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 「うう、あ?」


 目を覚ました湊は鼻腔を擽る良い匂いに疑問を持つ。


 「痛ッ」


 体を起こそうとすると湊の背中ににビキビキと痛みが走り、思わず腰を擦る。


 (俺、何でこんなとこで寝てんだ?)


 机に突っ伏して寝ていた事に気付いた湊は腰に手を当て背筋を伸ばしながら、昨晩の出来事を思い出そうとする。


 (えーと、昨日は、ってか三日前から昨日まではぶっ続けで仕事しててー、今日は納品日だ!やっば!まだ梱包やってねぇ!このままじゃあのサディスティックお嬢様に何を言われるか……)


 重大な事実を思い出した湊は匂いの事など忘れ、作業場に向かって走ろうとする。


 「おはよう湊!」


 直前、湊に少女の声をした誰かが声をかけてきた。


 「?」


 誰だ?と、思いつつ湊は後ろを振り返る。


 「忘れたのか?今日から少しの間居候させてもらう事になった白だ!」


 白髪赤眼、人形のように端正な顔立ち。

 そして、身長。

 その容姿の強烈なインパクトで、湊の脳内で、昨夜の記憶がフラッシュバックする。


 「ああー……。よし、出て行け」


 「なんでだ!?」


 白の存在を認めた湊だったが、すぐに白を追い出そうとする。


 「俺は今忙しいんだよ!今日は時間も無いんだよ!?会ってすぐの奴を居候させる余裕なんて無いの!」


 「ふっふっふ」


 いきなり、わざとらしく不気味に笑う白。


 「な、なんだよ……」


 「これを見るがいい!」


 白が勢いよく突き出したのは、小型のボイスレコーダー。


 「?」


 しかし、その機械を瞬時にボイスレコーダーだと認識できるほど機械に精通していない空人には突き出されたものが何かわからない。

 何だそれ?と湊が白に訪ね始める前に、ピッと言う電子音が室内に響いた。

 ザザッ、というノイズを皮切りに録音の再生が始まる。


 『私の要求は二つだけ、一つ目の要求は少しの間私をこの家に泊める事』


 『あぁ……』


 『そして二つ目の要求は私の事情について詮索しない事』


 『あぁ……』


 『勿論ただでとは言わない。ちゃんと体で返す。勿論いかがわしくない方法でだがな?』


 『あぁ……』


 『じゃ、そういう事でよろしく』


 『あぁ……』


 ピッ。

 録音を止めた白は湊の方へ向き直る。


 「はい、どーん」


 「な、な、な、何だそれ……」


 湊は昨日の記憶を思い出したが、その中にこんな記憶は無かった筈だ。

 湊はそう思っており、それは実際に真実なのだが、事実ここには証拠がある。

 湊の動揺は必至だった。


 「何って、昨日の会話の録音だが?」


 「こんな話した記憶は無いが!?」


 「さぁ、でも実際にここには証拠(ブツ)がある」


 「くぅ!」


 「女騎士か」


 「やかましいわ!」


 「諦めたまえよ」


 今にもやれやれと言いだしそうな顔で背伸びをしてタンタンと湊の肩を叩く白。


 「でも……」


 「男に二言は無いと言うが、ミナトくぅん、もしかして君は女なのかい?」


 尚も反論しようとする湊を、白が独自の超理論でねじ伏せようとする。

 普段ならこんな突飛な理論では揺るがない湊だが、彼は今動揺していた。


 「ちげぇよ!」


 「じゃあ、認めてくれるんだな?」


 「それとこれとは話が違……」


 「男に二言は?」


 (あぁ、もう!どうにでもなれ!)


 「分かった分かった、分かりました!無ぇよ!二言!居ていいよ!ちょっとだけだからな!」


 「ありがとう!」


 満面の笑みを浮かべる白。

 しかしそこに可愛げは無い。

 純度百%のドヤ顔だった。

 してやったりとでも言いたそうである。


 (おぼえてろー!)


 その顔と、小学生、良くて中学生位にしか見えない容姿も相まって、湊は言いようのない敗北感を感じ、三下上等のセリフを思い浮かべてしまう。


 「ただし!働け!馬車馬の如く!」


 負けを取り返そうと(勝敗が存在するかは分からないが)、湊は捨て台詞を吐き捨てるとずかずかと作業場へ向かう。


 「最初からそのつもりだよ」


 想定済みとばかりに返答し、白は湊の後を追った。


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