011
これでも途中を削ったのですが…今回も説明が多いので長いです。
読みづらくてごめんなさい(>_<)
魔法の練習は庭で行うことになった。
最初にリーシャが教えてくれた魔法は、殆どの人が最初に覚える生活魔法だという『クリーン』『ライト』『ウォーター』だった。
『クリーン』は洗浄。『クリーン』を使えば衣服は洗濯したかのように綺麗になるし、自分は風呂に入ったかのようにさっぱりとすることが出来るらしい。しかも自分や身の回りの物以外にも、他の人(家族や恋人とからしい)に使用することも出来るそうだ。
ちなみに『クリーン』は身近な物や人だけではなく、部屋を綺麗にすることも出来るのだが、それを実行するのには魔力を相当消費するらしい。更にそれ以上に…膨大な魔力を消費することになるが、家やその周辺なんかも綺麗に洗浄することも出来るそうだ。…しかしこれは魔力量が高い人でないと使えないので、滅多に使う人はいないそうだ。
『ライト』はその名の通り、明かりを灯す魔法。しかし街中では魔石付きランタンという物が存在しているので、『ライト』を使うのは冒険者や騎士たちぐらいだと云う。
しかし身に危険が迫った時などに相手の目を眩ませることや助けを呼ぶのにも使えたりするので、今後のためにも絶対に覚えて欲しいとリーシャに云われた。
『ウォーター』もその名の通り、手から水を出すことが出来る。これも魔力量によって水の出が違うそうなので、大量に水が必要な場合は殆どの人が手っ取り早く井戸から汲み上げているそうだ。…確かにちまちま水を出すよりかは、井戸を使った方が早いと芽衣は思った。
しかし本当に魔法を使えるようになるのかな?と不安に思っていると、魔法を使う前にリーシャがアドバイスをくれた。何でも魔法を使う時に一番大事なことは「イメージすること」だと云う。
教えられた通りに初めて魔法を使ってみる。神経を集中させると、身体の内側から何かがこみ上げてくる。
そしてハラハラしながら使いたい魔法をイメージし、リーシャの教えやゲーム・マンガを思い浮かべると、なんとか三つ共発動することに成功した。…が、どれも数秒で消えてしまった。
「まぁ誰でも最初はこんなものだよ。むしろ短時間で三つ共成功したメイちゃんは凄いよ」
こっそり落ち込んでいると、そんな優しい言葉をもらった。
「あ、ありがとうございます」
その後のリーシャの話では、イメージが薄いと発動出来ない人もいるということ。そういった人たちは最悪何ヶ月もかけてようやく発動出来るようになるらしい。そう考えれば、数秒でも発動したことは本当に運が良かったと思う。
(ゲームやマンガ、本当にありがとう!)
そこまで熱心なオタクではないが、気になった作品は遊んだり読んだりしていた。そういったこともあったので、他の人に比べてイメージをしやすかったのだろう。そのおかげで芽衣は短時間で生活魔法を取得することが出来た。
「あとはこのまま練習を続けていけば、もう少し長い時間使えるようになるよ。でもその代わり魔力もしっかり減っていくから気をつけてね」
一度魔法を発動したら魔力はそのまま維持出来る…という訳ではないようで、徐々に減っていくらしい。
「はい、気をつけます」
どんなに魔法が便利でも、これからは安心出来る場所でしか使わない・練習しない、と心に決めた。
するとふいに新たな疑問が生まれてきた。
「また質問してもいいですか?」
「いいよ」
「あの、消費した魔力を早く回復する方法はあるんですか?」
例えゆっくりと回復するとしても、魔法を使う度に魔力を消費していくのであれば、回復が追いつかなくて魔力が尽きてしまうことだってあるだろう。だったらゲームやマンガのように回復するアイテムや方法があるのかな?と疑問に思っていた。
するとリーシャはニコッと笑って答えてくれた。
「良い質問だね。うん、さっきも云った通りちゃんと回復出来るよ。こうして話している間にもゆっくりとだけど回復しているはずだよ?」
「本当ですか?」
『ステータスチェック』を使わなければ、本当に回復出来ているのかが分からない。困惑している芽衣にリーシャは話を続ける。
「うん。ただし本当にゆっくりとしか回復していかないから、新しく魔法を使う時には気をつけるように。それと魔力が回復しやすいのは食事と睡眠だね。だからしっかり食べて寝るように」
「はい」
魔力はゆっくりとだが自然に回復することは分かった。そして早く回復するには食事と睡眠が良いと云うことは、しっかりと身体を休めろと云うことなのだろう。
(じゃあ一度異世界商店を使っても大丈夫かな?)
