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 その後もデュオルに案内してもらい、芽衣は多くの店を見て回った。

 主に冒険者へのお守りだという木札やミサンガに似た物から、携帯食と思われる干し肉や缶詰らしき物が目についた。


(お守りとしてミサンガっぽいのが売っているし、レベルが上がっていけば手芸用品を扱ってもいいかもしれない。あと缶詰もあるんだったら、こっちのも売れるかもしれない)


 中身や味の参考にと、目についた缶詰を三種類買ってみたところ、芽衣が何の迷いも無く缶詰を買うのを見ていたデュオルは「本気ですか!?」と驚いていた。何故缶詰を買っただけでこんなにも驚かれているのか分からなかったので、後で鑑定をしてから試食をしようと思った。

 そうして歩いているうちに、次は小物が多く集まっている区画に辿り着いたようだ。


「ここは主にお土産物が売られています」


 といった説明を聞きながら、店を見ていく。

 確かに土産物と云っても違和感がない木彫りの熊…ならぬ木彫りの魔物らしい謎の置物や、「王都に行ってきました」という刺繍のされたハンカチやクッキー等、ここで売られている物を見続けていると、まるで観光地の土産店にいるような気持ちになっていた。

 しかしこれらが本当に売れているのか気になり、芽衣はデュオルにこっそりと訊ねてみた。


「あの…こういう商品って売れているんですか?」


「買う人は明らかに少ないです。でも遠くから王都に来た人たちは、記念に買っているようです」


 そうして参考になりそうな店を見ながら歩いていると、次は食材を売っている区画に辿り着いた。あちこちの屋台で呼び込みの声をかけていた。


「うわ~!」


 視界に入ってくるのは肉や野菜、そして惣菜も扱っているのか、時々美味しそうな匂いがしてくる。芽衣は瞳を輝かせながら、きょろきょろと一生懸命首を動かす。


(異世界だから珍しい食材とかってあるのかな?)


 リーシャ邸の厨房では見慣れた物ばかりだったが、実は異世界ならでは!みたいな物を芽衣は期待していた。

 ここでは今まで以上にデュオルがゆっくりと歩いてくれたので、思う存分見ることが出来た。

 特に一番驚いたのは、どこの肉屋も鶏や豚らしき動物の肉が丸々売られていたことだ。


(流石に丸ごとのは捌いたことがないから、ここで買うのは無理かな)


 調理の知識はあっても一頭丸々を自力で解体する技術が無いことに内心ガッカリしていたが、数軒だけ「お好みの大きさに切ります」「量り売り出来ます」という看板を掲げていた。


(そうだ! そういう店を探せば良いんだよ。スーパーとかで魚も希望通りに捌いてくれるし)


 ふふっ、と芽衣が喜んでいるのを見たデュオルは微笑んでいた。

 しかし肉は今のところ必要ないので、次は野菜や果物を見ていく。じゃがいもや玉ねぎ等、リーシャ邸でも馴染みの野菜類が並んでいる。


(じゃがいもや玉ねぎとかが定番なのは一緒なのかも。そう思うと、なんだか久しぶりにカレーとか肉じゃがが食べたくなってきたな。材料が揃い次第作ってみようかな。どうしても揃わなければ、レトルトもあるし)


 そんなことを思いながら次々と屋台を見ていく。

 未だ異世界と思われる物は発見出来ていないが、それでも色々な商品を見て回ることは楽しい。

 そして予想以上に多い肉と野菜の屋台を一通り見た後、ふと気付いたことを口にした。


「やっぱり魚がない」


 以前トランにも聞いたが、魚は中々手に入らないそうだ。

 魚という言葉に反応したデュオルが答えてくれた。


「一番近い海から王都までは半日程の距離ですが、ここでは生魚は滅多に出回りません」


「半日なのに? 何で??」


 輸送の状態が良ければ、王都でも新鮮な魚が食べられるはず。そう思って芽衣はデュオルに訊ねた。


「魚を捌ける人が少ないのと、生魚を口にするのが不安だというのが主な原因でしょうか」


「え?」


「私もそれ程詳しい訳ではないのですが…生魚を捌ける人が王都には二人ぐらいしかいないそうです」


 確かに生きたままだと鮮度はいい良いし、アレンジも自由自在だ。

 しかし地球の輸送技術とは違う異世界で、半日もかけて運ばれて来るのだとしたら確かに不安になる。だから王都の人たちが魚を不安に思う気持ちは少し分かった。

 けれど火を通せば美味しく食べられるのでは?と疑問に思ったが、デュオルの「捌ける人が二人」という説明に首を傾げた。


(もしかして王都の人は全員魚が捌けない? これは現地に行かないと、美味しいお魚は食べられないってことなのかな? そもそも捌けるのが二人っていうのも気になるけど、運ばれて来た魚を捌くのに時間がかかり過ぎて、そのせいで魚がダメになって売れないってことなの?)


 う~ん…と悩んでいると、デュオルが説明してくれた。


「まず魚が大きすぎるのが理由です」


「え? 大きい??」


 もしかして大物ばかりが釣れてるの?と思っていると、デュオルが思い出したように声をかけてきた。


「そういえば、ここで干物を売っている店があったような…。現物を見てみますか?」


「お願いします!」


 芽衣は即答し、デュオルと共に干物を探し始めた。

 …結果、干物でもとても大きかった。スーパーで売られている干物で一番大きいのはホッケだと思っていたが、それよりも二倍も大きかった。しかもそれはまだ小さい方で、大きな魚の干物は中々売れないらしい。


(もしかして…(コレ)のサイズだけ異世界仕様ってこと!?)


 ワクワクしていた分、実物を見てショックを受けたが、芽衣はホッケの二倍サイズの干物と鯵サイズの干物(これでも稚魚らしい)を一枚ずつ購入した。





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