走れ、バズれ、メロス
メロスは激怒した。必ず、Yaho〇!ニュースで見た邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。
メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。いつか見知らぬ人物がくれたSmart Phoneで笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。
この妹は、村の或るTind〇rで知り合った律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。
Inst〇を見る限り、結婚式も間近かなのである。
メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。
今はこの市で、石工をしていると、facebo〇kのステータス欄には書かれていた。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。
ひっそりしている。
もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。
路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのかと質問した。
若い衆は、首を振って答えなかった。
しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
老爺は答えなかった。
メロスは両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「王様は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「『エゴサをすると、皆悪心を抱いている』というのですが、誰もそんな悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「はい、はじめは王様の妹婿さまを。それから、御自身のお世つぎを。それから、妹さまを。
それから、妹さまの御子さまを。それから、皇后さまを。それから、賢臣のアレキス様を。
それから暴露系Y〇uTuberを」
「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。
このごろは、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮しをしている者には、
人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。
御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。きょうは、六人殺されました。」
聞いて、メロスは激怒した。
「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」
メロスは、単純な男であった。買い物を背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は警吏に捕縛された。
調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
メロスは、Twitt〇rで晒された。
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」
暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以もってDMを送った。
その王のアイコンは蒼白そうはくで、眉間みけんの皺しわは、刻み込まれたように深かった。
「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずにリプをした。
「おまえがか?」王は、絵文字を送った。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」とメロスは、いきり立って転載した。
「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。
人の心は、あてにならない。
人間は、もともと私慾のかたまりさ。
信じては、ならぬ。」
暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。
「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどはメロスが煽った。
「罪の無い人を殺して、何が平和だ。」
「だまれ、下賤げせんの者。」王は、さっと引用リツイ〇ト。
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。
おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は利口だ。自惚うぬぼれているがよい。
私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。
ただ、――」
メロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。
たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。
三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑い、ファボ。
「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死でリプライ。
「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。
妹が、私の帰りを待っているのだ。
そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。
私の無二の友人だ。
あれを、人質としてここに置いて行こう。
私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、
あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」
それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと魚拓を取った。
