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01 『皇子』

―ケテル帝国 帝都ヘキサグラム―


皇帝が住まう城の一室。

そこには鎧とマントを身に纏う歴戦の騎士と丸い眼鏡を掛けた老人が、少年に言い寄っていた。


「殿下、我儘を申さないでください」

「そうですぞ、将軍の言う通りです。敵国の姫と結婚したいなど」

「なんだ…爺やまで反対か?」

「エイル殿下、貴方様は御自身の御立場を分かっていらっしゃるのですか?」


爺やと呼ばれる老人の問いに、エイルと呼ばれた少年は苦虫を噛んだ様な表情を浮かべ、少し考え込むと「じゃあ俺、皇位継承権を返上する!」と声を上げる。

その言葉を聞いた二人は、世界の終わりでも見たような形相でエールに、


「殿下! ご冗談も程々にして頂きたい!」

「そうですぞ! 我が国を継げるのは殿下御一人なのですぞ!?」

「じゃあマリーと結婚したい、それに昔は皆喜んでいたじゃないか!」

「うっ…それはそうですが、今と昔とでは状況が違うのです」


その言葉にエールは拳を握る力一杯に、

表情も自然と強張り、二人もそれに気付いたのか「失礼を」と一礼。

エールは「頭を上げてくれ」と二人に声を掛ける。


「殿下、いい加減署名を」

「皇帝陛下はもう署名されたのだろう? では俺のは必要ないだろ」

「……将軍、少し席を外してくれ」

「えぇ、私は外にいますので」


爺やの言葉に返事をすると、エールに一礼して退室。

この部屋にはエールと爺やの二人のみとなった。


「殿下、お分かりでしょう?」

「なんの事だ」

「陛下よりも殿下の方が国民に信頼されている事をです」

「おいおい、そんな事を言っていいのか?」

「事実なのです。陛下も認めている事ですし、だからこそ正式な開戦の署名には陛下御一人の署名だけではなく、次期皇帝たる殿下の署名も必要なのです」


爺やは必死に語る。

それこそ死に物狂いで、老体には答えるであろう言葉に重みを乗せてエールを説得しようと試みていたが、エールの決心は微動足りともしなかった。

 

 爺やの言っている事も理解できる。

 正論だろう、直に一国を背負うのだ。

 決断は必要、それが戦争となれば尚更だ。

 しかも開戦がこの国の為になるならば最早退けない。

 だから開戦してしまえばどちらかが負けるまで続いてしまう。

 

「殿下、まだマリー姫の事を御思いなのですね」

「…言わずとも爺やなら分かるだろ」

「……署名の方は、頂けないようですね」

「あぁ、悪いが陛下にそう伝えといてくれ」

「…御意」


爺やは渋々引き下がるのか、その表情にはどこか不満がある。

しかし礼儀は重んじているので、エールに一礼してから退室、エールは窓の外を眺める。


「…昔は平和だったのに、なぜこうなってしまったんだ」


そう、昔は両国ともそれはそれは友好的な関係だった。

世界を統べる三国の内『ケテル』と『ビナー』の領土は、中立国の小国である『ダアト』とは比べ物にならない広さ、さらに人口も圧倒的に違った。

故に両国は友好的関係を永続のものにするために、『ケテル』は次期皇帝であるエイルを、『ビナー』は次期女王であるマリーを結婚させようと約束した。

無論、当事者である本人達もそれこそ相思相愛、互いに一目ぼれだった。

相手の素性も知らず、声を掛けたほどに。


だから快く承諾した。


幸せな将来を夢見て。


なのに、なのに、なぜこうなってしまったのだろうか?

それは少し前に遡る。


To be continued

どうも月冴つかさです。

こういった内容の作品は初めて書くので至らない点が多々あると思いますが、この度は読んで頂きありがとうございました。

次話は過去のお話になっています。

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