へんどうし
今お昼の時間なのにもう私はノルマを達成しちゃった。もっかい、は私には当然何よりだがしーちゃんには普段以上の負担だ。
邪魔者だけいなければ久しぶりに教室でのお昼を楽しむが。
「1時間も帰んないとは。なにしてたー?」
「ケビョー」
「えー」
「何がえーなの。仮病して何が悪い」
授業中に帰るのもアレで保健室に突入してしーちゃんの言葉だけ聴いてたから実際そんっな違くもない。
聞いたところしーちゃんが講堂兼体育館に残ったのが菊川さんに誘われたからだそうだし、そりゃ言葉通り信じるわけがない。
「いや、仮病だって間違いだからね?」
「拉致だって間違いなんですが」
「私の拉致は優しい拉致だしぃ、日南の仮病は悪い仮病なーのー」
ひどすぎる自分勝手の論理にうっかり出るところだった不満を停める。何の意味もない口喧嘩を続くよりはしーちゃんのことを観ていたい。
「それにどーせ仮病でもないっしょぉ。しのっちー、二人でなにしてた?どこまでいった!?」
「こら、変な考えすーな」
「ふうん、変な考えなんだね」
あ。もう不満など言えない。出せる言葉がない私は黙秘権ででも行使するが目でなぶられるしかない。
自分の間違いばかりてその分よりぎくっとなる。背中が貫かれるからやがて黒を消す。菊川さんに全部なすりつけよう。うん。
「菊さん、あたしたちやじりたくてあたしに行ってみてと言ったの?」
「うひゃー天然しゃんこわーい」
「…それって答えなの?」
「こわいこわーい」
少しも負けない菊川さんを、無性に感情をちょこんと入れてそっと押しながら立ち上がり、教室から出る。初めっからもう吸血済みだっつって数字型パズル部の部室を度外視した私が迂闊だった。菊川さんに限らず別のハイエナもいるのに。
後ろからとことこと追ってくるらしい特徴的な足音が聞こえてくる。しーちゃんだと案じて、手を伸ばしながら振り返る。
「ひーなみーしーのっちー」
しーちゃんと繋がる直前菊川さんの声が割り込む。間違えたら感情をもう少しだけ込めるかもしれないぐらい私はほのかな赤をしている。しーちゃんに顔を見せたまま白く燃える目だけ菊川さんへと向ける。
「…なに」
「や、仲直りおめでと、って」
いっぱいためた息をため息でしか出せない。また毒はおまけに抜ける。
「さっきは失言してごめん。…行くよ、しーちゃん」
優しく手を握って菊川さんに背く。
返事は聞かないほうが気まずくならない。お互い望んでないと思う。
変同士
辺-瞳子