第三章【最奥へ】 正気とはなんですか。
「ひとまず車の中でお話しさせてもらっていいかな」
警察手帳を掲げながらそう言う。
「取調室とかじゃないんですね」
「犯罪は犯してないからね、連行はできないんだ」
なるほど。
ちなみに、俺と話しているのは細身なおじさんだが、後ろの二人はゴリゴリのスキンヘッドマッチョだ。
3人とも優しそうな面相で、怖くはない。
、、なんで全員革ジャン着てるんだろう。
「今回は例外中の例外で、僕らも少し困っていてね」
後ろのゴツいおじさん二名が「うんうん」と頷いた。
コミカルな動きで頷くので、少し親近感が湧く。
「カメラをどかしながら行くけど、映ってしまわないように、一応下を向いておいた方がいいかも」
「わかりました」
「、、一度落ち着くまで待とうか?」
「だっ、、はい、大丈夫です」
急に心配されたので、少し戸惑ってしまった。
何も問題はないというのに。
車に乗り込むまでの間、激しいフラッシュを浴びた。
「なぜ迷宮外にモンスターが!」
「称号の獲得はどのようにして?!」
記者たちの叱りつけるような声に、自分が重い罪を犯したような気がして、気が滅入ってしまいそうだった。
実際、窓割ってモンスターと出てきた変なやつではあるけれども。
──俺はどうなってしまうのだろうか。
まだ、この世界に起きていることを理解することもできていないのに、この事態である。
なんだか自分が黒煙に包まれている気がした。今それを自覚したと言ったほうがいいのだろか。
少しだけ、ほんの少しだけ自分が今まで倒してきたモンスター達と重なった。なぜだか俺も、塵になって消えてしまうような、、
バタンとリアドアが閉まる。ようやく自分の体が震えていたことに気づいた。
「はっ、はっ、、!!」
息が荒々しい。
耳鳴りがする。
胸の真ん中がぎゅっと苦しい。
腕の力がするりと抜ける。
洗い落としたはずの血が、腕にべっとりとついて見えた。
その時、俺は気を失った。
〈称号【正気の沙汰】を獲得しました。〉




