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03 『開戦』

―143年6月21日―


ケテル帝国。

ヘキサグラム城謁見の間には玉座に座る皇帝と、謁見を求めた皇子の姿があった。


「何用か、忙しいんだがな」

「開戦の準備はそんなに大変ですか?」


皇子の言葉に皇帝はギロッと目を細め、皇子を睨みつける。

しかし、皇子は屈する事なく言葉を続けた。


「息子と喋る時間も無いと言うのなら、開戦の準備など御止めになればよろしいでしょう」

「ほぉう、口答えするというのか?」

「意見を述べているだけです。それに国民にはどう説明するのです?」

「戦争をする。それだけでよいだろう」

「そんな言葉で、国民が納得するとでも思っているんですか! 

貴方個人の復讐の為に国民を…国を巻き込むな!」


皇子は罵声を皇帝に何の躊躇もなく浴びせる。

さすがにこの行為に皇帝も我慢できないのか、「その者を視界から退けろ!」と衛兵に命令したが、

衛兵が行動に移る前に皇子は「貴方には失望しました」と言葉を残して自ら謁見の間から出て行った。



―皇子執務室―


そこには皇子 エイルと二人の軍人がいた。

一人は黒髪に赤い瞳をし、剣を腰に付けている二十歳くらいの青年。

もう一人は、右目に眼帯をしている三十代後半くらいの男だ。


「殿下、衛兵達から聞きましたよ~ 皇帝陛下に啖呵切ったんですって、凄いな~」


気さくにエイルに話しかけるこの青年は、ユエル・マストスという、階級は中尉で第一皇子付きだ。


「ユエル、あまり殿下にタメ口で接するな」


ユエルに注意をするこの眼帯男の名は、ヤハ・エラオウという、階級は少将で同じく第一皇子付きだ。


「へいへい、師団長はお堅いからな~」

「ここでは少将と呼べと何度言わせるつもりだ」

「すんません少将閣下」

「二人は相変わらず仲がいいね」


言い合っている光景を見てエイルは思っている事を言う、がヤハは「ご冗談を」と完全否定。

これにはエイルも苦笑いを浮かべるしかなかった。


「それで殿下、何故我々をお呼びに?」

「ヤハ達は俺のお付きなんだから本当はいっつも傍に居なきゃいけないんだよ?」

「それは理解してますが、今は事態が事態ですので、恐れながら用がないのならば戻りたいのですが」

「もちろん用があるから呼んだのさ」


エイルはそう言うと、机の上に置いてある紙をヤハに渡す。

ヤハ紙を一通りに見ると、「これは?」とエイルに質問する。


「指令書だよ。戦争に向けて俺に最高司令官代理のポジションが来たんだ」

「へぇ~ そりゃー 良かったじゃないですか、大出世ですぜ」


ユエルの言葉にヤハは睨むが、エイルが「ユエルは友達だから構わないよ、君もね」とヤハに言った為、ヤハは「分かりました。殿下が申されるのなら」と渋々了承した。


「で、早速なんだけど最高司令官代理の権力を行使しようかなって思ってさ」

「一体何に行使するので?」

「殿下が戦争反対の立場を取ってるのは知ってっけどさ、戦争中止~ なんて命令は出来ないぜ?」

「それくらい分かってる。俺の命令だ。

ヤハ・エラオウ少将率いる第二師団は本日この時を持って、エイル・グラジアスの指揮下に入る」


「で、殿下。もしかして…クーデターでも起こそうってわけじゃ…ないですよね?」


ユエルは恐る恐る聞く、何せ第二師団と言えば帝国軍最強の殲滅部隊と名高いからだ。

その師団を開戦寸前と言われるこの時期に自分の指揮下に入れると言うのだから、疑うのは無理ない。


「そんな事するわけないだろ、国民が認めてくれるわけないじゃない」

「では、なぜこの時期に殿下は我々を指揮下に?」

「この時期だからこそ…だよ」

「殿下ぁ~ 俺はバカだからよ、戦略ってのは苦手なんだ」


ユエルは遠まわしに意図を教えてくれ、と言う。

エイルは少し腕を組んで考えると、「平和への布石とだけ言っておこうかな」と笑顔で答える。

その言葉にヤハもユエルも溜息を吐く。


「まぁそれは構いませんが、陛下がお認めになるとは思えません」

「師団長の言う通りですよ、この時期に俺らの師団が前線から外れるなんて」

「それはないよ、もう国民には発表したから陛下も認めざる負えないでしょ。

この時期に国民からの反発は避けたいだろからね」

「本当に貴方と言う方は、もし私が拒否したらどうするつもりだったのですか?」

「ヤハは拒否なんてしないでしょ?」


ヤハは、やれやれ。と頭を抱える。

ユエルは腹を抱えて笑いを抑える事に集中していた。


「さて、当面の行動だけど。ニコラス大佐の連隊を帝都ここへ、あとはダアトとの国境へ移動しといて」

「ダアトとの国境へですか?」

「帝都への移動は納得できますけど、なんで?」

「そりゃー ダアトは中立国だからだよ。攻撃してこないでしょ」

「まぁそうですが」

「まだ第二師団には傷ついてもらっちゃ困るんだよ。来るべき時まではね」


その言葉にヤハもユエルも表情を曇らせる。

来るべき時が来たら、間違いなく第二師団は致命的なダメージを受ける事を悟ったのだ。


そして第二師団の移動が恙無く終了してから二週間後、

賢歴143年7月7日、ケテル帝国はビナー王国へ宣戦布告し、ビナー王国との大陸国境があるユマリエ大地とバーナードから侵攻を始めた。


                            To be continued      

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