表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/27

024

 怒涛の質問攻めが終わり、ようやく解放された後は動く気力も無くなり、自然とベッドの上でゴロゴロしていた。


「はぁ~、疲れた~」


 客人が来るとは聞いていたが、その客人が国王と王弟で驚いていていたのに、本人たちは芽衣の心情も気にせず沢山質問してくるとは思っていなかった。


「そもそもボールペンの作り方なんて知らないし…」


 そして地道にストックしておいた商品の一部を渡してしまった。


「また注文しなくちゃ…」


 昼に上限分まで注文してしまったので今日はもう買えないが、それでも今後売れそうな商品を探すだけでも…と思い、スマホを手にして異世界商店を起動した。

 いつものようにアプリを立ち上げると――その画面はいつもとは明らかに違っていた。



『いつもご利用ありがとうございます。あなたのレベルが上がったので、全商品1日40コまで購入出来るようになりました。おめでとうございます。レベルアップのため、本日は後20コ購入することができます』



 画面ではウサギが拍手をし、祝うように花びらが舞い散っている。


「え? 嘘!?」


 レベルが上がったと云われたので、芽衣は慌ててステータスチェックのアプリを起動した。するとそこには確かに『レベル:2』となっており、魔力も若干増えていた。

 そしてレベルアップした芽衣の現在は…



小日向芽衣メイ・コヒナタ

異世界人

年齢:19歳

職業:商人

レベル:2

魔力:320  

魔法:火、水、風、土、生活魔法

スキル:異世界商品取寄せ、言語翻訳

持ち物:マジックバッグ、スマホ、異世界商品



 となっている。


「ええ!? 本当にレベルが上がってる! 魔力も少しだけ増えてる!!」


 参考までに商品のチェックをしようと思ってアプリを立ち上げてみたら、マスコットのウサギがレベルアップのことも教えてくれた。わざわざステータスチェックをしなくても教えてくれるアプリが便利過ぎる…と思いつつも、芽衣は商品チェックをし続けた。

 それは今までより購入出来る数が増えたので、販売予定の商品以外も気になってしまったのが原因だ。


「う~ん…レベル上がって少し余裕が出来たから、自分用にちょっと買っちゃおうかな」


 そんなことを云いつつ、気になった商品をカートに入れていく。


「まさかこんなに早くレベルが上がるだなんて…。これも毎日商品買ったり、魔法の練習をしているおかげなのかな? とにかくこれからもレベル上げのために頑張っていかなくちゃ!」


 何しろ店を持ちたいのに購入制限数が限られているので、大量仕入れが出来ないという欠点があるのだ。

 気合いを入れた芽衣は、今日も入浴剤を入れた風呂で身体を温めて就寝した。




 翌日の朝は、この世界に来てから初めて一人で食事をした。

 準備を終えて食堂に行くと、そこにはいつものほほんとしているリーシャの姿が無かった。どうやらリーシャは仕事のために早朝家を出たらしい。

 久々に一人で食事をしたからか、なんだか淋しくなってしまった。

 元気をもらうため、今日も厨房へ行こうかと考えていると、メイドから「お客様がお見えです」と声をかけられて驚いた。


「え? 私に?」


「はい」


 ここに訪ねてくる知り合いは今のところ美月と航太だけ。だが二人とはメールで連絡出来るので、連絡なしにわざわざここまで来ることは無い。

 一体誰だろう?と思いながらメイドの後に付いていくと、案内された応接室には昨日会ったデュオルがいた。


「おはようございます」


「え? あっ、おはようございます」


 爽やかに挨拶をされ、何故デュオルが芽衣に会いに来たのかと疑問に思いながらも挨拶を返した。そんな芽衣の思考を読み取ったかのように、デュオルが話しかけてきた。


「昨日護衛と教師の話が出たので、早速仕事をしに来ちゃいました」


「そ、そうですか…」


 まさか話が決まった翌日にデュオルが来るとは思っていなかったので、芽衣はとても驚いていた。


「えっと…いつも午前中は厨房に行っているので、その後でもいいですか?」


 これからの予定を素直に告げると、デュオルは「用事が終わるまで近くで見守ってます」と即答してきた。

 確かにまた出直して来るのも面倒なのだと思うので、待っている方が楽なのは分かるが、近くで見守るってどういうこと? 何かしら危険が迫っているの?と不安になりながらも、芽衣は「出来るだけ早く終わらせるように頑張ります」としか云えなかった。

 そして現在、芽衣はデュオルに見守られながら厨房にいる。


「えっと…」


 トランたちも芽衣と一緒に厨房にやって来たデュオルに困惑していると、デュオル本人が「私はメイの護衛になったので、今後頻繁に会うことになるでしょう」と挨拶をしていた。


(え? まさか毎日厨房内も護衛してくれるってこと!?)


 まさかここも!?と詳しく話を聞いてみたいが、今はとにかく早く行動しなければ、調理後の時間が減ってしまう。そしてその結果、デュオルを待たせてしまう。

 デュオルの存在は一度忘れ、芽衣はトランと話をする。


「今日はどうしようか…」


「個人的には、最近野菜を使った料理が多いから、ガッツリとした肉が食べたいな」


「…」


 どうやらトランは大の肉好きらしく、野菜ばかりの料理では少々物足りないと云われてしまった。


「そっか…。それじゃ…」


 芽衣が悩んでいると、トランたちが話しかけてきた。


「嬢ちゃんはこれから忙しくなるって旦那様から聞いてるぞ。だから今日は俺たちに任せってくれ」


「え?」


 驚いている芽衣にトランは胸を張って云った。


「嬢ちゃんに教えてもらったレシピを俺たちなりにアレンジしてみたい」


「復習も兼ねて自分たちだけで作ってみたい」


「アドバイスも貰ったから、チャレンジしてみたい」


 厨房にいる料理人全員が頷いていた。どうやらトランたちは自分たちでどうにかできるよう考えていたらしい。

 芽衣はいずれこの屋敷を去ることになるので、考えた末その提案を受け入れた。


「分かりました。では今日は皆さんにお任せします」


 そう告げると、トランたちは「任せろ!」と声を張り上げた。

 そしてトランたちは今日のメニューについて話し合いを始めてしまった。

 楽しそうな輪の中に入れないことを少し淋しく感じながらも、時間を持て余してしまった芽衣はどうしようかと考える。


(いつも通り魔法の練習? でもレベルが上がったとは云え、魔力も限られてるし…)


 しかし今日はデュオルが傍にいるのだ。魔法の練習はいつでも出来るので、この余った時間をどうしようかと考えていると、デュオルが訊ねてきた。


「もし時間があるのなら、少し街を見てみませんか?」


「え?」


 正直街には興味があった。しかし街を見たのはリーシャ邸に来る時の一回だけで(それも大通りを素通り)、どこに何の店があるのか殆ど分からなかった。

 もう少し生活が落ち着いてから散策してみようと思っていたが、思わぬデュオルからの誘いに芽衣は頷いた。


「はい! 是非お願いします」


 芽衣が力強く頷くと、デュオルはフフッと微笑んだ。


「では用意が出来次第出発しましょうか」


 街中を散策出来ることを喜び、芽衣は慌てて仕度をした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