第一章【個人迷宮】 拓次、早々に先生との約束を破る。
多分、俺は圧倒的に情報が足りていない。
由芭も建助も境田先生も、皆一様に「知っている」前提で話していた。
恐らく、「チュートリアル」というので学んでいるのだろう。
しかし俺はなにも知らない。
「迷宮」だとか【ファーストスキル】だとか、さっきまでいたあの場所だって、どういうものなのかわかっていない。
しかもだ、今さっきラインで聞いた話だと建助や由芭は普通に「世界迷宮サイト」を開けるそうだ。
「お知らせ」や「情報まとめ」を見れば様々なものの詳細がわかる上、掲示板のようなものもあるらしい。
スクショか何かを送ってほしいと頼んだら、「世界迷宮サイト」以外にその情報を載せれないと断られた。
どうやら天罰がくだると神に言われたらしい。
みんなは今朝、一斉に変な宗教にでも入ったのだろうか。
「動画とかないかな」
かーみーさーまーとか言ってたりして、、。
「、、。」
そんな感じのタイトルの動画があるにはあった。
しかし、ヒットした全ての動画が「世界迷宮サイト」のもので、開けない。サムネも黒塗りでなにも見れない。
「何で俺は開けないんだよぉぉ!」
あまりに理不尽ではなかろうか。
「いっそのこと迷宮に潜りてぇ」
今朝は「迷宮」に臆していたが、今は違う。
あの「未知」が、あの興奮が、忘れられなくなっている。
戦闘狂にでもなった気分だ。
〈個人迷宮に挑戦しますか?〉
〈はい〉 〈いいえ〉
「え?」
迷宮に行ける、、?
そんなの行きたいに決まってるじゃないか。
行こう。
もう一度、あの場所へ。
それに情報が少ないのであれば、現地に向かうのが一番手っ取り早いだろう。
うん、そういうことにしよう。
「」「」「」「」「」「」「」「」「」「」
リュックサックには水筒、昼食の炊き込みご飯を丸めたおにぎり、地図を書くための文房具。
武器は、ゴブリンのナイフでは頼りなさそうなので、深夜テンションでポチったサバイバルナイフを使うことにした。
そうですよ無駄な買い物ですよ。
「こんなもんかな」
迷宮に潜りたいでーす!板さーん!お願いしまーす!
〈個人迷宮に挑戦しますか?〉
〈はい〉 〈いいえ〉
出てきてくれた、、。
「ポチッとな」
今度も落ちるのかと思っていたが、予想とは裏腹に、眩い光が身を包みこむ。
「眩しっ」
光が収まるともう迷宮に着いていた。
迷宮から帰った時と同じ感覚。
あの眩しさには早々に慣れるべきかもしれない。
そういえば、ここは前回落ちてきた場所と同じ場所だろうか。
「しくじったな、マークになるものでも持ってくるべきだった」
どこまで続いているかもわからず、変わり映えもしないような迷宮じゃ、地図を書いても徒労に終わるだろう。
「今回はマッピングをするのは断念しよう」
「情報収集が第一だな」
ぶつぶつと独り言を吐きながら今朝と変わらない殺風景な場所を見回す。
ここはダンジョンみたく二層目とかあるのだろうか。
「さて、奥へ進むとしy、、」
何かの気配を感じた。
恐らく敵だろう。
これがスキル「索敵」の能力か。
改めてステータスを見返しておいて良かった。
じゃないと、この気配が何かわからなかったばすだ。
「向こうにゴブリン、、」
一体だけなのは好都合。
しかも後ろを向いている。
奇襲一択!
ゴブリンの方へと一直線に走る。
スキルでも試してみようか!
くらえ!突き刺し!
ザクリと肉を刺す感触がした。
しかし、、全く効いた気がしない。
「これ、スキル名は声に出すのか?」
「ギィッ!」
ゴブリンは、振り向きざまにこちらに短剣を振ってきた。
後ろに避け、前へ踏み込む。
「振りが遅いのは分かってるんだよ!」
「突き刺し!!」
そう叫んだ途端体が熱くなり、ナイフはゴブリンの前腕を貫いた。
「これがスキル、、」
すぐさま引き抜き、力のままにナイフを2度上下に振る。
「深夜の無駄遣い切り!」
今度は肩に切り傷をつけた。
致命傷にはなってなさそうだ。
「グギィッ!?」
ゴブリンが驚いた顔で顔を上げる。
「ここぉ!」
「突き刺し!!」
今度は喉元に刺す!
すると、奴は虚しく散った。
「っしゃ!」
前程緊張せずに済んだのはよかったが、
「深夜の無駄遣い切りて、、」
この状況でまた無駄口を叩けるとは思ってなかった。
「というか、ずっと俺のターン!、、だったな」
恐らくゴブリンは弱いモンスターなんだろう。
所謂雑魚敵。
正直、ここで出てくるモンスターがあいつだけなら興醒めする。
「もっと奥へ進むか」
もちろん左に沿っての鉄則で。
〈称号【ブルーなアイのホワイトなドラゴン】を獲得しました。〉
次回、《オリジナルスキル》がつよつよします。