生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。
この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。
人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴らにうんと晒して炎上させてやろう。
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。
三日目には日没までに帰って来い。
おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。
ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
メロスは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。
王はガイドライン違反により凍結を食らった。
竹馬の友、セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。
暴君ディオニスの面前で、良き友と良き友は、二年ぶりで相逢うた。
メロスは、友に一切の事情を語った。セリヌンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめ、LI〇Eを交換した。
友と友の間は、それでよかった。セリヌンティウスは、縄打たれた。メロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
王はメロスとセリヌンティウスと王のグループラインを作った。
メロスはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで、村へ到着したのは、翌あくる日の午前、陽は既に高く昇って、村人たちは野に出て仕事をはじめていた。
メロスの十六の妹も、きょうは兄の代りに羊群の番をしていた。
よろめいて歩いて来る兄の、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。そうして、うるさく兄に質〇箱を投稿した。
「なんでも無い。」メロスは無理に笑おうと努めた。
「市に用事を残して来た。またすぐ市に行かなければならぬ。
あす、おまえの結婚式を挙げる。早いほうがよかろう。」
妹は頬をあからめた。
メロスは、また、よろよろと歩き出し、家へ帰って神々の祭壇を飾り、祝宴の席を調え、間もなく床に倒れ伏し、Spo〇nも聞かず深い眠りに落ちてしまった。
眼が覚めたのは夜だった。
メロスは起きてすぐ、花婿の家を訪れた。
そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。
婿の牧人は驚き、
「それはいけない、こちらには未だInst〇Liveの仕度も出来ていない。
葡萄ぶどうの季節まで待ってくれ」と答えた。
メロスは
「待つことは出来ぬ、どうか明日にしてくれ給え」と更に押してたのんだ。
婿の牧人も頑強であった。なかなか承諾してくれない。
夜明けまで議論をつづけて、やっと、どうにか婿をなだめ、すかして、説き伏せた。
結婚式は、真昼に行われた。新郎新婦の、神々への宣誓が済んだころ、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。
祝宴に列席していた村人たちは、何か不吉なものを感じたが、それでも、めいめい気持を引きたて、狭い家の中で、むんむん蒸し暑いのも怺こらえ、陽気に歌をうたい、スパチャを送った。
メロスも、満面に喜色を湛たたえ、しばらくは、王とのあの約束をさえ忘れて高額スパチャを投げていた。
メロスは、わが身に鞭打ち、ついに出発を決意した。
あすの日没までには、まだ十分の時が在る。ちょっと一眠りして、それからすぐに出発しよう、と考えた。
雨雲レーダーによれば、その頃には、雨も小降りになっていよう。
少しでも永くこの家に愚図愚図とどまっていたかった。
メロスほどの男にも、やはり未練の情というものは在る。
メロスは笑って村人たちにも会釈して、Live会場から立ち去り、羊小屋にもぐり込んで、死んだように深く眠った。
眼が覚めたのは翌る日の薄明の頃である。メロスはスヌーズで跳ね起き、
「南無三、寝過したか。
いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、約束の刻限までには十分間に合う。
きょうは是非とも、あの王に、人の信実の存するところを見せてやろう。
そうして笑って磔の台に上ってやる。」
メロスは、悠々と身仕度をはじめた。雨も、いくぶん小降りになっている様子である。
身仕度は出来た。
「さて」
メロスは、ぶるんと両腕を大きく振って、雨中、矢の如く走り出た。
私は、今宵、殺される。殺される為に走るのだ。
身代りの友を救う為に走るのだ。
王の奸佞邪智を打ち破る為に走るのだ。
走らなければならぬ。
そうして、私は殺される。
若い時から名誉を守れ。
さらば、ふるさと。
若いメロスは、つらかった。幾度か、消したSNSのアカウントを復活させそうになった。
えい、えいと大声挙げて自身を叱りながら走った。
そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧わいた災難、メロスの足は、はたと、とまった。
見よ、前方の川を。
きのうの豪雨で山の水源地は氾濫し、濁流が下流に集り、猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木葉微塵に橋げたを跳ね飛ばしていた。
彼は茫然と、Y〇uTubeShortに上げた。
あちこちと眺めまわし、また、声を限りに呼びたててみたが、渡し船は流されて影なく、渡守りの姿も見えない。
流れはいよいよ、ふくれ上り、有名Y〇uTuberのライブのチャット欄の様になっている。
メロスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらゼウス(運営)に手を挙げて哀願した。
「ああ、鎮しずめたまえ、荒れ狂う流れを!
時は刻々に過ぎて行きます。太陽も既に真昼時です。
あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、
友達が、私のために死ぬのです。」
濁流は、メロスの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。
今はメロスも覚悟した。
泳ぎ切るより他に無い。
ああ、神々もご覧あれ!
濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。
メロスは、ざんぶと流れに飛び込み、百匹の荒らしコメントのようにのた打ち荒れ狂う浪を相手に、必死の闘争を開始した。
満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻かきわけ掻きわけ、見事、対岸の樹木の幹に、すがりつく事が出来たのである。
ありがたい。
メロスは馬のように大きな胴震いを一つ、TikT〇kの自撮りで撮影をして、すぐにまた先きを急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。陽は既に西に傾きかけている。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠をのぼり、のぼり切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊の山賊が躍り出た。
「待て。」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」
「どっこい放さぬ。持ちもの全部を置いて行け。
動画を撮るのはやめろ。」
「私にはいのちの他には何も無い。その、たった一つの命も、これから王にくれてやるのだ。
動画を撮られたくないようなことはしないでくれ。」
「その、いのちが欲しいのだ。」
「さては、王の命令で、ここで私を出待ちしていたのだな。」
山賊たちは、ものも言わず一斉にヤリラフィを踊り始める。
メロスはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの一人に襲いかかり、そのヤリラフィを奪い取って、
「気の毒だが正義のためだ!」とDADADA猛然一撃。
たちまち、バズり倒し、残る者のひるむ隙すきに、さっさと走って峠を下った。
一気に峠を駈け降りたが、ついに、がくりと膝を折った。
立ち上る事が出来ぬのだ。
天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、山賊を三人も撃ち倒し韋駄天、ここまで突破して来たメロスよ。
真の勇者、メロスよ。
今、ここで、疲れ切って動けなくなるとは情無い。愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。
おまえは、稀代の不信の人間、まさしく王の思う壺つぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎なえて、もはや芋虫いもむしほどにも前進かなわぬ。
路傍の草原にごろりと寝ころがった。
身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐ふてくされた根性が、心の隅に巣喰った。
私は、これほど努力したのだ。
約束を破る心は、みじんも無かった。
神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで走って来たのだ。
私は不信の徒では無い。
↓
ああ、できる事なら私の胸を截たち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。
↓
愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。
↓
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。
私は、よくよく不幸な男だ。
私は、きっと笑われる。
私の一家も笑われる。
私は友を欺あざむいた。
↓
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
↓
ああ、もう、どうでもいい。
これが、私の定った運命なのかも知れない。
↓
セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。
そうしてメロスは永遠と鬱ツイ〇トを垂れ流していた。
ふと耳に、潺々せんせん、水の流れる音が聞えた。
そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ足もとで、水が流れているらしい。
よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から清水が湧き出ているのである。
メロスは身をかがめた。
水を両手で掬って、一くち飲んだ。
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。
歩ける。行こう。
↓
肉体の疲労恢復かいふくと共に、わずかながら希望が生れた。
義務遂行の希望である。
わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。
↓
日没までには、まだ間がある。
私を、待っている人があるのだ。
少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。
私は、信じられている。
私の命なぞは、問題ではない。
死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
私は、信頼に報いなければならぬ。
↓
いまはただその一事だ。
↓
走れ! メロス。
〇1 ⇄1.8万 ♡3.7万
メロスは黒い風のように走った。
少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。
一団の旅人と颯さっとすれちがった瞬間、不吉なair dr〇pがはいった。
「いまごろは、あの男も、磔にかかっているよ。」
ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。
その男を死なせてはならない。
↓
急げ、メロス。
〇325 ⇄1247 ♡1.2万
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
メロスは疾風の如く刑場に突入した。
間に合った。
〇502 ⇄30 ♡42.7万
「待て。その人を殺してはならぬ。
メロスが帰って来た。
約束のとおり、いま、帰って来た。」
・・・と王の作ったグループLI〇Eでメッセージを送ったつもりであったが、速度制限で遅延しているからか、ひとりとして彼の到着に気がつかない。
すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれたセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。
メロスはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、
「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。メロスだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」と、
かすれた声で精一に叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧かじりついた。
群衆は、どよめいた。
あっぱれ。ゆるせ、と口々にスパチャを送った。
セリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。
「セリヌンティウス。」
メロスは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。私は、途中で一度、悪い夢を見た。
君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。
殴れ。」
セリヌンティウスは、すべてを察した様子でうなずき、
刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
その様子を王はTikT〇kでコメント付きでアップした。
殴ってから優しく微笑ほほえみ、
「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。
私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
生れて、はじめて君を疑った。
君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」
メロスは腕に唸うなりをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
その様子も王はTikT〇kでコメント付きでアップした。
「ありがとう、友よ。」
二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと撮影していたが、
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。
「おまえらの望みは叶かなったぞ。おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
どっと群衆の間に、歓声が起った。
「万歳、王様万歳。」
ひとりの少女が、緋のマントをメロスに捧げた。
メロスは、まごついた。
良き友は、気をきかせて教えてやった。
「メロス、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのマントを着るがいい。
この可愛い娘さんは、メロスの裸体を、fant〇a非会員に見られるのが、
たまらなく口惜しいのだ。」
勇者は、ひどく赤面した。