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「見てみたい物や行ってみたい場所はありますか?」


 シンプルな馬車で貴族街入り口まで来たが、そこからは芽衣がじっくり街並みを見られるようにと徒歩で移動するらしい。

 そうして庶民が生活する場所――その中でも人通りが多い場所へとやって来た。

 初めて王都に来た時はリーシャの後に着いて行くのに精一杯だったが、改めて辺りを見回してみると、王都ということもあるのだろうが、とても活気があると思う。

 特にここ――中心地には良心的な宿や飲食店も多くあり、更に専門店や露店屋台等、とにかく生活に困らない店が多くあるらしい。

 そして店だけではなく、冒険者ギルドや商業ギルドといった専門ギルドから教会や病院等の施設もここに集まっているという。

 歩きながらデュオルが話をしてくれるので、それを聞いていると端から端までじっくり見てみたいと思ってしまう。しかし話を聞く度に気になる所が増え、どこを見たいのか分からなくなってしまった。


「そうですね…沢山お店がありそうなので悩んじゃいますね」


 そんな芽衣の思いを察してくれたのか、デュオルは苦笑している。そうして時間をかけて色々と考えた結果、ようやく自分の中での優先順位が決まったような気がした。


「メイは何に興味がありますか?」


 もう一度デュオルに訊ねられ、芽衣は素直に答えた。


「どのお店も気になりますが、今はとにかく色々な商品を見てみたいです」


 実際にどんな商品が売られているのか分からないので、思ったことを口にした。


「…でしたら、まずは露店屋台がいいかもしれませんね。あそこには色々な品が集まっているので、専門店とは違う物と出会えるかもしれません」


「ではそこにお願いします」


 デュオルの話によると、露店屋台は何ヶ所かあるとのことで、その中でも一番大きな場所へと案内してもらった。

 案内された場所は芽衣が最初に通った門から近い場所だった。どうやら門の近くは出入りする人が多いので、門付近に露店屋台があるらしい。ちなみに王都には四つの門があるそうだが、その内の一つは貴族街にあると教えてもらった。つまり残り三つの門はここにある。その中でも正門の露店が一番活気付いているという。

 以前にも乗った乗り合い馬車で正門付近へと移動すると、確かに多くの屋台が並んでいた。しかも正門付近なので人も多く、そのため店主たちも客呼びのためか声を張り上げているので、とても騒がしかった。


「うわ~! 凄い人ですね!!」


 まるで日本の都市部にいるかと錯覚してしまうぐらい人が多い。芽衣は人とぶつからないよう、そして迷子にならないように気をつけながら歩いた。


「そうなんですよ。特に午前中は日帰り冒険者や飲食店を経営している人たちが買いに来ることが多いので、余計混雑しているんですよ」


 云われてみれば行き交う人たちは皆競歩並みのスピードだったり、小走りしている人もいた。


「人が少なくなる遅い時間に案内しても良かったのですが、そうすると商品も減ってしまうので…」


「良い商品から売れて行くのは分かりますから、それは仕方ないですよ」


 露店は専門店ではないので、商品の補充もそれほど無いのだろうと思っていたが、予想通り時間が経つほど人気・需要のある商品はあっという間に売り切れになってしまうようだ。


「確かに人は多いですが、商品がある今のうちに色々見ちゃいたいです」


「分かりました。まずは一番近い所から一通り見て回りましょう」


「はい、お願いします」


 初めての場所なので、どこに何が売られているのか分からない芽衣はデュオルに着いて行く。


「まずここの露店は売っている物で区画が違います。例えば今いる場所は主に冒険者に必要な武具や道具等が売られています」


 説明を受けた芽衣が辺りを見回してみると、確かにマントやナイフ、ランタンやロープ等の役に立ちそうな物から薬らしい瓶等が売られていた。


「てっきり武具って専門店で売っているのかと思っていたんですけど、露店でも売られているんですね」


 ナイフを見た芽衣はポツリと呟いた。武具類は店で扱っていると思っていたので、こういう場所で販売していることに驚いた。


「ええ。ここで売られているのは主に消耗品が多いですね。特に魔法札や魔石、ポーションといった物を買う人が多いです。それと時々見習いが作った武具が売られていることもあるので、駆け出しの冒険者には専門店よりも安く買えて助かっているそうです」


 冒険を始めたばかりだと、金銭に余裕が無いということは想像出来る。そういった駆け出し冒険者にはとっては重要な場所なのだろう。


「それと買い忘れをした冒険者にも需要があるので、ここはいつも賑わっています。ちなみに専門店ではオーダーメイドで武具を作る店もありますので、もし興味があるようならこの後案内しますよ」


 今のところ芽衣には必要ないと思うが、後日余裕が出来た時に見て回ってもいいかな?と思った。

 そうして同じような商品を売っている店が何軒かあったので訊ねてみる。


「その…冒険者に必要な物って武具以外だと何がありますか?」


 冒険者用の商品を見ながら、もしかしたら消耗品の中で売れそうな物があるかもしれないと思った。

 するとデュオルは少し考えた後、しっかりと答えてくれた。


「そうですね…必要な物というか、持っていて便利だという物は、麻袋やランタンにナイフ、それからいざという時の魔法札。あとは携帯食や水といった食事類とポーション等の薬は必須ですね。それと持ち物に余裕があれば調理鍋やコップ等の食器類があれば便利ですね」


「鍋?」


 コップは分かるが何故鍋を?と疑問に思ったので訊ねてみると、デュオルは必要と思われている道具について丁寧に教えてくれた。

 まずナイフと麻袋は素材採取のために必要で、ロープは命綱にもなるし、罠をしかけたり獲物を捕縛する時に使ったりするそうだ。魔法札は一度しか使えないが、中級魔法並みの攻撃魔法陣が書かれているらしい。

 そして気になっていた調理鍋等は主に休憩や野宿をする時に使うらしく、例えパーティーメンバー全員が調理出来なくても、湯を沸かすためだけに持って行くことも多いと教えてもらった。


(それだったらキャンプ用品とか使いやすいかも。あとお湯を沸かすのなら紅茶やミニヌードル以外のインスタント系も売れるかも!)


 どれが役に立つかは分からないが、帰ったら早速調べてみようと芽衣は思った。





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