。


「なんで」

「気をつけたほうがいいかな、って」

「なんで」

「いや…そんな気がしたから」

「なんで」


 エンジンは止まったのになぜ機械は回ってるのか。おかしいな。暴走の予兆だとはまったくも思いつかないわ。愛の逃避行でもない逃避でとうとう飛行してしまう。

 すると道理で今も盛んに回ってる歯車にはめられるに決まってるわけで。


「もぉかはなんでいつも全部を言ってくれないの?」


 湿潤な分生々しい目がなぜか死んだようにも見える。たぶん私の目が死んでいるだけだと思いたい。


「…なんでもない。ごめん、忘れて」


 焼け大気を飲んだように苦しむしーちゃんの息音が明らかに過速してる白い車を覆す。

 何があなたをそこまで追い詰めた?

 私だ。他でもない私なんだ。真っ先に苦しむべきの人は。

 染みるほど寒くて、この熱さはさぞ幻覚だ。零下30℃の寒波が迫ってくる。

 三寒四温みたいに、3日病んで4日生きたらこの状態だ。

 またあの3日の仲に返ってしまうの?吹雪に覆われたら何一つなくただの真っ白だ。

 それだけが避けたくて。


「しーちゃ、ん…!ごめん、ほんとにごめん!私を捨てないで!お願いだからっ!」


 何が「ごめん」なのかもまったく理解しないで、先に手を離そうとしたのは自分だったことすら忘れた私は、白よりも白になる。

 万年雪を黒い心臓にまき散らかし『ナミダ』と名付け、たちまち全部を投げ捨ててしがみつく。

 非常に滑稽な様であるに違いない。

病む機械

止む機会

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