第三章【最奥へ】 恐れる心。
視点があっちこっちにいってて本当にすみません。
20xx年10月11日7時30分
世界が変わってから一夜が明けた。
(挑戦迷宮「かんたん」 1層目)
「弾数残り僅かです!」
大半の生き物は銃で撃たれれば死ぬ。
体を貫かれれば尚更のことである。
「このまま後退すんぞ!」
しかし、迷宮に現れたモンスターはそうでなかった。
後に判明するそのモンスターの名は、「スライム」。
休むことなく撃ち込まれる弾丸に押されながらも、怯まずに前進し続けている。
その数、100体以上。
「チッ、、俺がスキルを使う!合わせて走れ!!」
そう叫びながら男は、短剣を手にした。
射撃が止まる。
「参ノ剣撃!」
男は大振りに短剣を振った。
衝撃波が三度飛ぶ。
スライムの数は減った。
しかし、
「敵数が多過ぎます!!」
焼け石に水と言わんばかりに、スライム達の勢いが治ることはなかった。
「んだよこいつらぁ!」
「いらねぇもんは捨ててけ!」
銃を捨て、逃げ道の方へ走る。
障害だった弾幕から解放されたスライム達は、更なる勢いで迫ってきた。
「僕が出ます!」
「呼号!雷斧!!」
逃げ道に背を向けた男は呼ぶ。
すると、男の手は、装飾の凝った斧を握っていた。
「くらえぇ!」
斧を振るう。
衝撃波。
かなりの数のスライムが吹き飛ばされた。
「やるじゃねぇか!」
もう一度、斧を振るう。
衝撃波。
またスライム達が吹き飛ばされた。
そして、、、斧を振るった男は倒れた。
「はぁ!?」
「SP切れかと!」
「誰か神田を抱えてけ!!」
「クソッ!こんなの人間が戦って良いもんじゃねぇ!」
「全力で走れば追い付かれることはねぇはずだ!」
「抵抗は考えんな!走ることだけに集中してろ!」
全員、返答代わりに足を早めた。
ーー怖い。
ーーーー何でこんな。死にたくない。
彼らの恐怖だけが加速していく。
実の所、彼らが連携して【ファーストスキル】を駆使すれば、一層目ならなんとか攻略することができる。
だが、心の方はそう簡単にいかない。
称号【迷宮到達】の[迷宮内での恐怖耐性(大)]は、新しい環境に対して恐怖感を抱きづらくなる程度のものだ。
いくら過酷な訓練を経験してきた者であっても、殺しにかかってくる得体の知れない化け物に恐れず、冷静に連携をとって戦うのは困難なことなのだ。
ましてや一人で戦うなぞ──
20xx年10月11日6時00分
(東京タワー)
世界各地に、挑戦迷宮「かんたん」が出現した。
「かんたん」は日本国内でも発見された。
その入り口は、東京タワーの一階であった。
元あった扉は消え、代わりに、異質な光が漂うナニカになっていた。
高さは3メールほどで、横幅は80センチ程度。小さくした銀河のような見た目である。
しかし、誰もそれに違和感を覚えはしないのだ。
入り口には、調査に来た自衛隊員らの姿があった。
「ここか、、」
隊員の一人が異質に歪んだ空間に近づくと、ボードが表示される。
〈挑戦迷宮「かんたん」に入りますか?〉
〈はい〉 〈いいえ〉
「入り口を確認しました!」
「了解。準備したらさっさっと入るぞー」
この隊員らは、元より戦闘能力が高く、それに加えて強力な【ファーストスキル】を授かった者達が集められた精鋭部隊である。
人数は13人。
全員銃火器や、【ファーストスキル】に対応した武器などを装備している。
周囲の道は封鎖されており、彼ら以外の人間は見当たらない。
「人が多いと喧しいが、いないとなると寂しいもんだなぁ」
中老程のガタイが良い男が、昨日が初対面である部下に話しかけた。
「佐嘉将官、良く無駄口叩けますね、、」
「そうでもしねぇとやってけねぇしな」
ーーこの調査で命を失ってしまうかもしれないから。
誰もそうは口にしなかった。
少し重たい空気がそうさせた。
「神田1尉もやっとなごんできたじゃねぇか」
「だと良いんですけど」
そう言いながら、携帯していた電子機器たちをケースに詰めていく。
「せっかくデジタルに慣れてきたってのによぉ、、」
電子機器は迷宮内では使えない。
このことは、全人類がチュートリアルを受けたことで、今や誰もが知る一般常識になっていた。
もちろん、一人を除いての話だが。
「アナログなもので対応することになりましたもんね」
「ちっこいメモ帳になに書けってんだろうな」
「会議の話聞いてました、、?」
ーー。
「パーティを組み次第中に入るぞ!」
佐嘉はボードを使ってパーティ申請を出した。
〈パーティ申請 佐嘉 渉〉
〈承諾〉 〈拒否〉
部隊の全員が〈承諾〉を押す。
佐嘉が入り口に近づいた。
〈挑戦迷宮「かんたん」に入りますか?〉
〈はい〉 〈いいえ〉
「かんたん?なら気楽なもんだ」
佐嘉は、全く気楽とは言えないような面持ちで〈はい〉を押した。
〈称号【自衛隊にわかのなろう作家】を僕が獲得しました。〉
〜なぜパーティを組んだのか〜
パーティを組んでいないと、別の迷宮に転移してしまうから。
別サーバーの迷宮に行ってしまうような感じです。
後々作中で出す予定ですが、先に出しておいた方が良いかなと思いましたので。




