第一章【個人迷宮】 迷宮到達
(20xx年10月10日8時00分)
朝のアラームが鳴った。
「んぁ、、」
眠い、、、。本当にゲームで夜更かしするのはよくないな。
高校に入学して早々に一人暮らしを始めた俺には、俺を起こしてくれるような人はいないのだ。
というか、そんな奴がいるとしたら、盗人か幽霊の二択である。怖いね。
「気を引き締めないとな」
そう呟いてみるものの、ゲームをやめることはできないだろう。
ちなみに今は死にゲーにハマっている。ダークなソウルが騒ぐぜ。
ひとまず空気を入れ替えようと両開きの小窓を開ける。ささくれないように気をつけながら、、。
「グググ....」
年季の入った窓は、やっぱりかたくて開けづらい。
バキッだとかゴトンだとか、心配になるような音を立てながら窓は開いた。
力んで疲れた腕を振りながら深呼吸をする。
空気といい食べ物といい、新鮮なものはやはり気分が良くなる。
だというのに俺の部屋は、、、。
古い。兎にも角にも古いのだ。
歩けば床は軋み、埃が立つ。
家具はアンティークっぽいものばかり。
変な収納スペースには謎の物品が山積みにされている。
あと屋根裏部屋で夏は暑い。
埃は掃除すればいいと思うかもしれないが、掃除なんぞするだけ無駄なのだ。
埃くんとの格闘だけで分厚い本が一冊かけるくらいには頑張ったものの、その全てが徒労に終わった。
ん?窓を開けた後の景色?
壁だよ。壁。
我が家も新築ブームに呑まれたのだ。
まさか山の上までも呑まれるとは思わなかった。
もう一つの窓は綺麗な街景色が見れるが、、開かない。もぅガッチガチ。
ーー。
学校へ行く準備を終え、そろそろ朝食を取らねばと、少しよれたネクタイを弄りながらリュックサックを右肩に掛けた。
隠し扉を開け、どっしりとした重みのある梯子をかける「屋根裏部屋シリーズ」の中でも比較的新しいであろう梯子はある程度加工されており、つるつるしている。ささくれなんか気にしなくてもいい程に。
梯子をかけた後、慣れた動きで素早く降り、隠し扉をしめた。
リビングのど真ん中に降り立った俺は、埃の少なさに少しほっとする。
この家は屋根裏部屋と一階との差が酷い。
屋根裏部屋は開かない小窓とかたい小窓しかないのに対し、リビングは一面ガラスでオーシャンビュー。
ところどころ歪な木造部屋に対し、白色基調で整ったリビング。
一つしかない古びたコンセントに対し、様々なところに配置された錆ひとつないコンセント。
と、挙げればキリがない。
聞いていて勘付いたかもしれないが、俺は一軒家で一人暮らしをしている。訳あってのことだ。
さぁ、朝飯食って学校行くか!
──それは、玄関で靴を履いている時だった。
聞いたことのない、凄まじい地鳴りがした。
「む?」
音と共に家が揺れる。
「おっと?こりゃヤバいかm...」
違和感を覚え、下を見た。
床が、、ない、、というか落ちてる!?
ふと上を向く。
遠くに離れた見慣れた玄関の天井、、。
「うお」
周りが暗くなる。天井が見えなくなるほど落ちていく。
〈称号【迷宮到達】を獲得しました。〉
「は?」
目の前に板らしきものが出てきた。
迷宮到達??
下をもう一度見る。そこには、地面!!
、、。
立てたぁ!?
普通に着地できた。
意味わかんねぇ。
ひとまず、一緒に落ちてきた靴を履く。
どこ、ここ?
周りを見ると茶色のレンガでできた壁。
しかもこれ通路っぽいな。
奥の方までなぜか明るい。
、、。
「よし、進もう」
今は進むしかないだろう。
念の為水筒を武器がわりに持っておく。
何が出てきてもおかしくないからな、、強盗やらなんやらが…なんか向こうにいらっしゃるなぁ。
「ギャギャって言ってるぅ、、」
緑の色した小さいバケモンだ、、人型っぽい。
ゴブリン的なやつだな?
キメェぞあいつ。
手に短剣?的なの持ってるし退散たいさn
「ギャッ、、ギィヤァッ」
こっちきたぁぁぁぁぁぁ!!
待て待て落ち着けこっちにはちょっと長めの水筒がある。
あっちには刃こぼれしてそうだけど剣がある。
「あれこれ無理ゲー!?」
奥に逃げたってなにがあるわからないし。逃げ切れるとも思えない。
戦おう。多分、夢だ。死んでも目が覚めるだけ。ゲーム好きな俺にとっちゃ楽しまにゃ損な状況だろう。
なんせ、プレイキャラに俺がなれるんだ。
、、死にゲーの主人公とかは勘弁してほしい。
くらえ!!ぞうじるしアタッーク!!
「どりゃ!」
キモイやつの頭にクリーンヒット!!
