王家の日記
普段と変わらない朝であった
普段と変わらない昼であった
普段と変わらない夜のはずであった
はずであったのに、普段とは違う夜となった
そして普段とは違う一日となった
そう、あの日
絶望を知った
ちっぽけな存在であることを理解した
夜闇に包まれた静かな夜に
一筋の赤い光を伴って
世界の端に
禍が舞い降りた
一瞬のうちに地は割れ、捲れ上がる
建物はことごとく破壊され
植物は一面を抉るかの如く薙ぎ倒される
そして、動物は皆動くことを忘れたかのように倒れ伏す
我が国、ピルヒネール王国も例に漏れず
民の多くが地へと倒れ込み
民の多くが治療を受ける間もなく死に行く
こうして王国は一夜にして滅亡の危機に陥った
私たちが出来ることは何もない
ただ、絶望に打ちひしがれ
最後の時を待つのみ
そんな時
突然救いの手が差し伸べられた
希望も見出せない暗闇に染まる王国
王国を覆う分厚く黒い雲
その雲を10の光の柱が貫いた
10の光に照らされた王国は
まるで時を巻き戻すかのように
地面が建物が修復されていく
まだ息があった者や動物の傷は治っていく
植物も再び起き上がっていく
これは奇跡だ
これは神の救いだ
続いて王国の周りを一周するかのよう
国境に沿って
地面に次々と亀裂が入り始めた
初めは小さな亀裂が
時間と共に、深く深く刻まれていく
そして、王国全体が浮かび上がった
上へと上昇を始し、地上は遠く離れていく
そして、地上と雲の間にてようやく動きを止めた
続いて王国の端に
白く大きなブロックが次々と天から降り注いだ
ブロックは天高く積みあげられていき
王国全土を覆う2重の城壁へと形を変えた
城壁の上部からは
2重の結界が展開され
我が国は外界から完全に切り離された
神々により再生され
神々により掬い上げられ
神々に守られし
この栄光に満ちた新しき王国
王国の輝かしい栄光が
未来永劫続くことを願い
"アステール王国"と名づけられる
――アステール王国 王国日記より
アステール暦元年