不安はあるが、一度試してみようと思った。
「あと今更なんですけど…魔力ってどうやって確認出来るんですか?」
芽衣には便利なスマホがある。だがそれを人前で使っていいのか分からない。何か別の方法があるのなら是非教えてもらいたい。
質問を受けたリーシャは「あっ!」と声を上げた。
「そうだよね、それを最初に云わなきゃいけなかったね。魔力は身分証で分かるよ」
「身分証?」
「そう。身分証を握って暫らくすると、左右に数字が浮かび上がってくる。左の数字が現在の魔力。右は本来自分が持っている魔力。そんな感じで簡単に調べられるよ」
ごめんねと苦笑しているリーシャに芽衣は首を横に振った。
「すみません。私も魔法や他のことを考えていて確認しなかったので…」
互いに謝りつつ、人前でも魔力を確認する方法が分かった。これならいつでも確認出来るので、隠れてアプリを見なくてもいいということは楽だった。
その後は魔法初日ということですぐに魔法練習を終えることになったので、また暇になってしまった。
今から厨房にでも…と思ったが、夕食作りで忙しい料理人たちの邪魔をしては申し訳ない。
どうしようか…と考えていると、リーシャから「今日は初めて魔法を使ったんだから、魔力を回復させるためにも夕食の時間まではゆっくりするように」と云われてしまったので、芽衣は大人しく部屋へ戻った。
早速部屋に戻って来た芽衣はベッドに横になりながら、色々と実験してみることにした。
「それじゃまずは…」
身分証でも魔力量は確認出来るらしいが、見慣れているスマホの方が扱いやすい。早速スマホを取り出し、魔力がどれぐらい減ったのかを知るためにステータスをチェックする。
すると魔力が300から180に減っていた。
「えっ、あれだけでも120も減っちゃうんだ。どれも数秒しかもたなかったから、てっきり三つ使って30ぐらい減ってるのかと思ってたけど…これは最初だから減りが大きいのかな? それともリーシャさんが特別で、他の人はこんな感じなのかな?」
色々考えていても答えは出てこないので、今は魔力消費量については深く考えないようにした。それにそのうち慣れていけば消費も少なくなるかもしれないので、今後は魔法を使う前後にはステータスを確認しようと思った。
一応確認のために身分証を握ってみると、魔力量はアプリの結果と同じ『180/300』と表示されていた。
これで現在の魔力が分かったので、芽衣は異世界商店を立ち上げた。昨日と同じように最初にウサギが現れて、1日20コまでと説明される。
「試しに一つだけ買ってみて、魔力の減りを確認してみよう」
そう思った芽衣は検索バーで『ノート』と入力した。真っ先にノートを検索した理由は、覚えたことをメモするために必要だと思ったからだ。
「ボールペンはバッグの中に入ってるから必要ないし」
いざという時のためにボールペンを一本だけバッグに入れていた。
「こんなことならメモ帳も入れておけば良かったな…」
いつもスマホをメモ代わりに使っていたので、メモ帳を持ち歩いていなかった。それを今更悔やんでも仕方ないので、画面に表示されたノートを選ぶ。
「リングノートにするか、手帳型のノートにするか…」
散々悩んだ結果、持ち運びしやすいことを優先して手帳型のノートの一つを選ぶと、ノートの色や数量が選べるようになっていた。
「本当に通販みたい…」
そんなことを呟きながらも芽衣はシンプルな白色を選び、数量がちゃんと『1』になっていることを確認してから支払いボタンを押す。肝心の支払いボタンは数量の下に『後で買う』『今すぐ買う』と表示されてたので、戸惑うことなく購入出来るようになっていた。
「えっと…最終確認で数量は1になってるよね? それじゃ支払い」
もう一度数量を確認した芽衣が支払いボタンを押すと、またウサギが出て来た。
『支払い方法を選択して下さい』
そこに現金か魔力かのボタンが現れる。
「魔力支払いで!」
恐る恐るボタンを押すと、ふわっと身体が軽く――何かが溢れ出たような感覚があった。
「え? 今のって…」
変な感覚に驚いていると、画面上のウサギからは『ご利用ありがとうございました。本日は後19コ購入できます』と笑顔で云われた。
ウサギ曰く購入していることになっているので、ノートを思い浮かべながらバッグに手を入れてみると、何故かビニール袋をしっかりと握っていた。
「あっ、私が選んだノートだ」
ビニール袋の中には選んだノートが一冊入っていた。ちゃんと買えたことに芽衣は喜び、そしてすぐにステータスチェックをする。
「えっと…魔力が140。ってことは一つ買うのに魔力が40減るってこと?」
1つ購入するのに消費魔力40。現在の芽衣の魔力はMAXで300。そして1日に買える個数は20。…ということは、20コ買うと消費魔力は800になるので、マイナス500になってしまう。魔力をかなりオーバーしてしまうので、このままでは魔力支払いは難しい。
「ふぅ…昨日は勢いで買わなくて良かった」
昨日の私、ナイス判断!と慰めつつ、さてこれからどうしようかと考える。
「いつまでもリーシャさんたちにお世話になる訳にもいかないから、早くどうにかしてお金を稼がないと。それにこのスキルがこの世界でも役に立つ商品もあると思うし、何と云っても今後のことも考えればお金は必要だよね」
今後のことについては夕食後にでもリーシャに相談してみようと思った。
「とりあえず今は…」
もう一度異世界商店を起動させ、今度は色の違う手帳型ノートを一冊購入した。
バッグからボールペンを取り出し、一冊にはラスターニャのことを書く。主に魔力や食事事情などを。そしてもう一冊は日記用として、自分の思いや考えを書いていった。
 