よっしゃヘッドでワンパn
「ギィエェッ!!」
とはいかなかった。
しっかしこいつきもちわりぃ。知性がまるで感じられない。人型ながらも、動きが獣みたく感じる。
緑野郎が起き上がり、こちらに短めの剣を振りかざす。
振りが遅い、、避けられる!!
横にずれ、もう一度水筒を振りかざす!!
「まだまだァァァァ!」
叫ばないとやってけねぇ!SAN値が無くなっちまう。
もう一度、今度は腕に!!
「ギャッ」
緑野郎はたまらず、短剣を落とした。
「貰いぃぃ!!」
すかさず奪う。当然、緑野郎は怒りを露わにしている。
だげど、
「問答無用!」
緑野郎の胸に刺しこむ。
すると、奴は悲鳴をあげてのように消えていった。
〈称号【ファーストモンスターキラー】を獲得しました。〉
勝った、、よな。
板がまたが出てきた。
この称号とやらはなんなんだろうか。なんだかゲームチックでテンションが上がる。
「はっ、はぁ、はぁ」
キラー、、ってことは倒したんだよな。
あの緑野郎を。
「ぜぇ、はぁ、はあ」
、、、、、この板邪魔だなぁ。
あっ消えた。
「はぁ、はぁ」
さっきから変に息切れしてるし、少し休もう。
水を飲もうと、水筒を見る。
奴の赤い血が付いていた。しかし、恐怖はあまり感じない。
何だかホラゲをプレイしてる時の感覚に似ている。
ーーーー。
喉に感じる水の冷たさ、、。
あぁ、薄々気づいていたが、どうやら夢ではなさそうだ。
ドバドバ出まくりだったアドレナリンが薄まってきたのか、少し冷静になってきた。
この状況、非常にまずい。
スマホは当然の如く圏外、、というよりそもそも機能していない。
もっているのはリュックに入れられた、文房具と教科書に、ノートのみ。
え?食料はどうしたって?お弁当は購買派なんですよ。
「どうしようか、、」
さっきと同じだ。
止まってたってどうにもならない。
もっと奥へ行こう。
さっきの緑野郎を警戒し、短剣を握りながら進んだ。
時折止まってノートを開き、道を記録していく。
左にそって進むのが鉄則ってどこかで見たのでそれで進む。
1時間ほど経ったころ。
一際明るい場所を見つけた。
鉄則を破り、そちらへ向かうと、大きな結晶のようなものが浮いていた。
「ここだけ部屋みたくなってるのか」
扉はないものの、他の道とは区切られている。
結晶に近づくと、また板が出てきた。
〈迷宮から外にでますか?〉
〈はい〉 〈いいえ〉
もちろん〈はい〉だろう。これ押せばいい?
「ポチッとな」
〈今回の精算を行います。〉
「ん?」
➖➖➖➖➖➖
ネーム:天田 拓次 アマタ タクツギ
〜ステータス〜
lv:1→2
HP:15/15
MP:10/10
SP:30/30
歩みの証:1
攻略の証:0
職業:無職
個人迷宮:《特殊迷宮》「想いと試練と」
〜迷宮効果〜
[スキルの習得率上昇(超特大)]
[アイテムドロップ率低下(特大)]
[オリジナルスキル習得可能]
(別の迷宮内にも適用)
➖➖➖➖➖➖
〜討伐モンスター〜
・ ゴブリン lv:03
〜ドロップアイテム〜
・なし
〜スティールアイテム〜
・刃がこぼれかけた短剣
➖➖➖➖➖➖
〜スキル一覧〜
【アタックスキル一覧】
《オリジナルスキル》
new‼︎「ぞうじるしアタック」消費SP:2
[クリティカル確率アップ(極小)]
(ぞうじるしでのみ使用可能)
(任意発動)
《ノーマルスキル》
new‼︎「突き刺し(弱)」消費SP:5
[貫通力アップ(小)]
(先端が鋭利なものでのみ使用可能)
(任意発動)
【サブスキル一覧】
《ノーマルスキル》
new‼︎「索敵lv:1」
[気配察知能力上昇(レベル依存)]
(常時発動)
new‼︎「マッピングlv:1」
[マッピング速度上昇(レベル依存)]
(任意発動)
【ファーストスキル】
locked‼︎「???」
???
➖➖➖➖➖➖
〜称号一覧〜
《唯一称号》
「ファーストモンスターキラー」
人類で最初にモンスターをキルした者のみが手に入れる称号。
[アタック系統のスキル習得率上昇(特大)]
[アタック系統のスキル習熟率上昇(特大)]
[モンスターキル時のドロップ率上昇(大)]
[精算時のレベル上昇率上昇(中)]
《普及済称号》
「迷宮到達」
迷宮に踏み入りし者が手に入れる称号。
[迷宮内での恐怖耐性(大)]
(常時発動)
〈精算を終了します〉
「なぁにこれぇ?」
突如、結晶が眩く光る。
「眩しっ」
閉じた瞼を開くと、見慣れた玄関に戻っていた。
スマホを見ると、出発前から時間が変わっていない、、。
「やっぱり夢だった?」
俺は何も考えず、学校へと向かった。
〈称号【ファーストリーダー】を獲得しました。〉